2016/02/09

Cacao Flavanols

 (+)-cathechinとその異性体、(-)-epicathechinを主成分とするcacao flavanolに動脈硬化の予防や血圧低下の効果があるというのは10年近く前から言われていて(JAMA 2007 298 49)、そのメカニズムは不詳だが内皮細胞のNO活性をあげることが関係しているらしい。ただし、ダークチョコレートでないと意味がないし、ダークチョコレートも苦味をとるためにflavanolを除去している場合があるので、量が明記されているものでなくてはならない。さらに、チョコレートは脂肪が高くカロリーが高いので却って害になるかもしれない(Lancet 2007 370 2070)。とはいえ欧州のFDAにあたるEuropean Food Safety Authorityは、200mgのflavanolを含む食品で一定の基準を満たすものには"cocoa flavanols help maintain the elasticity of blood vessels, which contributes to normal blood flow"と表示してもよいと2014年に決めた。
 そんなわけでドイツで透析患者さんを対象に900mg/dのcocoa flavanolを摂ってもらうスタディがされたら、FMD(flow-mediated vasodilation)上は血管が柔らかくなった(doi:10.2215/CJN.05560515)という結果だった(血圧はほとんど下がってないけど)。しかしこの実験はダークチョコレートや純カカオでつくったココアを使ったのではなく、cacao flavanolだけを水に溶かして飲んでもらったので、実際にこれだけの効果を得るにはたくさんチョコやココアを摂らないといけない。たんぱく制限がかかり代わりに脂質と糖質でカロリーを得るCKDの患者さんなら可能かもしれないが。ただし苦い(市販のポリフェノール高濃度ダークチョコレートを試食してみたが、カカオマスの純度が80%を越えるとかなり苦く、もはや薬だ)。あと、caffeineやtheobromineによる昂奮も考慮しなければならない(朝食べたらいいかもしれない)。