ここまで自分が経験した血漿交換例を手がかりに勉強してきた。ところで、ASFAガイドラインは140ページもある。だから必要なときに必要な部分を読めばよいが、最後にASFAがGrade Iで適応を推奨している疾患一覧を並べる。
AIDP
age-related macular degeneration, dry (rheopheresis)
ANCA-associated RPGN, dialysis dependent
ANCA-associated RPGN, with diffuse alveolar hemorrhage
anti-GBM disease, with alveolar hemorrhage
anti-GBM disease, dialysis independent
babesiosis, severe
CIDP
cryoglobulinemia, severe
cutaneous T-cell lymphoma, erythrodermic (ECP)
familial hypercholesterolemia, homozygotes (LDL-apheresis)
FSGS, recurrent in transplanted kidney
atypical HUS, factor H antibody
hereditary hemachromatosis (erythrocytapheresis)
hyperleukocytosis (leukocytapheresis)
hyperviscosity in monoclonal gammopathies, symptomatic
hyperviscosity in monocloncal gammopathies, prophylaxis for rituximab
ABOi liver transplantation, desensitization
myasthenia gravis, moderate-to-severe
myasthenia gravis, pre-thymectomy
paraproteinemic demyelinating polyneuropathies
PANDAS (sydenham's chorea)
polycythemia vera (erythrocytapheresis)
ABO compatible renal transplant, AMR
ABO compatible renal transplant, desensitization
sickle cell disease, acute stroke (RBC exchange)
TMA, ticlopidine-induced
Wilson's disease, fulminant
RheopheresisはDFPP(double-filtration plasmapheresis)のことで、血漿のうち高分子量の成分を選択的に除去する治療だ。Age-related macular degenerationでは、fibrinogen、LDL-C、fibronectin、vWFなどを除去して血液の粘稠度を下げ、網膜の血流を改善することが期待される。
ECPはextracorporeal photopheresisの略で、血液のある成分を体外に取ってきて、光で焼く治療だ。たとえばcutaneous T-cell lymphomaでは、CD4+のT細胞を選択的に取ってきて、8-methoxypsoralenで処理してから紫外線Aで焼き体内に戻すそうだ。
クマさんがおしっこしないで冬眠できるのも、じん臓が一日に体液の何十倍もろ過してから不要なものを残して再吸収するのも、じん臓の替わりをしてくれる治療があるのも、すごいことです。でも一番のキセキは、こうして腎臓内科をつうじてみなさまとお会いできたこと。その感謝の気持ちをもって、日々の学びを共有できればと思います。投稿・追記など、Xアカウント(@Kiseki_jinzo)でもアナウンスしています。
2014/01/24
2014/01/22
血漿交換 3 (aka TTP)
さらにASFAガイドラインのTTPのところを読み、まずはADAMTS13がA disintegrin and metalloproteinase with a thrombospondin type 1 motif, member 13の略であることを知った(十年一昔というが、私が学生のときはこれを単にvWFのcleaving enzymeと習った)。そして、現在では診断はpentad(発熱、溶血性貧血、血小板減少、腎機能障害、意識障害)が揃わなくても、説明のつかない急性発症のMAHA(microangiopathic hemolytic anemia)と血小板減少で、他のTMA(DIC、悪性高血圧、HUS、幹細胞移植後など)が考えにくければ十分と学んだ。つまり、TTPはいまだ臨床診断ということだ(Br J Haematol 2012 158 323も参照)。
後天性TTPは多くの場合自己免疫で、抗ADAMTS13抗体(IgG4サブクラスが最も多い)があれば再発リスクというデータもあるようだが、いまだこの抗体を測定することは一般的ではない。膠原病、感染症、悪性腫瘍、薬剤、妊娠、骨髄移植などさまざまな病態が誘因になる。先天性TTPはADAMTS13欠損をもたらさうさまざまな遺伝子変異と関連している。
ASFAガイドラインは、TTPはほぼ致死的な病気だったのが、血漿交換によって致死率が10%以下にさがったと、治療の勝利を誇っている。もっともこれは後天性の場合(抗ADAMTS13抗体を除去する)で、先天性の場合は単にADAMTS13を補う意味で血漿、cryopricipitate、濃縮ADAMTS13などが投与されることもある。
どれだけの量で、いつまで血漿交換を続けるべきか?ASFAガイドラインはTPVの1-1.5倍量で毎日、血小板が15万/mm3を越え、LDHが基準値内で2-3日安定するまで行われることが多いと書いてある。UKガイドラインはTPVの1.5倍量を3日間、そのあとはTPVの1倍量と書いている。教科書には7日間とあった(が、日本は保険の都合で週3日なのだとか)。
抗ADAMTS13抗体産生を抑えるためにもっともよく用いられる補助治療はステロイドで、ASFAガイドラインは1mg/kg/dayと言う(UKガイドラインは1g/day methylprednisolone三日間を併記、また別の教科書には200mgから始めろと書いてある)が、有効性はどのみち確立していない。
再発例には血漿交換のdoseを増やしてさらにrituximabが用いられ、あるスタディでは375mg/m2/weekを4回(Blood 2011 118 1746)。しかし、最近はrituximabがfirst-lineとしても用いられるようになってきた(J Thromb Thrombolysis 2012 34 347)。CNI、vincrisineなども文献はあるようだ。つづく。
後天性TTPは多くの場合自己免疫で、抗ADAMTS13抗体(IgG4サブクラスが最も多い)があれば再発リスクというデータもあるようだが、いまだこの抗体を測定することは一般的ではない。膠原病、感染症、悪性腫瘍、薬剤、妊娠、骨髄移植などさまざまな病態が誘因になる。先天性TTPはADAMTS13欠損をもたらさうさまざまな遺伝子変異と関連している。
ASFAガイドラインは、TTPはほぼ致死的な病気だったのが、血漿交換によって致死率が10%以下にさがったと、治療の勝利を誇っている。もっともこれは後天性の場合(抗ADAMTS13抗体を除去する)で、先天性の場合は単にADAMTS13を補う意味で血漿、cryopricipitate、濃縮ADAMTS13などが投与されることもある。
どれだけの量で、いつまで血漿交換を続けるべきか?ASFAガイドラインはTPVの1-1.5倍量で毎日、血小板が15万/mm3を越え、LDHが基準値内で2-3日安定するまで行われることが多いと書いてある。UKガイドラインはTPVの1.5倍量を3日間、そのあとはTPVの1倍量と書いている。教科書には7日間とあった(が、日本は保険の都合で週3日なのだとか)。
抗ADAMTS13抗体産生を抑えるためにもっともよく用いられる補助治療はステロイドで、ASFAガイドラインは1mg/kg/dayと言う(UKガイドラインは1g/day methylprednisolone三日間を併記、また別の教科書には200mgから始めろと書いてある)が、有効性はどのみち確立していない。
再発例には血漿交換のdoseを増やしてさらにrituximabが用いられ、あるスタディでは375mg/m2/weekを4回(Blood 2011 118 1746)。しかし、最近はrituximabがfirst-lineとしても用いられるようになってきた(J Thromb Thrombolysis 2012 34 347)。CNI、vincrisineなども文献はあるようだ。つづく。
2014/01/20
血漿交換 2 (aka TPV)
ABO不適合の脱感作で薦められる血漿交換の量と回数は?これも、施設によって異なる(交換量はTPVの1-1.5倍、交換はアルブミンまたはFFP、毎日または隔日で数回と書いてある)。TPVとはtotal plasma volumeの略で、Total blood volume×(1-Hct)だ。Total blood volumeは、Nadlerの方程式というのが最も正確だそうで、男性は0.3669 * Ht(in meter)^3 + 0.03219 * Wt(in kg)+ 0.6041、女性は0.3561 * Ht(in meter)^3 + 0.03308 x Wt(in kg)+ 0.1833。
しかし、さらに調べると近似したGilcher’s Rule of Fivesというのがあった。これは性別と体格で大体total blood volumeがわかるという優れものだ。男性なら60ml/kg(太り体型)、65ml/kg(やせ体型)、70ml/kg(普通体型)、75ml/kg(筋肉質体型)。女性なら55ml/kg(太り体型)、60ml/kg(やせ体型)、65ml/kg(普通体型)、70ml/kg(筋肉質体型)。
だから、たとえば普通体型でHctが40%の男性の1-1.5倍のTPV量は36-54ml/kgだが、実際にはこの計算をしている人はほとんどいないと思われる。これを交換するのに必要なFFPを、今度は単位に変換するのだが、これが紛らわしい。というのも、FFP一単位が120ml(全血200mlから取れる血漿量)と思ったら、480mlのことを慣習的に「5単位」というらしいからだ。だから、当座は単位よりmlで表現したほうがよさそうだ。
しかし、さらに調べると近似したGilcher’s Rule of Fivesというのがあった。これは性別と体格で大体total blood volumeがわかるという優れものだ。男性なら60ml/kg(太り体型)、65ml/kg(やせ体型)、70ml/kg(普通体型)、75ml/kg(筋肉質体型)。女性なら55ml/kg(太り体型)、60ml/kg(やせ体型)、65ml/kg(普通体型)、70ml/kg(筋肉質体型)。
だから、たとえば普通体型でHctが40%の男性の1-1.5倍のTPV量は36-54ml/kgだが、実際にはこの計算をしている人はほとんどいないと思われる。これを交換するのに必要なFFPを、今度は単位に変換するのだが、これが紛らわしい。というのも、FFP一単位が120ml(全血200mlから取れる血漿量)と思ったら、480mlのことを慣習的に「5単位」というらしいからだ。だから、当座は単位よりmlで表現したほうがよさそうだ。
2014/01/17
血漿交換 1 (aka ABOi kidney transplant)
じつは、私が前にいた施設では血漿交換を病理部がやっていた。病理部というか、輸血部・検査部という感じだったが、とにかく腎臓内科は(血漿交換に使うカテーテルの挿入も含めて)タッチしなかった。これは改善されるべき問題で、さもなければフェローシップを卒業してから自分で学ばなければならない。
そんなわけで、ABO不適合の移植前血漿交換はAB型のFFPで置換する、とか聞いても最初は「何のことやら」だった(抗A、抗B抗体をふくまない血漿を選択するといわれれば納得だが;そもそもABO不適合移植じたい、前いた施設では少なくとも私がいた2年間では1件もなかった…レクチャは受けたが)。それで、いま勉強している。
たとえばABO不適合移植の場合、昔は脾摘していたがRituximabを使うようになってからはしないという歴史的な背景、Rituximabは200mg投与が多い(が人により100mgだったり500-1000mgだったり、1回だったり複数回だったりする)、血漿交換は抗A・抗B抗体が16倍以下を目標にしている、などについて論文で読んだ(Transplantation 2011 91 853)。
またASFA(American Society for Apheresis)によるガイドライン(J Clin Apher 2013 28 145)も入手した。この文献は、ABO不適合の移植前脱感作をRecommendation Grade 1B、Category Iに分類しているのみならず、教科書的記述もあって分かりやすい。
まずABO不適合にはmajor incompatibility(レシピエントの抗A・抗B抗体によりドナー臓器の内皮細胞にあるA抗原・B抗原が攻撃され超急性・急性の体液性拒絶を起こす)、minor incompatibility(ドナー臓器に含まれるリンパ球が抗A・抗B抗体を産生してレシピエントに溶血性貧血を起こす)がある。
Rituximabが主流だがbortezomibなどほかの免疫抑制剤が用いられることもあるし、これらの他にステロイド・MMF・CNIなども用いられるが、universalなレジメンはない。移植後に抗体価があがってくることはあるが、それらが全てAMR(antibody-mediated rejection)なわけではない(PPVは低いがNPVは高いということ)。腎生検でのC4d positivityについても同様で、それすなわちAMRなわけではない。つづく。
そんなわけで、ABO不適合の移植前血漿交換はAB型のFFPで置換する、とか聞いても最初は「何のことやら」だった(抗A、抗B抗体をふくまない血漿を選択するといわれれば納得だが;そもそもABO不適合移植じたい、前いた施設では少なくとも私がいた2年間では1件もなかった…レクチャは受けたが)。それで、いま勉強している。
たとえばABO不適合移植の場合、昔は脾摘していたがRituximabを使うようになってからはしないという歴史的な背景、Rituximabは200mg投与が多い(が人により100mgだったり500-1000mgだったり、1回だったり複数回だったりする)、血漿交換は抗A・抗B抗体が16倍以下を目標にしている、などについて論文で読んだ(Transplantation 2011 91 853)。
またASFA(American Society for Apheresis)によるガイドライン(J Clin Apher 2013 28 145)も入手した。この文献は、ABO不適合の移植前脱感作をRecommendation Grade 1B、Category Iに分類しているのみならず、教科書的記述もあって分かりやすい。
まずABO不適合にはmajor incompatibility(レシピエントの抗A・抗B抗体によりドナー臓器の内皮細胞にあるA抗原・B抗原が攻撃され超急性・急性の体液性拒絶を起こす)、minor incompatibility(ドナー臓器に含まれるリンパ球が抗A・抗B抗体を産生してレシピエントに溶血性貧血を起こす)がある。
Rituximabが主流だがbortezomibなどほかの免疫抑制剤が用いられることもあるし、これらの他にステロイド・MMF・CNIなども用いられるが、universalなレジメンはない。移植後に抗体価があがってくることはあるが、それらが全てAMR(antibody-mediated rejection)なわけではない(PPVは低いがNPVは高いということ)。腎生検でのC4d positivityについても同様で、それすなわちAMRなわけではない。つづく。
2014/01/11
UMOD
Tamm-HorsfallタンパクをRockfellerにいたTamm先生とHorsfall先生が発表したのは1952年(J Exp Med 1952 95 71)。当時の論文を読むと、インフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、New Castle Diseaseウイルスによってこのタンパクが構造を変えることが主に示されている。
T-Hタンパクが尿路感染症予防の役割を果たしているとかいうまことしやかな噂は、ここから来たのだろうか?根拠はないが、少なくともこのタンパクの異常でおこるMCKD2(medullary cystic kidney disease 2)やHNJF1(familial juvenile hyperuricemic nephropathy 1)で尿路感染症が多いという話は聴かない。
このタンパクは今ではuromodulinと呼ばれ、UMOD遺伝子がコードしている。その発現はループ上行脚に限定的で(J Clin Path 1969 22 334)、膜タンパクと水溶性(尿中に放出される)のが存在する。Uromodulinが何をしているかずっと謎だったが、GWASをしてUMOD遺伝子のpromoter部位にあるSNPがCKD患者で最も集積していることが分かった(Nat Genet 2010 42 376)。
では、UMOD遺伝子のpromotorに異常があるとどうしてCKDになりやすいのだろうか?それを動物実験と腎がん患者さんの腎摘標本で調べた論文が最近でた(Nat Med 2013 19 1655)。UMODのtransgenic miceは尿細管円柱が多い(そりゃそうだ)のみならず、salt-sensitive hypertensionになった。
活性化NKCC2の表在が増えたことと高血圧がフロセミドで相殺されたことから、高血圧の原因はNKCC2によるNa(Clも)再吸収を介したものと考えられた。NKCC2を活性化するSPAK(kidney-specific SPAK)もOSR1も発現が増えていた。
この論文を読むと、腎前性腎不全でガラス円柱が多いのは、単に尿が濃縮されているだけでなく、腎(ループ上行脚)でuromodulinの発現が増えて体液保持を助けているのではないか?という考えが浮かぶ。実際UMODのプロモーター領域にはglucocorticoid response elementという部位があるから、UMOD遺伝子のストレスホルモンによる制御があるのかもしれない。
T-Hタンパクが尿路感染症予防の役割を果たしているとかいうまことしやかな噂は、ここから来たのだろうか?根拠はないが、少なくともこのタンパクの異常でおこるMCKD2(medullary cystic kidney disease 2)やHNJF1(familial juvenile hyperuricemic nephropathy 1)で尿路感染症が多いという話は聴かない。
このタンパクは今ではuromodulinと呼ばれ、UMOD遺伝子がコードしている。その発現はループ上行脚に限定的で(J Clin Path 1969 22 334)、膜タンパクと水溶性(尿中に放出される)のが存在する。Uromodulinが何をしているかずっと謎だったが、GWASをしてUMOD遺伝子のpromoter部位にあるSNPがCKD患者で最も集積していることが分かった(Nat Genet 2010 42 376)。
では、UMOD遺伝子のpromotorに異常があるとどうしてCKDになりやすいのだろうか?それを動物実験と腎がん患者さんの腎摘標本で調べた論文が最近でた(Nat Med 2013 19 1655)。UMODのtransgenic miceは尿細管円柱が多い(そりゃそうだ)のみならず、salt-sensitive hypertensionになった。
活性化NKCC2の表在が増えたことと高血圧がフロセミドで相殺されたことから、高血圧の原因はNKCC2によるNa(Clも)再吸収を介したものと考えられた。NKCC2を活性化するSPAK(kidney-specific SPAK)もOSR1も発現が増えていた。
この論文を読むと、腎前性腎不全でガラス円柱が多いのは、単に尿が濃縮されているだけでなく、腎(ループ上行脚)でuromodulinの発現が増えて体液保持を助けているのではないか?という考えが浮かぶ。実際UMODのプロモーター領域にはglucocorticoid response elementという部位があるから、UMOD遺伝子のストレスホルモンによる制御があるのかもしれない。
2014/01/08
こういうレベルの学び
今月の目標は、教育をチーム内で充実させることだ。それでさっそく「私達のチームは患者さんによいケアを提供することだけでなく、私達一人ひとりが成長することをも使命にしています」という意思表示をして、平日昼の3つを研修医向けミニレクチャ、1つをフェロー成長の時間に割り当てることにした。
研修医向けミニレクチャは、ローテーターがせっかく一ヶ月まわっても「酸塩基平衡が読めない」とか抜けてしまってはいけないので、重要なテーマをリストして一つ一つはじめた。二人のフェローと私でやれば、週1回で済む(フェローの分は、私が助けてあげる)。最初は簡素でも、二ヶ月・三ヶ月とやれば質も高められるはずだ。
フェロー成長の時間は、なんと言っても論文を読むことだ。専門内科医は(少なくとも腎臓は)論文を読むことなしには育てられないし、成長もできない。週1回論文を読むことを習慣にしている(私が以前いた尊敬すべき)病院に倣って、それを始めることにした。うちだってJASN、CJASN、KI、AJKDが毎月送られてくるのだから、読むネタには困らない。
そこでさっそく本棚にあったCJASNを手にとってパラパラめくるとAttending Roundsというコーナーが。見るとあのMayo ClinicのFervenza先生が自験例をもとにレクチャしている(CJASN 2013 8 1979)。これはよいと読み進めると、例の「nephrotic-range proteinuriaとnephrotic syndromeは違う病態」というコメント(以前も聞いた)に始まり、primaryとsecondary FSGSの違い、FSGSの分類について解説してくれた(参照していたNEJM 2011 365 2398もよいレビューだ)。
さらにnephrotic-range proteinuria(アルブミン3.8g/dl)とhypercalciuriaを発症した若い男性の腎生検を紹介し、糸球体がglobal glomerularsclerosisを呈しつつ電顕で足突起が保たれていることからMCD、FSGS以外の病態を考えていた。
見直すと蛋白尿の多くはアルブミンではなかったこと、H+Eで紫・von Kossa染色で黒・偏光レンズで極性のないcalcium phosphate crystalを含有していることなどから近位尿細管障害を疑い、しかしFanconi症候群がないことからDent病を疑い、遺伝子診断で診断を確定した。
Dent病については以前にも書いたので病態は省略するが、ここで興味深いのは尿細管の病気だと思われていたDent病も(nephrocalcinosis以外の機序で)糸球体の病気を起こすことだ。詳細は不明だが、足細胞にもCLC5はあるそうだ(PLoS ONE 2012 7 e45605)から、CLC5が異常だとTGF-βなどが作られ糸球体がしぼむのかもしれない(doi:10.5414/CN107429)。
そのあといろんな先生からFervenza先生が質問を受け答えていたが、最後の質問は「あなたはglomerular hyperfiltrationはadaptive FSGSの原因になる(obesityなど)というが、腎提供したliving donorはどうか?」というものだった。まあ「ドナーの長期成績は(日本では知らないが少なくとも米国では)一般の人たちよりずっと良い」という答えが来るとは思ったが、そのあとでドナー以外のデータ(NEJM 1991 325 1058)を紹介しており興味深かった。
これは片腎(片方が低形成あるいは腎摘後)の腎癌患者さんに部分腎摘をした後の長期データだ。血圧や蛋白尿だけでなく、なんと4例にはopen biopsyまでしている。これによれば、蛋白尿の程度は残腎量に逆相関し、0.9-6.7g/dl出ていた群は残腎が38±16%だった。腎臓が2個から1個になったくらいではreserveがあるが、1個から0.3個になるとさすがに影響がでるということか。
考えてみれば、フェローシップをしていた2年間はこういうレベルの学びが毎週(しかも2回以上)あった。だから(研修医教育もよいが)専門医教育にこそ情熱を感じていまの仕事を選んだ私は、いまの環境でいまのフェロー達にこういう学びを提供せねばならない。そしてそれは、他人に何といわれようと動かない決意であるべきだと思っている。
研修医向けミニレクチャは、ローテーターがせっかく一ヶ月まわっても「酸塩基平衡が読めない」とか抜けてしまってはいけないので、重要なテーマをリストして一つ一つはじめた。二人のフェローと私でやれば、週1回で済む(フェローの分は、私が助けてあげる)。最初は簡素でも、二ヶ月・三ヶ月とやれば質も高められるはずだ。
フェロー成長の時間は、なんと言っても論文を読むことだ。専門内科医は(少なくとも腎臓は)論文を読むことなしには育てられないし、成長もできない。週1回論文を読むことを習慣にしている(私が以前いた尊敬すべき)病院に倣って、それを始めることにした。うちだってJASN、CJASN、KI、AJKDが毎月送られてくるのだから、読むネタには困らない。
そこでさっそく本棚にあったCJASNを手にとってパラパラめくるとAttending Roundsというコーナーが。見るとあのMayo ClinicのFervenza先生が自験例をもとにレクチャしている(CJASN 2013 8 1979)。これはよいと読み進めると、例の「nephrotic-range proteinuriaとnephrotic syndromeは違う病態」というコメント(以前も聞いた)に始まり、primaryとsecondary FSGSの違い、FSGSの分類について解説してくれた(参照していたNEJM 2011 365 2398もよいレビューだ)。
さらにnephrotic-range proteinuria(アルブミン3.8g/dl)とhypercalciuriaを発症した若い男性の腎生検を紹介し、糸球体がglobal glomerularsclerosisを呈しつつ電顕で足突起が保たれていることからMCD、FSGS以外の病態を考えていた。
見直すと蛋白尿の多くはアルブミンではなかったこと、H+Eで紫・von Kossa染色で黒・偏光レンズで極性のないcalcium phosphate crystalを含有していることなどから近位尿細管障害を疑い、しかしFanconi症候群がないことからDent病を疑い、遺伝子診断で診断を確定した。
Dent病については以前にも書いたので病態は省略するが、ここで興味深いのは尿細管の病気だと思われていたDent病も(nephrocalcinosis以外の機序で)糸球体の病気を起こすことだ。詳細は不明だが、足細胞にもCLC5はあるそうだ(PLoS ONE 2012 7 e45605)から、CLC5が異常だとTGF-βなどが作られ糸球体がしぼむのかもしれない(doi:10.5414/CN107429)。
そのあといろんな先生からFervenza先生が質問を受け答えていたが、最後の質問は「あなたはglomerular hyperfiltrationはadaptive FSGSの原因になる(obesityなど)というが、腎提供したliving donorはどうか?」というものだった。まあ「ドナーの長期成績は(日本では知らないが少なくとも米国では)一般の人たちよりずっと良い」という答えが来るとは思ったが、そのあとでドナー以外のデータ(NEJM 1991 325 1058)を紹介しており興味深かった。
これは片腎(片方が低形成あるいは腎摘後)の腎癌患者さんに部分腎摘をした後の長期データだ。血圧や蛋白尿だけでなく、なんと4例にはopen biopsyまでしている。これによれば、蛋白尿の程度は残腎量に逆相関し、0.9-6.7g/dl出ていた群は残腎が38±16%だった。腎臓が2個から1個になったくらいではreserveがあるが、1個から0.3個になるとさすがに影響がでるということか。
考えてみれば、フェローシップをしていた2年間はこういうレベルの学びが毎週(しかも2回以上)あった。だから(研修医教育もよいが)専門医教育にこそ情熱を感じていまの仕事を選んだ私は、いまの環境でいまのフェロー達にこういう学びを提供せねばならない。そしてそれは、他人に何といわれようと動かない決意であるべきだと思っている。
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