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2021/01/31

COVID 19下における緊急腹膜透析導入

 まだ、この投稿を記載時点でCOVID-19の勢いは衰えていない。

日本透析医学会からも透析患者のCOVID19の患者数・死亡者が報告されているが徐々に増加傾向にある。血液透析に関しては、感染管理も徹底はしているが、もともとサテライト(維持透析施設)先での透析も含めて透析患者同士の間隔が少ない場合が多い。

我々が新規に緊急的に透析が必要になる場合には、首や大腿からカテーテルを挿入して血液透析導入とする場合がほとんどである。このCOVID19の中、緊急透析導入を腹膜透析で行うのはどうかという風潮が、本邦でも出ている。実際に友人の医師が出張して腹膜透析カテーテルを入れに行くので緊急腹膜透析導入をしてくださいということを言っている。

今回、この緊急腹膜透析に関してCJASNに報告があり、実際の症例もふまえてメリットなども考えてみたいと思う。

症例:

80歳男性がCOVID -19による低酸素性呼吸不全とショックにてICU入室。挿管され人工呼吸管理をされていた。血清Crが入院時の1.0→6.3mg/dlまで上昇し、無尿になった。体重も12kg上昇している。高カリウム血症などはなく、腹部手術歴も今までない患者。この患者の管理で腎臓内科がコンサルトを受けた。


・コンサルト後に考えること

このコンサルトを受けた思考過程として、腎不全の原因はショックに伴うATN(急性尿細管壊死)なのか、薬剤性なのか、COVID19によるAKIなのか(以前の記事参照)を考え、無尿で体重増加もあり腎代替療法は必要になると考えると思う。今までなら循環動態などを加味しながらCRRT(持続的血液透析)にしようかIHD(間欠的血液透析)にしようかと考えたと思う。

しかし、この症例に緊急腹膜透析という選択肢もあるというのが今回の主な話である。

今までのCOVIDがない状況で本邦では選択肢は少なかったのではないか?世界ではCOVID流行前からも報告は多い(CJASN2018)


では、ここからは少し細かく見ていこう。

・どのようなAKI患者に緊急腹膜透析が適応になるのか?

反応性の体液過剰、代謝性アシドーシス、高カリウム血症などの臨床的に透析が必要になる場合で、活動性の腹膜病変(腹膜炎、小腸閉塞、最近の腹部手術歴)がないこと、重度の高カリウム血症がないこと、腹腔内圧が過度に上昇していない患者が適応になる。BMI>30kg/m2は相対的な禁忌になる。CRRTで透析回路の血栓閉塞が生じた場合には腹膜透析に移行できるかは考慮してもいいとされている。

□腹膜透析カテーテル挿入

COVID19が流行している際に、手術室からICUへの移動が制限され腹腔鏡下のカテーテル挿入術ができない場合もあり、ベッドサイドでカテーテル挿入術をするのが一つの方法として述べられている。その場合にCOVID19感染リスクを減らすために最小限の人数で入り、第一カフを巾着縫合で縫うことでリークを減らし、すぐに使用できることが報告されている(World J Sug 2020)。

□初回の透析処方

腹膜透析処方の基本は以前の記事をぜひ参考にしてもらいたい。

腹膜透析液の交換回数などの点でAPD(automated peritoneal dialysis)がCAPD(continuous ambulatory peritoneal dialysis)より優れていると言われているが、機械などのリソースの問題点はある。APDの場合に2時間交換で、12時間行い、total volumeで10000-12000ml程度が初期量としては推奨されているが、環境によって量は調整してもいい。透析液に関しては、グルコース濃度をあげることで除水量を増やしたり、低血圧や過除水にならないようにしていく必要がある。

PD処方は毎日評価を行い、体液量や酸塩基平衡異常などをチェックする。高度に異化が進んでいる患者では、1時間毎に交換するAPD治療は体液管理や代謝管理に有効であることが報告されている(CJASN 2012)。

□腹膜透析の効率

個々によってPDにおけるクリアランスは変化する(疾患の重症度や合併症や腹膜の透過性の状況によって)。Kt/VureaはPD患者ではPD効率を見るのには不適切であるが、ISPDガイドラインではKt/Vureaは0.3/日、週で2.1(0.3*7日)がHDの週3回でKt/Vurea 1.2と同等であると考えられている(Perit Dial Int 2014)。

□COVID-19の感染状況下の中での問題

・腹臥位のポジション

COVID19でニューヨークの病院の集中治療室に入院した患者のうち、31%が腎代替療法を受け、17%が腹臥位をとっていた(Lancet 2020)。腹臥位でも、腹膜透析がAPDを行いうまくいったという報告(Perit Dial 1998)はあるが、本邦では難しい可能性はある。体位変換の際にAPDをおこなうことは一つの方法かもしれないが。

・人工呼吸器で腹腔内圧が上昇した場合

PD液があった場合に腹腔内圧が上昇し、横隔膜の運動が制限され人工呼吸の部分に弊害が出る事が考えられるが、呼吸器への影響は少なく、また腹膜透析の漏れも2000mlいれても10%未満であることが報告されている(Perit Dial Int 2014)。しかし、実際は500mlから開始して、24時間毎に評価をして最終目標を2000mlにあげていくのが一つのストラテジーである。また、腹腔内圧は18cmH2O未満に設定することが推奨されている(Kidney 360 2020)。呼吸器側は、プラトー圧とFiO2を持続的にモニターしていく必要がある。

・CRRTが凝固で動かなくなってしまった場合

COVID19では過凝固がしばしば問題になっている。これは、CRRTの抗凝固をヘパリンや全身のヘパリン投与やアルガトロバンなどにしても生じている(J Thromb Haemost 2020)。そのような患者にもPDはいい治療になる。

・スタッフを守るために

PDで長いチューブをもしも用いることができればCOVID19のハイリスク患者との接触をへらすことができる。また、CAPDではなくAPDであれば、患者エリアへ入るリスクを減らすことができる。


緊急のPDを行うことはCOVID19下の集中治療下のAKI患者で、考慮してもいいオプションかもしれない。今は大変な時期ではあるが、みんなの協力を得ながら患者さんにも、スタッフにとってもいい選択をしていく必要性がある。




2020/08/11

コバン? COVID-19感染のAfrican americanを見たら。。

今回の話は、いまだに話題の中心になっているCOVID-19関連の話である。

日本人とは関連が薄いかもしれないが、ApolipoproteinL1(APOL1)を交えての話になる。

APOL1遺伝子変異は黒人に多いことが知られており、また西アフリカの血を引くカリブ諸国やラテンアメリカの人にもよく認められる。APOL1遺伝子に関しては以前の投稿を参照していただきたい。

APOL1のG1とG2の2つの変異がある人ではFSGSを発症リスクがOR(Odds Ratio)で10倍、高血圧による腎疾患を起こすORが3倍であることはわかっている。このAPOL1の中でも2つの変異があるリスクの高い患者では何らかの要因がトリガーとなって("Second Hit")、collapsing glomerulopathyを生じるリスクが高い。

何らかの原因によるcollapsing glomerulopathyと聞いてふと思い出されるのは、HIV感染に伴うものであり、組織形態学的にHIVAN(HIV associated nephropathy)ではないであろうか?

HIVANは1980年代に認知され、ネフローゼ症候群と腎不全を伴う疾患である。APOL1遺伝子変異を有している人は、HIVANのリスクが通常よりも30~90倍高いと言われている。HIVだけでなく、パルボウイルスB19、サイトメガロウイルス、EBウイルスなどの感染やSLEなどでもcollapsing glomerulopathyを起こすことがわかっている。

Collapsing glomerulopathyとAPOL1遺伝子変異の関連にインターフェロンが示唆されている。

APOL1遺伝子変異の症例のC型肝炎治療にインターフェロンを用いてcollapsing glomerulopathyが生じたという報告もある。そのメカニズムに関しては現時点ではわかっていない。

COVID-19のケースで、6例のcollapsing glomerulopathyの症例が報告されているが、全症例がAfrican Americanであった。また、APOL1の2つの変異を認めていた。ネフローゼ症候群とAKIを伴っており、臨床所見と病理所見がHIVANに似ていることからCOVAN (Covid-19-associated nephropathy) とこの論文では提唱している。


           


ただ、通常のCOVID-19に関連するAKIのケースではほとんどがATN(急性尿細管壊死)であるということには留意していただきたい。

もしも、African americanのCOVID-19感染の症例をみて、AKIとネフローゼ症候群を伴っていた場合にはCOVAN!?と是非考えて欲しい。

COVID-19の早期終息を願っている。。


2020/05/16

総力戦

 毎週木曜日に更新されるものといえば? 

 −NEJMの最新号がweb pageに登場する日

 私も読者の1人である。中でも「case records of MGH」はいつも興味深い臨床推論が展開されて楽しみにしている。そんな中、今週の症例(DOI: 10.1056/NEJMcpc2002418)が一際目をひいた。

 題名は、AKIを合併した68歳男性のCOVID19患者の経過である。
 
 普段であれば「case records of MGH」は病歴から鑑別、診断、治療、経過ととにかく臨床医の頭の中を言語化してくれている。
 
 しかし、今回のcase recordは少し趣きが異なる。

 ・たった数ヶ月で様々な知識が不完全ながら集約してきた様子
 ・目の前の患者の臨床医の苦悩
 ・社会背景まで考慮した考察

 この論文の中でも、

 ・腎臓自体へのCOVID19の直接障害
 ・凝固障害
 ・透析条件
 ・限りあるリソース

 などの問題点が挙げられている。COVID19の知識の確認はここを確認していただきたい。

 ところで、この患者は結局どうなったか?

 最終的にはリハビリテーション施設へ無事転院した。

 ほっとした。
 
 今、まさしく全世界がCOVID19と戦っている。

 総力戦を描き上げた、そんなcase recordだった。

 なお、同じ号のClinical practice(DOI: 10.1056/NEJMcp2009575)も参照。






 
 

2020/04/30

PDによるAKI治療

 AKIの腎代替療法は、「いつ始めるか」は議論になっても「どのモダリティーか」が議論されることはほとんどない(こちらも参照)。しかし先週、米国腎臓学会のKidney360という雑誌に「COVID-19パンデミックがもたらす、米国でのPDによるAKI治療」という論文がでた(doi:10.34067/KID.0002152020)。

 米国も日本と同様、成人AKI治療でPDすることはまずない。しかし、パンデミックによりHD機・CVVHDF機が不足し、ニューヨーク市などではAKIの治療にPDが使用され始めているという。信じられない事態だが、現実だ。

 論文は「(万一に備えて)PDによるAKI治療をおさらいしましょう」と言う。そこで、その効果・禁忌・アクセス・処方について以下にまとめる(参考文献は前掲論文と、国際PD学会のガイドライン;Perit Dial Int 2014 34 494)。


1. 効果


 PDによるAKI治療には、よいイメージをお持ちでない方も多いだろう。たとえば、マラリア患者と敗血症患者あわせて70例のAKIを対象にPDとHDFを比較したベトナムのRCTは、PD群で有意に死亡が高く早期中止となった(NEJM 2002 347 895)。しかし、このスタディはPD治療が不十分・不適切だったようだ。

 その後、透析量を増やし、プラスチックのカテーテルを使い、バッグ交換もサイクラーにしたスタディがいくつも行われた。その結果、2017年のCochraneレビューは「総死亡と腎機能回復にほとんど有意差なし(確証は中等度)」と結論している(doi:10.1002/14651858.CD011457.pub2)。

 とはいえ、AKI治療にPDが選ばれる最大の理由は、コストの安さと「過酷な環境(austere environment)」での威力だ。極論すれば、水道も電気も必要ない。またCOVID19パンデミックにおいては、医療スタッフと患者の接触を減らせるとも期待されている。
 

2. 禁忌


 PDによるAKI治療の絶対・相対禁忌には以下が挙げられる。

腹膜への侵襲
腹膜炎
腸管の障害
重度の高カリウム血症
薬物中毒
重度の呼吸不全・肺水腫
腹水・腹腔内圧上昇
腹臥位
ショック肝・乳酸アシドーシス
(重炭酸イオンのPD液なら可)

 懸念を挙げると、「重度の高カリウム血症」や「薬物中毒」は溶質除去の速度と量。「重度の呼吸不全・肺水腫」は、除水速度・量と、横隔膜の運動制限。「腹腔内圧上昇」は腹腔コンパートメント症候群などだ。
 
 COVID19のAKIで最も気になるのは「重度呼吸不全・肺水腫」だろう。PD液を2L貯留しても肺コンプライアンスなどの指標に有意差のなかったスタディはあるが(Clin Exp Nephrol 2018 22 1420、ただし肺炎は全患者の約20%)、呼吸管理に注意が必要だ。またCOVID19肺炎で患者を腹臥位にした場合も、PDは現実的ではないだろう。


3. アクセス


 AKIのPDといえば、昔は金属棒のようなカテーテルが使われていた(読者の中に、使っていた方もおられるかもしれない)。しかし現在は、AKIでも末期腎不全と同様に、柔らかくカフが2個ついたカテーテルが用いられる。

 ただ、緊急性と患者移動の困難さから、挿入はベッドサイドが多いようだ。腹腔に穿刺した針からガイドワイヤーを留置し、ダイレイターの外筒を「剥きながら(peeling-away)」カテーテルを挿入する。腸管損傷リスクもあるので、透視・エコーは使いたい(使ったテキサスの動画、使わないタイの動画も参照)。

 挿入後すぐに使うので、PD液リークはリスクだ。これについては、結局「うまい人が慣れた方法で(local expertise and operator experience)」やることが大切とされ、施設や報告により発症率はさまざまだ。傍正中切開・タバコ縫合(腹膜・腹直筋後鞘・前鞘の3箇所にかける方法はSemin Dial 2003 4 346)・少量PD液から開始するなどの工夫もある。


4. 処方


 AKI患者で異化が亢進していることや、PDはHDに比べ溶質除去が甘くなりがちなことから、透析量は末期腎不全より多い。PDの有効性を示したブラジルのランドマークRCT(Perit Dial Int 2007 27 277)は1日Kt/V 0.6(weekly Kt/V 4.2、こちらも参照)だったが、現在のガイドラインは1日Kt/V 0.3(weekly Kt/V 2.1)を推奨している。

 以下に、前掲Kidney360論文のサンプルを紹介する(ICU患者、APD、体重70kg以下の場合)。



 
 交換回数が多いので大量のアルブミンが喪失され、その量は前掲ブラジルRCTで1日21グラムもあった。信じられないことに低アルブミン血症の有意差は見られなかったが、別のブラジルRCTでは蛋白バランスと死亡率に負の相関がみられ(CJASN 2012 7 887)、ISPDガイドラインは蛋白摂取を1.2g/kg/dにするなどの工夫を推奨している。


★ ☆ ★


 いかがであろうか?正直、AKIにPDと言われても困るのではないだろうか。モダリティーとしてHD・CVVHDFより優れている点はほとんどないし、なにより経験がなさすぎる(論文はfamiliarityの重要性を強調するが、そんなものがある人はまずいないだろう)。

 しかし、とにかくやらないとCOVID19患者をAKIで死亡させてしまうような限界状況が、現に起きている地域がある。そしてその時、「知りません」では済まされないからこそ、急遽この論文がでたのだろう。

 そうした状況にならないことを願うのはもちろんだが、今からAKIに限らずPD一般に少しでもfamiliarityを持っておくことに、損はないだろう。





2020/04/20

少し時代に乗って~COVID-19と腎臓 Part4~

今回は少しCOVID-19の腎病理の話に触れていきたいと思う。
主には中国からのKidney internationalの報告をまとめたいと思う。

まず、この報告ではCOVID-19の病理解剖26例を検討している
(死亡率に関しては、国ごとにも異なるが、0.3-10%程度である)。
■患者は平均69歳で、男性19人、女性7人。
■死亡は全例呼吸不全で、7症例が多臓器不全を併発(死亡時点での腎不全はわかっていないものも多い。)
病理所見としては
 ・全例で急性尿細管障害・壊死(ATI/N)が認められた(9症例は重度であった)。←これは以前の報告でも同様であった。
 ・2症例は炎症浸潤や細菌などの所見もあり、腎盂腎炎を認めた
 ・3症例に糸球体血栓症が認められた。
 ・全例に高血圧に伴う血管変化が見られた(18症例は中等度〜重度であった)。
 ・免疫複合体沈着は1症例のIgA腎症を除いては明らかなものはなかった。


上の表が26名の患者さんの左から光学顕微鏡所見、電子顕微鏡所見、蛍光抗体検査所見になっている。興味深いのは、全例にATI/Nが認められていること、年齢平均からも当然かもしれないが、動脈硬化がある症例が全例であるということである。

続いての上表が患者の採血結果や尿所見や既往歴になる。
・得られていない情報もあるがCrが正常な患者さん(単位がμmol/Lなので、mg/dlにするには88.4で割ればいい)も多い(実際に報告でAKIの割合は感染者の0.9-29%と幅広い)。
・既往歴としては、基礎疾患をもっている人が多い。
・尿所見に関しては得られているケースは少ないが、得られている中ではかなりの割合で尿異常所見をきたしている可能性がある。


では、実際の画像所見を見ていこう。


上記は光学顕微鏡所見になる。
一番上段のa,bでは近位尿細管に注目している。aでは近位尿細管のBrush borderの脱落を認めておりATI/Nの所見と判断できる。bでは、尿細管細胞の空胞化(vacuolization)を認める。これは、ATI/Nの際にも認めるが、これらの症例の場合には重症症例に対するマンニトールや免疫グロブリン製剤の投与に伴う二次性の変化が考えられる。
c,dでは炎症細胞浸潤を見ている。cでは尿細管にdでは血管への浸潤を示している。
eでは尿潜血陽性の4症例に見られた尿細管上皮内のhemodsiderinの沈着を見ている。
fでは、横紋筋融解症に伴うものと考えられるpigmented castが認められる。
gでは、3症例に認められた糸球体内血栓を示している。
hでは、7症例で、pseudocrescent(ボーマン嚢スペースに血漿の滲出物) の所見を認めている。

*ATI/Nは多種の原因で起こりうることには注意する必要がある。これは、COVID-19の別の報告でも言われている。
*COVID-19は血栓リスクも増加させ、今回の採血検査データでもあったようにD-dimerの上昇を認めることも一つの特徴である。
*また、別の報告になるが、黒人においてCOVID-19感染でAPOL1 nephropathyの増悪を起こしCollapsing glomerulopathyを起こすことが示唆されている(Toll-like receptorを介したりや樹状細胞の活性化によって全身の炎症反応を惹起し、これがAPOL1 nephropathyのsecond hitになっていると考えられている)。


続いて電顕所見を示す。
a-dはVirion(細胞外のウイルス本体)であり、大きさは65-136nmで、周囲に20-25nmの独特のspikeを認める。aは近位尿細管、bは遠位尿細管、c,dはpodocyteの部分にあることをしめしている。
TMAで認めるようなFibrin factoidsや血小板の集合体はCOVID-19の症例では認められていない。


最後は蛍光染色であるが、これで注目するのはACE2の染色である。基本的にはACE2は近位尿細管に発現しているが、COVID-19感染では過剰発現をしている。発現の主体はATIが生じる近位尿細管の部分だが、ボーマン嚢上皮やPodocyteにも染色されていた。dはCOVID-19の核蛋白に対する染色を見ているが、尿細管上皮に発現が見られていた。


まだ報告症例が26例と少ないというところ、全症例のデータが完全ではないところ、コントロールがないところなどはlimitationとしては挙げられるが、本邦でも症例は増加しており、非常に参考になるのではないだろうか?
個人的には、全身状態が悪化している症例に対して、通常通りだが過剰な輸液は避けつつ全身管理を行うことは非常に重要だなと改めて感じた。

少しずつみんながコロナに慣れてきて、甘くなるときが本当に危険である。このような腎障害は起こさないほうがベストである!


2020/04/07

少し時代に乗って~COVID-19と腎臓 Part3~

日本でもCOVID-19による影響が大きくなっている。
この記事を半年後に読んだ時にこんな大変な時があったねと振り返ることができるように僕らもがんばっていかなくてはならない。

今日は腎移植とCOVID-19について記載していこうと思う。

まずは日本の腎移植においては腎移植学会から提言が出ている。
1. 腎移植は待機可能であることより、生体、脳死、心停止の腎移植は状況が好転するまで停止することが望ましい。
2. 待機困難な例(脱感作処置などが進行中、代替療法が困難、緊急例等)については、可及的にドナー、レシピエントに感染のないことを確認し、かつ感染のリスクを説明したうえで実施する。
 3. 外来移植患者、入院移植患者の感染予防、治療については、各施設でのマニュアルに沿って実施する。 

※腎移植の実施決定は、施設の状況、患者の状況を考慮し、各施設の責任で行う。

日本では施設の判断にもよるが、現状としては移植治療をストップしている施設が多い。


では、ここからは海外のを参考にしながら、少し移植とCOVID-19を前回と同じように質問形式で診ていこうと思う。

COVID-19の症状としては、
・発熱、咳、息切れ、インフルエンザ様症状(筋肉痛、倦怠感など)、嘔気・下痢・腹痛、嗅覚や味覚の障害
などがある。
移植患者では肺炎に移行しやすいと言われている。


Q:移植患者はウイルス感染のリスクが高いのか?

A:これに関しては、はっきりとしたところまでは分かっていないが、答えはYESである。

まず、健常人と比較して移植患者がCOVID-19感染において重症化するということは証明はされていない。しかし、他ウイルスでは免疫系が低くなっている移植患者では重症化しやすいことが分かっており、おそらくCOVID-19も同様と考えられる。


Q:旅行制限は移植患者では必要か?

A:現在、世界各国でウイルスのPandemicが生じている。なので、基本的には推奨はされない。
もしも行く場合にはCDCのWebsiteから行く場所のCOVID-19の感染がある状況かを確認する必要がある。
基本的にはヘルスメンテナンスを行い、不要不急の旅行を避け、人混みを避けることは非常に重要である。


Q:COVID-19の治療は?

A:これに関しては、以前に記事にした内容を参考にしていただきたい。
その中で移植患者に投与する際に気をつけなくてはいけないことは、
・薬物の相互作用に注意を払う必要がある。HIVの治療薬であるIopinavir/ritonavirに関しては、CYP34Aを阻害することによってカルシニューリン阻害薬やmTOR阻害薬の血中濃度を上昇させうる(下表を参考にしていただきたい)。
・ARBやACE-Iの継続はCOVID-19感染にとって有害であるとも言われているが、現状としてははっきりはしていなく継続は問題ないと考えられている。
・感染のリスクが高い症例では、拒絶のリスクが低ければ、免疫抑制剤の量を減量することが推奨されている。



Q:もし、移植患者が風邪様の症状や呼吸器症状を有する場合のアプローチは?

A:まずは、かかっている移植外来に電話をする。そして、診察が必要な状況であればしっかりとマスクをしてもらって診察を行う。もし、息切れなどの重篤な症状があれば救急車などを呼ぶ(ただ、東京都では救急車での受け入れはかなり制限されている。)。
下記は患者さんがCOVID-19であった場合のフローになる。
・MMFの中止、カルシニューリン阻害薬の減量、高用量ステロイドやステロイド増量の非推奨に関しては移植領域に特筆するべき内容である。



Q:定期外来の移植候補者や移植後の患者に対してのアプローチは?

A:COVID-19の感染と腎臓移植の緊急性を天秤にかけて考える必要がある。移植を延期することで先行的腎移植(PEKT)を希望している人は、叶わなくなってしまうかもしれないが、生体腎移植や緊急性が低い献腎移植は一時的に中止することが推奨されている。
移植後の患者に対しても、基本的には来院に伴う感染リスクを上げてしまうことが考えられるため遠隔診療や状態が安定している人であれば、来院間隔を伸ばすことは推奨される。

Q:もし献腎移植待機患者で、優先順位も高い人がCOVID-19にかかっていたらどうするか?

A:現段階では、COVID-19感染患者が安全に移植ができるかということは分かっていないが、おそらくは良くない結果になることが予想される。
ウイルスの排出期間は正確には分かっていないが、LANCETの報告によると20日間くらいとされている(8-37日)。またPCR検査が少なくとも2回陰性になることが推奨される。

他にも書きたい項目はあるが、またの機会でにしたいと思う。

いちばん大切なのは、これを読んでいただいている医療従事者が感染にかからないことである。
しっかり睡眠をとって、休めるときは休んで日々の診療に取り組もう。決して終わらない戦いはないので、みんなで乗り越えていこう。みんなでキセキを!


2020/03/31

少し時代に乗って~COVID-19と腎臓 Part2~

この記事を書いているときでもCOVID-19の患者さんが全世界では増え続け、また、多くの人が亡くなっている。
我々も患者の治療を続けるとともに、感染を広げないように一人一人が気をつけていかなくてはならない。

今回は、透析患者とCOVID-19に関しての話をしていこうと思う。わかりやすいようにQ&A形式で進めていきたい。

■透析患者におけるCOVID-19の感染後の死亡リスク?
 COVID-19感染で死亡リスクが高くなるものとして高齢者、心血管疾患、糖尿病、慢性呼吸器疾患、高血圧、悪性腫瘍が言われている(BMJ 2020)。透析患者では、高齢であったり、様々な合併症を抱えている場合も多く死亡リスクは高くなる。ただ、血液透析患者では旅行に行く機会が限られるし、その点では感染暴露の機会は少ないと考えられているが、いったん血液透析センターに感染がひろがった場合には非常に大変である。やはり密集しているセンターのことが多いためである。
その場合に、本邦の一部の医師も言っているが、施設血液透析患者を流行時には腹膜透析や在宅血液透析に一時的にすることで、透析室内の爆発的な感染の際に防ぐということも必要な選択肢なのかもしれない。在宅血液透析に急に移行することは現実的に難しいので、腹膜透析を一時的にBridgeすることは一つの方法なのかと考えられる(除水を目的に10%ブドウ糖の腹膜透析が有効という報告も有る)。また、末期腎不全患者の腎代替療法治療の選択で、今は腹膜透析や在宅血液透析を推奨するのはいいのかもしれない。
 ただ、やはり予防をするということが一番大事!予防という点で、一つはDavitaの動画と透析医会から出ている情報は有用なので参照していただきたい。

■透析患者に透析センターでない外で気をつけるようにいうことは?
これに関しては、上の動画と重複はしてしまうが、
・なるべく透析を受けていない時以外は家にいてください。
・可能であれば透析センターに来る際に、公共交通機関を避けて、個人の交通手段を用いてください。
・子供や孫との接触は避けるようにしてください。若い人が無症状にCOVID-19を保有している事があるので注意してください。
・家族内での感染を注意してください(透析患者の家族は体温を1日に1回測定したり、手洗いやうがいをしたりする。)

■透析センターで一般的な衛生管理の方法は?
これは、上に記載した透析医会から出ている情報の資料が写真もついていて、とても理解しやすい。下に別の図も添付するが、
・患者の部屋や待合室にアルコール消毒をし、患者にも使用してもらうように促す。
・患者には透析前に手とシャント部分も洗ってもらうように推奨する。
・看護師や医療スタッフは、透析室にいるときは外科用マスクをつけ、眼鏡もつける。また、石鹸で手を洗いアルコール消毒も行う。
・もし、小児と大人の透析室が分断されていない環境であればしっかりと分断をして管理する。

ここまでをまとめると、まずは予防が非常に重要になる。
とくに、透析室の中は密集しているところも多くパンデミックになりやすい。
しっかりと指導をして医療従事者も感染を起こさないということが非常に重要となってくる。下の図は非常にわかりやすいので是非参考にしていただきたい。



■もし、自分の透析患者さんがCOVID-19に疑わしい症状がある場合には?
・COVID-19の検査を行う。
・部屋を分けて隔離をする。
・同じ透析の部屋で、COVID-19を疑わない患者と透析をする場合には、隔離部屋を可能であれば使用する。
・隔離部屋がない場合には、一日の最後に透析をするなど他の患者への暴露を最小限にするように努力する。

■疑わしい患者の検査をどうするか?
これは、海外のものと本邦では少し違うかもしれない。
・海外では、しっかり個人の感染防御(マスク・ガウン・ゴーグル)を行い、さらにセーフガードを用いて鼻咽頭からの検査を、忙しい救急外来に送らずに、自分の部署で行うとしている。

・本邦では透析患者における、COVID-19 の帰国者・接触者相談センターへの相談の目安は、感冒症状や 37.5℃以上の発熱が 2 日程度続く場合、強い倦怠感や呼吸困難がある場合とされている
なので、疑わしい患者は、次回の透析受診前に電話連絡を行うように指示して、上記の症状に合致する場合は、帰国者・接触者相談センターに、基本的に患者より連絡する。COVID-19 の疑いがある場合には、「帰国者・接触者外来」を設置している医療機関が案内される。もちろん、大きな病院(検査が自施設で可能な病院)はこの限りではない。


■今、研究段階の薬を透析患者に使用することはどうか?
COVID-19に確固とした治療薬がないのが現状である(2020/3/31現在)。CKDにおいて容量調整の点で使用されたものはクロロキン以外はあまりなく、透析に関して言うと分子の大きさ(小さいものほど除去されやすい)、蛋白結合率(蛋白結合率が高いと透析で除去されにくい)、薬物の体内分布(分布が大きければ除去されにくい)を考慮する必要がある。下記の表はその部分をまとめてあるので、参考にしていただきたい。

■透析患者がCOVID-19にかかることでどうなのか?亡くなりやすいのか?
これに関しては読んでて意外であった。
中国の230人の透析患者の報告で、37人がCOVID-19にかかったが、全員ICUに入室するような重篤な症状になることはなかった。37人中27人は無症状で、検査で引っかかった。6人はフォロー中に亡くなったが、これはCOVID-19によるものではなく透析不足による高カリウムや体液過剰などで亡くなっている。透析患者では免疫反応が健常者に比べてしっかりしていないのが原因では?友いわれている。
しかし、別のケースシリーズでCOVID-19で透析患者が2名亡くなったというものがあり、現状では透析患者が亡くなりやすいかは、はっきりした結論はでていない。


■透析患者さんがCOVID-19感染の状況でシャントの障害が生じた場合どうするのか?
シャントの問題としては出血、閉塞、狭窄などが有る。
現在、ほとんどの施設などで手術を減らしたり、止めたりしているところが多い。
シャントは血液透析患者にとっては生命線なので、米国のASDINとVASAのガイドラインでもシャント狭窄の処置は緊急性の高いものとして対応するように推奨している。

今回、情報としては不十分だとは思うが少しでも参考になればと思う。
また、同時に日本・そして世界でこの疾患にさらなる罹患がないように、これを機会にブログの復習をしてもらいたい。

下は透析患者のCOVID-19の際の対応プロトコールになる。参考にしていただきたい。



2020/03/18

少し時代に乗って ~COVID-19と腎臓 part1 ~

現在日本や世界でも新型コロナウイルス(COVID-19)がとても騒ぎにはなっている。

一般診療においても様々な情報が飛び交っていると思う。
個人的にはプライマリ・ケア学会の資料(添付)はよくまとまっているのではないかなと思う。これから、様々な合併症の報告も出てくるのかもしれない。
また、英語の資料では様々なものが出ているがACPの資料がいいかもしれない。また、CRITICALCARE NORTHAMPTON.COMのサイトは非常に色々な情報がまとまっているのでとてもわかり易い。

あとは、Hopkinsが出しているCOVID-19のMAPなどは非常に見やすいので現状を把握する上では非常に理解がしやすい。

まずは、一般的な情報を簡単におさらいをしていこうと思う。
以前2003年に流行したSARSや2012年に流行したMERSも今回と同じコロナウイルスで有るということは既知の事実であろう。下図はそれらをまとめたものになる。

下表は一般的なCOVID-19の症状になる。
やはり発熱の割合が多い。


下表はCOVID-19の採血検査になる。
白血球上昇は少なく、血小板はやや低下する。その中でリンパ球は減少している。LDH上昇とCRP高値、CK高値などがある。プロカルシトニンは正常で肝機能は30%の患者で上昇する。

ここからは、腎臓という観点からもちろん見ていこうと思う。
まだまだ分かっていない部分も多いとは思うが分かってる範囲で記載をしてきたいと思う。

COVID-19感染と腎臓
まずは、AKIの発生についてみていく。
以前のSARS、MERS(両者ともコロナウイルス)でのAKIの発生率は5-15%であったと報告され、ただ、AKIにまで至った例では60-90%と高い致死率が報告されていた。
それに比べると、まだ報告は十分ではないがCOVID-19でのAKI発生率は3-9%であり多少前者より下がる(JAMA2020)。

COVID19とAKIリスク

しかし、最近の報告では、感染者の中で血清Crが15.5%の患者で増加し、また14.1%でBUNが上昇したと報告がある。また、最近の報告でCOVID19で入院した710人の患者で、入院時にタンパク尿+血尿が44%に認められ、26.7%に血尿だけ認められたという。

ここまでのまとめ:
現段階ではAKIになるリスクはあり。発生率ははっきりはしていないが感染患者の10%前後。ただし、AKIになった場合は非常に死亡率が高くなる。
COVID19とmortality

AKIの原因は?
明確になっていない部分が多いが、多臓器不全やショックと共に起こることが多く、急性尿細管壊死(ATN)が一番の原因と考えられる。
2005年のSARSのときには横紋筋融解症も少ないが報告されていた。

治療に関しては?
基本的には対症療法となる。AKIに関してもまずは血圧コントロールをおこない、体液管理も行い、必要時に腎代替療法を開始する。

現在出ている治療に関しての報告:
・現在、RamdesivirのTrialが中国で開始され、2020年4月には終了するというから驚きである。この薬は抗ウイルス活性を有する開発中の核酸アナログ薬になっている。
・リン酸クロロキンが中国の他施設研究でCOVID19関連肺炎に対して有効だったという報告も有る。
・報告によっては血液灌流(Hemoperfusion)がサイトカイン除去に有効に働いたのではないかと言われている(6L/hrの大量の血液灌流が敗血症患者の炎症性サイトカイン(IL-6)などの除去に有効だったという報告による)。
・ステロイドに関してはSARSの際のメタアナリシスからも、ステロイド投与による利益よりも害のほうが多いということが報告されている。そのため、COVID-19でも推奨はされていない。
・COVID-19に罹患したが回復した人の血漿を投与することで臨床症状の改善を認めたあという報告があり、中国では現在他施設RCTでこの研究が進行中である(NCT04264858)。
・モノクローナル抗体であるトシリズマブがCOVID-19感染に有効かを中国では他施設RCTで行われている(ChiCTR2000029765)。
・また、COVID-19はACE2の受容体に結合する特性があり、その点でACE-IやARBは有効かという議論が有るがこれに関しては結論が出ていない。

治療のまとめ
まだ色々な情報が出ているが確固たるエビデンスのある治療はない。

次回はCOVID19と透析や移植について少し触れたいと思う。

現在色々と活動にも制限がかかる中、日々診療にあたっているみなさんも体調にはぜひ気をつけてください。