漫画Black Jackで難病の患者を治療法が見つかる未来まで凍結保存しておく話があったが、臓器を移植のために凍結保存する研究はほんとうに進んでいる(The Economist誌2016年2月6日付)。いま臓器、例えば腎臓は取り出されたあと氷冷されレシピエントのもとに運ばれる(HTKなどの灌流液をポンプで流すこともある)が、凍結保存することはできない。水は凍らせると結晶し容積も拡張するので組織が破壊されるからだ。それでcryoprotectant(糖など)を用いて温度を下げても結晶しないガラス相になるよう工夫したり、復温が均一かつ急速にできるように(そうしないとガラス相からとけた水が結晶したり、復温の程度差によりヒビが入ったりするので)磁性体をまぜて磁場をかけたり、いろいろ工夫している。研究者がお手本にしているのは氷点下を生きる動物や植物で、彼らが水の結晶化をふせぐために合成している蛋白や遺伝子を応用できないか試している。
米防衛省、各種財団も積極的に投資しておりベンチャー企業もたくさんあるから、1946年に設立されたアイバンクから70年、近い将来に腎臓バンクができるかもしれない。ちなみにアイバンクは、一層の角膜内皮細胞が一定の密度でシート状に生きていればいいのだが、やっぱり組織が損傷するのでごくまれな場合を除き凍らせることはない。日本やアメリカでは4℃(水がもっともガラス相に近いとされる)で4−7日保存できる。銀行というからもっと長いかと思っていた。欧州では28−34℃で培養しながら7−28日保存する(が感染の恐れが大きいので培地に抗菌薬と抗真菌薬をいれる)。2つの方法でアウトカムはあまり変わらないそうだ(Transfus Med Hemother 2011 38 143)。
クマさんがおしっこしないで冬眠できるのも、じん臓が一日に体液の何十倍もろ過してから不要なものを残して再吸収するのも、じん臓の替わりをしてくれる治療があるのも、すごいことです。でも一番のキセキは、こうして腎臓内科をつうじてみなさまとお会いできたこと。その感謝の気持ちをもって、日々の学びを共有できればと思います。投稿・追記など、Xアカウント(@Kiseki_jinzo)でもアナウンスしています。
2016/02/24
2016/02/09
Cacao Flavanols
(+)-cathechinとその異性体、(-)-epicathechinを主成分とするcacao flavanolに動脈硬化の予防や血圧低下の効果があるというのは10年近く前から言われていて(JAMA 2007 298 49)、そのメカニズムは不詳だが内皮細胞のNO活性をあげることが関係しているらしい。ただし、ダークチョコレートでないと意味がないし、ダークチョコレートも苦味をとるためにflavanolを除去している場合があるので、量が明記されているものでなくてはならない。さらに、チョコレートは脂肪が高くカロリーが高いので却って害になるかもしれない(Lancet 2007 370 2070)。とはいえ欧州のFDAにあたるEuropean Food Safety Authorityは、200mgのflavanolを含む食品で一定の基準を満たすものには"cocoa flavanols help maintain the elasticity of blood vessels, which contributes to normal blood flow"と表示してもよいと2014年に決めた。
そんなわけでドイツで透析患者さんを対象に900mg/dのcocoa flavanolを摂ってもらうスタディがされたら、FMD(flow-mediated vasodilation)上は血管が柔らかくなった(doi:10.2215/CJN.05560515)という結果だった(血圧はほとんど下がってないけど)。しかしこの実験はダークチョコレートや純カカオでつくったココアを使ったのではなく、cacao flavanolだけを水に溶かして飲んでもらったので、実際にこれだけの効果を得るにはたくさんチョコやココアを摂らないといけない。たんぱく制限がかかり代わりに脂質と糖質でカロリーを得るCKDの患者さんなら可能かもしれないが。ただし苦い(市販のポリフェノール高濃度ダークチョコレートを試食してみたが、カカオマスの純度が80%を越えるとかなり苦く、もはや薬だ)。あと、caffeineやtheobromineによる昂奮も考慮しなければならない(朝食べたらいいかもしれない)。
そんなわけでドイツで透析患者さんを対象に900mg/dのcocoa flavanolを摂ってもらうスタディがされたら、FMD(flow-mediated vasodilation)上は血管が柔らかくなった(doi:10.2215/CJN.05560515)という結果だった(血圧はほとんど下がってないけど)。しかしこの実験はダークチョコレートや純カカオでつくったココアを使ったのではなく、cacao flavanolだけを水に溶かして飲んでもらったので、実際にこれだけの効果を得るにはたくさんチョコやココアを摂らないといけない。たんぱく制限がかかり代わりに脂質と糖質でカロリーを得るCKDの患者さんなら可能かもしれないが。ただし苦い(市販のポリフェノール高濃度ダークチョコレートを試食してみたが、カカオマスの純度が80%を越えるとかなり苦く、もはや薬だ)。あと、caffeineやtheobromineによる昂奮も考慮しなければならない(朝食べたらいいかもしれない)。
2016/02/08
Lactic Acidosis and Lymphoma
リンパ腫で重度の乳酸アシドーシスを合併することがある。機序には肝障害、解糖系の亢進(hexokinase II、IGF-binding protein遺伝子の発現亢進、ミトコンドリア膜電位の喪失など、doi:10.1155/2009/534561)、腫瘍の成長がはやく血管新生が追いつかず内部環境が嫌気状態になる、などいろいろ考えられている。これらのいわゆるB型乳酸アシドーシスのほかに、低血圧、低酸素、敗血症などによるA型乳酸アシドーシスを併発していることもある。治療は現疾患の治療だが、きわめて予後不良だ(死亡率80%以上、Seminars in Oncology 2013 40 403)。Cairo and Bishopによる腫瘍崩壊症候群の診断分類に乳酸アシドーシスは含まれていないが、アポトーシスにより乳酸が産生されるという報告もある(Br J Haematol 2001 114 574)。化学療法をはじめて、重症乳酸アシドーシスを透析でしのいだという報告もあるが(NDT 2007 22 2383)、A型乳酸アシドーシスを合併していたり、アシドーシスの是正が追いつかなければ仕方ない。
なお腫瘍細胞が好気環境でも嫌気環境でも解糖系が亢進していることをWarburg効果といい、FDG-PETはdeoxyglucoseが解糖系の亢進した細胞に取り込まれることを原理に利用している。リンパ腫は取り込みがとくにさかんで診断に利用されるが、じつはリンパ節のなかでFDGを取り込んでいるのは間質細胞で、腫瘍細胞は間質細胞がつくった乳酸を取り込んでさかんにミトコンドリアで利用している(つまりリンパ腫において乳酸アシドーシスはparaneoplastic syndrome)ということを組織の免疫染色で示した興味深い論文があった(乳酸産生にかかわるPKM1、PKM2、乳酸のエクスポートにかかわるMCT4は間質細胞でよく染まり腫瘍細胞ではほぼ染まらない、など;Seminars in Oncology 2013 40 403)。これはreverse Warburg effectと呼ばれているそうだ。それにしても代謝経路は複雑で、壁に代謝マップを貼っておきたくなる。
なお腫瘍細胞が好気環境でも嫌気環境でも解糖系が亢進していることをWarburg効果といい、FDG-PETはdeoxyglucoseが解糖系の亢進した細胞に取り込まれることを原理に利用している。リンパ腫は取り込みがとくにさかんで診断に利用されるが、じつはリンパ節のなかでFDGを取り込んでいるのは間質細胞で、腫瘍細胞は間質細胞がつくった乳酸を取り込んでさかんにミトコンドリアで利用している(つまりリンパ腫において乳酸アシドーシスはparaneoplastic syndrome)ということを組織の免疫染色で示した興味深い論文があった(乳酸産生にかかわるPKM1、PKM2、乳酸のエクスポートにかかわるMCT4は間質細胞でよく染まり腫瘍細胞ではほぼ染まらない、など;Seminars in Oncology 2013 40 403)。これはreverse Warburg effectと呼ばれているそうだ。それにしても代謝経路は複雑で、壁に代謝マップを貼っておきたくなる。
2016/02/04
キラキラ
ATNで無尿になっているとき、高用量のフロセミド(100mgとか200mgとか240mgとかひとによって違うけど;私は日本に帰ってきてからは100mgにしているが)をボーラスして1−2時間の尿の反応をみて、でなければ透析するというプラクティスがある。20mgとか40mgじゃ出るものも出ないよね、という感覚が腎臓内科をやっているとなんとなく身につく。まあ高用量でもでないだろうな、とさっさと見切りをつけて透析を始める理由がほしくて打つことがほとんどなのだが、ときには腎臓が起きたように透明な尿が出ることもある。でもこういうテストに信ぴょう性はないらしいとどこかで読んだ(フロセミドはクリアランスをあげるわけではないので結局透析開始を遅らせるだけで死亡率を悪化させるおそれがあるとか;たとえばAnaesthesia 2010 65 283)。逆に体液減少にともなう腎前性腎不全が戻るかどうかをみるのに、外液を1L入れたけど出ませんとか、出ないので5Lいれてみますとか言われると、2Lくらいがちょうどいいんじゃないかなあ(反応尿があればよし、なければ諦める;ショックで入れなきゃいけない場合は別だが)と思う。これも根拠はないけど、経験的に。いずれのばあいも、反応するときはキラキラ透明な淡黄色がすーっとでて、濁った褐色の尿が滲むように出る時は尿細管が溶けたのをみているだけである。
150mEq/l NaHCO3
日本には150mEq/lの炭酸ナトリウム輸液はないのかと思っていたが、友達の病院にはあるという。幻?と思っていたら、ちゃんとあった。炭酸水素Na静注1.26%バッグ「フソー」という(友だちが言っていたのは別の商品名だった気もするが、とにかくある)。1992年から販売されていて、アシドーシス以外にも蕁麻疹やめまいに適応があるらしい。
でも、なくても作れる。7%メイロン60ml(3管)には50mEqのNaHCO3がふくまれているから5%ブドウ糖液500mlバッグから90ml捨ててメイロン90mlを混注すれば、同じ濃度のものができる(8.4%メイロンはわかりやすくて1mEq/mlなので、同じことを75mlですればいい)。
…という計算をおこたってきたばっかりに、たとえば激しい下痢による体液減少にともなう重症の(HCO3-が10−12mEq/l以下、あるいは呼吸性代償でへとへとになっている)AG非開大代謝性アシドーシスのような、明らかに150mEq/lの炭酸ナトリウム輸液をつかうべき機会を何度もふいにしてきた。
ただし、よく知られているように代謝性アシドーシスにおける炭酸水素ナトリウムの治療には細胞内アシドーシスを悪化させるとか呼吸が悪い人では体内で変換されたCO2が貯まるとか問題もある。
ただ重度のアシデミアはカテコラミンの反応性を落とすだけでなく、心収縮力を低下させ(細胞へのCa2+流入をH+が競争的に阻害するのが主因だとか)、動脈拡張、静脈収縮、不整脈などをおこし血行動態を不安定にするから、そのようなばあい「溢水の心配がない限り」炭酸水素ナトリウムで治療してもよいとある(だから、こないだ書いた腎皮質壊死のように尿が出る見込みのないひとには難しい…あくまで透析までのつなぎだ)。
KDIGO AKIガイドラインにはpHいくつ以下の重症アシドーシスで透析するかという質問に答えるエビデンスはなく、数字のトレンドや基礎疾患などに応じて決めるとある。UpToDateには7.1以下とあり、その根拠は7.1以下で上述の血行動態異常がおきるためとしている。
でも、なくても作れる。7%メイロン60ml(3管)には50mEqのNaHCO3がふくまれているから5%ブドウ糖液500mlバッグから90ml捨ててメイロン90mlを混注すれば、同じ濃度のものができる(8.4%メイロンはわかりやすくて1mEq/mlなので、同じことを75mlですればいい)。
…という計算をおこたってきたばっかりに、たとえば激しい下痢による体液減少にともなう重症の(HCO3-が10−12mEq/l以下、あるいは呼吸性代償でへとへとになっている)AG非開大代謝性アシドーシスのような、明らかに150mEq/lの炭酸ナトリウム輸液をつかうべき機会を何度もふいにしてきた。
ただし、よく知られているように代謝性アシドーシスにおける炭酸水素ナトリウムの治療には細胞内アシドーシスを悪化させるとか呼吸が悪い人では体内で変換されたCO2が貯まるとか問題もある。
ただ重度のアシデミアはカテコラミンの反応性を落とすだけでなく、心収縮力を低下させ(細胞へのCa2+流入をH+が競争的に阻害するのが主因だとか)、動脈拡張、静脈収縮、不整脈などをおこし血行動態を不安定にするから、そのようなばあい「溢水の心配がない限り」炭酸水素ナトリウムで治療してもよいとある(だから、こないだ書いた腎皮質壊死のように尿が出る見込みのないひとには難しい…あくまで透析までのつなぎだ)。
KDIGO AKIガイドラインにはpHいくつ以下の重症アシドーシスで透析するかという質問に答えるエビデンスはなく、数字のトレンドや基礎疾患などに応じて決めるとある。UpToDateには7.1以下とあり、その根拠は7.1以下で上述の血行動態異常がおきるためとしている。
2016/02/03
Bilateral renal cortical necrosis
フェロー時代にATNで全く無尿になる最重症をcortical necrosisというと耳学問に教わってそのままにしていたが、それについて調べる機会があった。
歴史的には産科救急によるもの(大量出血によるショック、羊水塞栓、産じょく期の敗血症、septic abortionなど)として注意すべきものが多かったが、ほかにもショック、重症下痢、TTP/HUSをふくむTMA、APLS、急性膵炎、腎毒性の薬物、腎移植における超急性拒絶反応、不適合輸血、熱傷、蛇毒、マラリア、スズメバチなど幅広い病態でみられる。
腎生検すれば皮質が死んでいるのがわかるが、壊死がpatchyかdiffuseかをみるのには造影CT(写真、もはや造影剤の影響は関係ないということだろうか)やレノグラムもあるがMRIが使える(T2でlow-intensityになるとか)らしい。超音波で皮質がhypoechoicになるという人もいる。
さてこの疾患で知りたいのは腎予後だが、現疾患の程度や皮質壊死のextension、尿が早く出てくるか、などによるのではっきりしたことはいえない。ただ大事なことは、こうなったら少なくとも一時的な透析は避けられないし、ちょっとやそっと輸液や利尿剤をつかったって無効で、運が良ければ数週間から数カ月後に透析離脱できたというような人もいるという程度、ということだ。致死的な適応まで待ってあわてて緊急透析しないようにしなければならない。
いつの誰情報かしらないがeMedicineには「治療しなければ致死率は50%以上、早く透析したほうが予後が良い」と書いてあるので、重症ATNで無尿なら緊急適応がなくてもさっさと見切りをつけて透析したほうがいいのかもしれないが、AKIにおけるearly versus late RRTというのはまた別の話題でcontraversialなのでなんとも言えない。
歴史的には産科救急によるもの(大量出血によるショック、羊水塞栓、産じょく期の敗血症、septic abortionなど)として注意すべきものが多かったが、ほかにもショック、重症下痢、TTP/HUSをふくむTMA、APLS、急性膵炎、腎毒性の薬物、腎移植における超急性拒絶反応、不適合輸血、熱傷、蛇毒、マラリア、スズメバチなど幅広い病態でみられる。
腎生検すれば皮質が死んでいるのがわかるが、壊死がpatchyかdiffuseかをみるのには造影CT(写真、もはや造影剤の影響は関係ないということだろうか)やレノグラムもあるがMRIが使える(T2でlow-intensityになるとか)らしい。超音波で皮質がhypoechoicになるという人もいる。
さてこの疾患で知りたいのは腎予後だが、現疾患の程度や皮質壊死のextension、尿が早く出てくるか、などによるのではっきりしたことはいえない。ただ大事なことは、こうなったら少なくとも一時的な透析は避けられないし、ちょっとやそっと輸液や利尿剤をつかったって無効で、運が良ければ数週間から数カ月後に透析離脱できたというような人もいるという程度、ということだ。致死的な適応まで待ってあわてて緊急透析しないようにしなければならない。
いつの誰情報かしらないがeMedicineには「治療しなければ致死率は50%以上、早く透析したほうが予後が良い」と書いてあるので、重症ATNで無尿なら緊急適応がなくてもさっさと見切りをつけて透析したほうがいいのかもしれないが、AKIにおけるearly versus late RRTというのはまた別の話題でcontraversialなのでなんとも言えない。
2016/02/02
Hemorrhagic risk of kidney biopsy
超音波を使う前は透視下に腎生検していた。しかしIVPであれretrograde pyelographyであれ腎下極の皮質からサンプルを取るのはほとんどブラインドで大変そうだなとおもう(写真、Urol J 2007 4 251)。いまでも中東では透視下でやっているという噂をきいたことがあるが、調べてみるとたしかにやっていた(前掲論文、イラン;ただ超音波ガイド下が何らかの理由で失敗した場合の選択肢だった)。
今の腎生検はまず超音波ガイド下で、針もよくなって確実性と安全性は高まったけれど、それでもリスクフリーではない。そしてリスクをどのようにヘッジするかについての基準はあいまいだ。たとえば「出血傾向」「感染症」「高血圧」などが禁忌事項に挙げられているが、具体的な数字や記載はガイドラインにも書かれていない。リスクと必要性をよく考えてケースバイケースに判断するということだろう。
だからたとえば「血小板は何万以上」とか一概にいうことはできないのだが、何かないかとおもって調べるとレビュー(というかフランスのガイドライン作りのために現存する論文を見直したもの;World J Nephrol 2014 3 287)と血小板数と出血リスクについて調べた一施設スタディ(Lupus 2012 21 848、Johns Hopkins;SLE症例)があって、前者は「一般的にmajor surgeryは5万/mm3以上といわれるが多くの腎臓内科医は10万/mm3以下を禁忌と考える」、後者は「15万/mm3以下(5万/mm3以上)の群では以上の群に比べて高い、私達は10万/mm3以上を慣習にしている」とあった。
血小板低下時にどうしても腎生検しなければならない時はどうするかも、こうしなさいというのは余りない。まずなにより、血小板減少の原因にもよるからだ。私は血小板減少の原疾患を治療するのが本筋と思う。血小板輸血が禁忌でない場合でも、輸血で10万/mm3を周術期に維持する(腎生検直前だけ上げても仕方ないと思われ)というのは現実的ではなさそうだ。経内頚静脈アプローチもあるが、やっている施設が限られると思われる。
血圧は収縮期血圧160mmHg以上と以下の群・拡張期血圧100mmHg以上と以下の群で合併症に差があったというスタディと、140/90mmHgがよいのではないかと推奨する論文と、術直前の血圧に関わらず、高血圧の既往がある症例は細動脈が硝子化して出血に反応して収縮できないためリスクがあるという論文もある、と書かれていた。World J Nephrol 2014 3 287は、他にも術後安静時間の比較などいろいろ調べてくれていて参考になった。ただ尿路感染症についての記載がないので、それは別に調べなければならない。
今の腎生検はまず超音波ガイド下で、針もよくなって確実性と安全性は高まったけれど、それでもリスクフリーではない。そしてリスクをどのようにヘッジするかについての基準はあいまいだ。たとえば「出血傾向」「感染症」「高血圧」などが禁忌事項に挙げられているが、具体的な数字や記載はガイドラインにも書かれていない。リスクと必要性をよく考えてケースバイケースに判断するということだろう。
だからたとえば「血小板は何万以上」とか一概にいうことはできないのだが、何かないかとおもって調べるとレビュー(というかフランスのガイドライン作りのために現存する論文を見直したもの;World J Nephrol 2014 3 287)と血小板数と出血リスクについて調べた一施設スタディ(Lupus 2012 21 848、Johns Hopkins;SLE症例)があって、前者は「一般的にmajor surgeryは5万/mm3以上といわれるが多くの腎臓内科医は10万/mm3以下を禁忌と考える」、後者は「15万/mm3以下(5万/mm3以上)の群では以上の群に比べて高い、私達は10万/mm3以上を慣習にしている」とあった。
血小板低下時にどうしても腎生検しなければならない時はどうするかも、こうしなさいというのは余りない。まずなにより、血小板減少の原因にもよるからだ。私は血小板減少の原疾患を治療するのが本筋と思う。血小板輸血が禁忌でない場合でも、輸血で10万/mm3を周術期に維持する(腎生検直前だけ上げても仕方ないと思われ)というのは現実的ではなさそうだ。経内頚静脈アプローチもあるが、やっている施設が限られると思われる。
血圧は収縮期血圧160mmHg以上と以下の群・拡張期血圧100mmHg以上と以下の群で合併症に差があったというスタディと、140/90mmHgがよいのではないかと推奨する論文と、術直前の血圧に関わらず、高血圧の既往がある症例は細動脈が硝子化して出血に反応して収縮できないためリスクがあるという論文もある、と書かれていた。World J Nephrol 2014 3 287は、他にも術後安静時間の比較などいろいろ調べてくれていて参考になった。ただ尿路感染症についての記載がないので、それは別に調べなければならない。
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