2022/10/10

尿路結石の治療の知識と最近の話題(サクサクと短く)

お世話になっています!

期間がまた空いてしまっていますが、今後も少しずつ投稿していきたいと思います。


今日の話題は、尿路結石について。

尿路結石に関しては、数年前のTEDでとても五分くらいでいい動画があったので、貼り付けておきます!

尿路結石の動画(TED-ED)

尿路結石には、治療と予防があります。


治療は結石の大きさに左右されます。

5mm以下:自然排石が期待できるので、水分をしっかり取ってもらいます。

5mmより大きく10mm以下:4週まではタムスロシンなどを用いて、石が排石しやすいようにします。タムスロシンが使用できない場合は、他のα阻害薬を用います。

→4週経過しても石が落ちない場合などは泌尿器科にコンサルトします。

結石が10mm以上や上記のように改善しない場合:治療手段としては、下記があります。少しだけ簡単に説明します。

・ESWL (体外衝撃波結石破砕術:extracorporeal shock wave lithotripsy)

体の外より衝撃波をあて、体に傷をつけることなく結石を粉々に砕き、体の外に流しだす治療法です。


・URS (経尿道的腎尿管結石破砕術):本邦ではTUL (経尿道的尿管砕石術:Transurethral ureterolithotripsy)と言われます。

下半身麻酔または全身麻酔をした後に内視鏡(硬性あるいは軟性尿管鏡)を尿道から挿入し、内視鏡の先端を尿管あるいは腎盂内の結石にまで導き、結石を直接観察しながら結石を破砕し、破砕された結石を体外に摘出する手術方法です。破砕には細い内視鏡でも使用でき、硬い結石でも破砕効果の高いホルミウム・ヤグレーザーを用います。




・PNL(経皮的腎結石砕破術:Percutaneous nephrolithotripsy)

背中に小さな穴を開け、そこから内視鏡を入れ、腎臓の結石を砕石し、取り出します。比較的大きな腎結石に対して行われることが多いです。



・腹腔鏡下結石除去

行われることは稀です。


予防は、下記のものが挙げられます。

・水分を十分に摂る(1日尿量を2L以上にすることで結石再発リスクを減少できる)

・カルシウムを摂る(カルシウムは腸管内でシュウ酸と結合して便に排泄させ、尿中シュウ酸を減少)

・クエン酸を摂る(シュウ酸とカルシウム、リン酸とカルシウムが結合するのを抑制、また尿中pHを上昇させ酸性尿を是正させ尿酸結石、シスチン結石の予防に有効)

・シュウ酸摂取量を抑える(ほうれん草、キャベツ、ブロッコリー、竹の子、バナナ、玉露や抹茶や煎茶などのお茶、ココア、チョコレート、コーヒー、紅茶などを控える)

・ブリン体の多く含まれる食品や飲料を控える(プリン体は体内で代謝され尿酸となり、過剰摂取で高尿酸血症や酸性尿を引き起こす。)

・動物性のタンパクや脂肪の摂取を控える。(動物性タンパク質が多くなると尿中尿酸が多くなる、動物性脂肪が多いと腸内脂肪酸が増えてカルシウムと結合し、シュウ酸がカルシウムと結合困難になり、尿中にシュウ酸が多くなり結石ができやすくなる)


前置きが長くなってしまいましたが、今回TULを行った際に主要な大きな結石だけでなく、小さな腎結石もしっかりと回収したほうが、患者さんのアウトカムとしてはいいのか?というのが、NEJMに出ました。

わかりやすい短いビデオは、こちらを参考にしてください!


小さな腎結石をとることで、再発率の低下に寄与することが証明されています。ただ、除去のための処置時間は長くなり、救急外来に来る頻度は変わらないという形でした。

ただ、結石の患者さんにとっては痛みが一番辛いので、再発を防げることは重要かもしれません。


内科医が、泌尿器科の先生に結石除去のコンサルトをお願いする際に、小さな石を見つけた際に、これも取るのか?聞いてもいいかもしれませんね。



2022/03/06

これは尿細管障害ですか??

すごく久しぶりの投稿になってしまってすみません。

この記事を書いている時は、コロナ感染も多い状況で皆さまも本当にお忙しい時期だなと思っています。何年後かに、この時の記事を見て、そんな忙しい時期もあったんだなと振り返れればなと思っています。


腎機能障害とどのように判別していますか?

多くは血清CrからのeGFRを用いて判断していると思います。CKD評価に用いられる尿Alb/Cr比も用いることはありますが、これらの評価は糸球体の障害などを反映している場合が多いとされています。

既知のように糸球体の障害だけが、決して末期腎不全の予後に関わっているわけではないです。


尿細管間質の障害や繊維化も腎不全の予後に関連していることが知られています。ただ、この部分の障害は腎生検によって確定診断される場合が多いと思います。しかし、腎生検ができない症例もいて、尿細管間質障害の判断に血清や尿中バイオマーカーが何十年もの間研究されています。

今回は、AJKD2021の論文が非常によかったので、それを踏まえてまとめたいと思います。


皆さんは、このバイオマーカーを日常臨床でどのように使用していますか?主には、疾患の診断や予後予測、治療適応の可能性の決定に用いられると思います。



尿細管バイオマーカーは2つのカテゴリーに分かれます。

・組織障害や修復を直接的に反映するバイオマーカー

 ーKIM-1(kidney injury marker-1)、EGF (Epidermal Growth Factor)、MCP-1(Monocyte Chemoattractant -1)など

・尿細管細胞に関与するものを測定するバイオマーカー

 ーα1-マイクロアルブミン(A1M)、馬尿酸、ウロモジュリンなど

このバイオマーカーに関しては、AJKD 2021/5の論文でも触れられています。


尿細管マーカーに関しては、2018年にSPRINT試験のコホートデータを用いて、978人のeGFR<60mL/min/1.73m2の参加者に対してみているものがあ理ます。この研究では、8つの尿中バイオマーカーをみていますが、厳密に血圧コントロールを行なった群でeGFR低下が認められたが、尿中バイオマーカーに関してはeGFR低下があるにも関わらず増加はしませんでした。また、これはACCORD試験のコホートデータでも同様の結果でした。


尿中マーカーに関しては一つの尿中バイオマーカーを使用しての診断意義や予後予測に関しては難しいとされています。ただ、複数のマーカーを用いることで意義が出る可能性はある可能性があるとされています。


なかなか使い分けが難しく、今後も臨床にどのように生かせるかを考えながらおこなえるようにしていきたいと思っています。