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2017/11/18

少しアフェレシスと透析について PAについて③

今回が一応アフェレシス祭り(こう呼ばれたので)の最後になる。


今回の話題はLDL吸着療法である。

まず、LDL吸着療法はPlasma adsorberがリポソーバー(LA-15、40)の血漿吸着療法である。
吸着の対象となるのはLDLコレステロールである。


保険適応の疾患に関しては以下の3つである。
①家族性高コレステロール血症
②閉塞性動脈硬化症
③巣状糸球体硬化症

である。

①は想像がしやすいと思うが、スタチンなどの薬剤投与によっても高脂血症(血清総コレステロール250mg/dl以下にならない)が持続する場合は適応になる。
これは週1回までの適応になる。

疾患について簡単に概説をする。
家族性高コレステロール血症:
LDL受容体異常による高コレステロール血症をきたす常染色体優性遺伝の疾患である。
遺伝型はホモ型とヘテロ型がある。
 -ホモ型は新生児から著明な高コレステロール血症をきたし全身の動脈硬化をきたす。
 -ヘテロ型はホモ型より予後良好だが、70%が65歳までに死亡する。


治療に関してはホモ型とヘテロ型で異なる。2017年に動脈硬化ガイドラインがでているので、参考にして頂きたい。
・ホモ型であればスタチンを投与し治療目標に到達しない場合には定期的にLDLアフェレーシスなどを行う。(下図)




・ヘテロ型であれば、スタチン投与を行いPCSK9投与などを行い効果不十分であればLDLアフェレーシスの適応となる。(下図)



②閉塞性動脈硬化症
これに関しては、PADに関してまとめた以前の記事があるので参考にしていただきたい。
保険請求できる回数は一連につき3ヶ月で10回までとなる。

適応としては下記を全て満たすものである。
・Fontaine分類Ⅱ度以上の症状を呈するもの
・薬剤療法により、血中総コレステロール220㎎/dl,あるいはLDL-C値140mg/dl以下まで低下しない高コレステロール血症
・膝窩動脈以下の閉塞、または広範な閉塞部位を有するなど外科的治療が困難で、かつ従来の薬物療法では十分な効果を得られない場合。

LDL-Cを低下させることが一つのメカニズムであるが、そのほかにも酸化LDLの低下作用と血管内皮細胞改善に優れていたとの報告もある。
過去にはスタチン+LDLアフェレーシスとスタチンのみを比較したもので、併用した場合のが良かったという報告も出ている(Ann Intern Med 1996)。


③巣状糸球体硬化症
日本からの報告が多い。
機序に関しては明確にはわかっていないが、酸化LDLの低下や関連する炎症性サイトカインの除去を行うことができ、ネフローゼに伴う過凝固の状態の改善に寄与するのではないかと言われている。

条件としては
ステロイド抵抗性を示すネフローゼ症候群で、総コレステロールが250㎎/dl以下に低下しない場合が挙げられる。
保険請求できる回数は一連につき3ヶ月で12回までとなる。


LDLアフェレーシスの使用方法を示す。


何故、カラムが二つあるかに関しては、一つのカラムで吸着を行なっている際にもう一方のカラムは洗浄・賦活化を行なっているためである。

ちなみに用いるカラムのリポソーバーLAの
リポソーバー40:400mL容量カラム
リポソーバー15:150mL容量カラム
である。

LDL吸着療法の治療時間としては、
治療時間1.5~2.5時間
血液流量100~150ml/min
血漿流量30~45ml/min
目標血漿処理量3000~5000ml
である。

最後は簡単にであるが、LDLアフェレーシスについてまとめた。
アフェレーシスは奥が深いし、正直使いこなせていない。。ここを見て少しでもアフェレーシスの面白さ・奥深さがわかっていただければ嬉しい。





2017/09/12

少しアフェレシスと透析について HAの続き

前回、下記の②について話を進めさせていただいた。
①活性炭(DHP-1、ヘモソーバ、ヘモカラム)
②ポリミキシンB固定化吸着剤(トレミキシン)
③ヘキサデシル基固定化セルロースビーズ(リクセル)


今回は、③について触れたいと思う。

リクセルに関しては透析アミロイドーシスが血中のβ2MG(ミクログロブリン)と分かった後に、1996年に本邦での臨床治療に導入された比較的新しい治療である。

透析アミロイドーシスについてはアミロイドが沈着する部位によって異なるが、
・手根管症候群
・破壊性脊椎関節症
・肩関節症
などを生じる。

特に手根管症候群は多く、長期透析患者で見ることが多い。
横手根靭帯や腱鞘滑膜へのアミロイド沈着によって生じ、それらが肥厚し正中神経を圧迫し、手指の疼痛・しびれ・母指球筋麻痺・萎縮を呈する。手指の疼痛は透析中や夜間に増強する傾向が特徴である。

破壊性脊椎関節症は、脊椎関節にアミロイドが沈着することによって脊椎管腔の狭小化・椎体の骨浸食などをC4-6の下部頚椎に生じるものである。これに一致した神経根症状や脊髄圧迫症状が出現する。
Journal of clinical neuroscience 2016 volume 30 :155-157
この透析アミロイドーシスの予防のために様々な試みがされております。
現段階では生体適合性の良いハイパフォーマンス膜の使用やoff-line HDFやon-line HDFは通常膜によるHDに比べて予防効果があると報告されている。

今回話題に出すリクセルも、β2MGを除去する吸着療法である。リクセルに関しては、この後に適応について述べるように予防のものではなく、透析アミロイドーシス発症後にしようできるものである。

適応:下記の条件を満たせば1年間の使用が可能となる。その1年後に2.3があれば更に一年使用できる。
関節痛を伴う透析アミロイド症である。1.手術又は生検により、β2-ミクログロブリンによるアミロイド沈着が確認されている。
2.透析歴が10年以上であり、以前に手根管開放術を受けている。
3.画像診断により骨嚢胞像が認められる。

回路:下図で示すようにリクセルは単独ではなく、血液透析と同時に使用する。これは、他の吸着療法とは異なるものである。ダイアライザーの前に接続する。

カネカhomepageより引用

リクセルの種類:下図のように3種類に分かれる。
基本的には大きなサイズのものを使用しますが、心臓が悪い症例や血圧低下症例などはプライミングボリュームなどを考えて小さめのものを使用することも多い。
カネカhomepageより

リクセルは、2015年にアメリカのFDAに承認されました。今後、研究の幅も出てくる可能性もあります。

ただ、値段はかなり高額になるので、現時点では適応の症例に限っての使用という形になっています。
ただ、今後値段の問題が解決した場合に予防に使用できれば患者さんのQOLも上がるのかなと淡い期待は寄せてはいる。




2017/08/22

少しアフェレシスと透析について。さらにさらに続き。

では、続いては少しメジャーなコンサルトではなくなるかもしれないが吸着(adsorption)の話に移行したいと思う。

吸着療法はコンサルトされる割合はどうであろうか?
個人的な印象ではかなり少ないかもしれない。一つには吸着療法を使う場面がわからず、コンサルトがかからない。コンサルトされる側もよくわからないというのは一つあるのではないかと考える。

今回、少し吸着療法になじみをもっていただいて、コンサルトされたときに胸を張ってできるようになれればと思う。

吸着に関しては取り除く場所によって二つに分かれる。
①血液吸着療法(HA:Hemoadsorption)
②血漿吸着療法(PA:Plasma adsorption)
に分かれる。

今回、まずは①のHAに関して述べたい。
まず、HAの回路に関しては下記のような回路になっている。
http://www.eonet.ne.jp/~hidarite/ce/touseki07.htmlより引用
回路自体はこのようになっているが、いつもの血液透析とは回路に違和感はないであろうか?
基本的にHAに関しては補充液や透析液などは必要がない。そのため、回路は少なくなっている。


血液吸着というからには、すべての血液(血球+血漿)の吸着をしているかというとそうでは無く、血漿の一部を吸着している(もちろん血漿吸着とは異なる)。


ここで、重要なのはやはり吸着剤である。この吸着剤によって何が吸着されるかが異なる。

①活性炭(DHP-1、ヘモソーバ、ヘモカラム)
②ポリミキシンB固定化吸着剤(トレミキシン)
③ヘキサデシル基固定化セルロースビーズ(リクセル)


この膜の名前を聞くとあーっと言われる方も多いと思う。意外と身近には存在する。


①活性炭吸着
活性炭表面の微細孔に被吸着物質が入り込むことによってなされ、分子量5,000程度の物質の可逆的な吸着で物理的な吸着法である。

ちなみにイオン交換樹脂などをもちいて吸着を行う方法を化学吸着法という。


活性炭吸着器は
・ヘモソーバTM CHS-350(旭化成メディカル)

旭化成メディカルより引用

・ メディソーバDHP(川澄化学工業)
川澄化学工業より引用
・血流量:100~200mL/minでの管理

・重要なのは吸着カラム内で凝固を起こすのを認知する事が重要
⇒吸着のカラム入口圧と出口圧の差圧をモニタリングする。(入口圧が40kPa(300mmHg)を超える場合にはカラム内凝固を疑う。)

・抗凝固薬:ヘパリンを使用。ナファモスタットメシル酸塩は吸着されるため、使用できない。

・治療時間:3~4時間を目安とする。

利点:回路が単純である点。

欠点:分子量が100未満のものや10000より大きいものは吸着されにくい。また、ブドウ糖も若干吸収するため血糖値に注意する。

・保険適応:薬物中毒、肝性昏睡

・薬物中毒で考慮するもの:
これについては以前に書いた。
バルビタールやフェニトインやアマニチンやパラコートの中毒は考慮する。

今回HAについて書こうと思ったが、活性炭で長くなってしまった。
また、次回続きは記載しようと思う。






2017/08/19

少しアフェレシスと透析について。さらに続き。

あと、数回アフェレーシスについてお話をしたいなと思う。


今回は前回の延長線上になる話である。
DFPP(Double filtration plasmapheresis : 二重膜濾過血漿交換法)について話をする。


DFPPについてはどういうイメージを持っているだろうか?おそらく
 -PE(血漿交換)で事が足りるんだからいらないんじゃないの?
 -どんな場面で使ったらいいのかわからないよ。


などの感想が多いんじゃないかなと感じる。


今回の話を読んで少しでも上記の声があー、こんな時に使えばと分かってくれたらうれしい。


まず、DFPPとPEの違いを示す。DFPPの回路は下記のようになる。
ASAHI KASEI homepage より


先にはなしたPEに比べると一つ回路が増えていることが分かる。そして、その回路には血漿成分分画器が設置されている。


★血漿成分分画器
 -カスケードフロー(旭化成)
 -エバフラックス(川澄化学工業)


膜孔径:0.01μm、0.02μm、0.03μm


この、一つ回路がある事でのメリットとしては
①置換するFFPなどの量を少なくできる。
 -下図を見て頂くとイメージしやすいが、血漿を除去して、それを血漿成分分画器で高分子量の物がのぞかれるが、それ以外は血液に変換される。




ASAHI KASEI homepage より


②アルブミンの喪失を少なく、免疫グロブリンの除去が可能
 -これも下記の図を見て頂くと分かるが選択的に除いているためである。
ASAHI KASEI homepage より


では、DFPPを使う場面はどんな場面か?
①移植領域(腎移植や肝移植など):ABO不適合移植の際に抗体除去で拒絶を防ぐために行われる。
②神経疾患;重症筋無力症、多発性硬化症、ギランバレー症候群などの抗体関連性の疾患を取り除くのに使用される。
③膠原病関連:SLE、悪性関節リウマチなど
④循環器疾患:閉塞性動脈硬化症、家族性高コレステロール血症
⑤血液疾患:マクログロブリン血症、多発性骨髄腫
⑥皮膚疾患:天疱瘡、類天疱瘡、TENなど


逆にPEを行わなくてはならないものとしては、HUS、TTP、ANCA関連血管炎などである。


★処方について
 -処理量:原則、1.0-1.5×血漿量(plasma volume)とする
 
 -血漿量の計算:血漿量(L)=0.07×体重(kg)×(1-Ht) ※体重は理想体重

・血液流量:50~150mL/min
・血漿分離ポンプ流量:血液流量の30%以下
・ドレイン量(カスケードフローから排液される量):分離ポンプ流量(血漿流量)の0-20%程度


★抗凝固:原則ヘパリンを使用




合併症としては、PEより少ないとは言われるが、FFPを使用するため低カルシウム血症などは重要。


本日はDFPPについて触れた。
回路が複雑になり分かりにくい部分もあるが、メリットを考えて使用するのが重要である。




今回のがpart3なので。

2017/08/14

少しアフェレシスと透析について。続き。

前回の投稿から期間が空いてしまった。大変申し訳ない。


では、今回は血漿に対してのアフェレーシスを説明する。
血漿に対してのアフェレーシスを依頼される場合が非常に多いと思われる。


では、血漿成分に対するアフェレーシスにはどんなものがあるだろう?
その前に血漿成分にどんなものが含まれるかを知ることが重要である。


つまり敵を知らない限りは治療ができない!


血漿成分としては下記の図が分かりやすい!
水が90%以上。
タンパクが7%程度である。タンパクのうちアルブミンが60%と一番多く、グロブリンが35%と次に多い。
その他の成分の中に電解質やBUNやクレアチニンなどが含まれている。





血漿交換で除去できるものとしては下記のようになっている。
幅広く除去することが出来る。




では、敵が知れた時点で、どれをターゲットにするかである。


★ターゲット
・その他:HDやHFなどはここをターゲットにしている。


ここから血漿交換や血漿吸着の話にうつるが、いつも何回やろう?どのくらいの頻度でやるべきなのと思ってしまう。これは、2016年のアメリカのガイドラインが出ている!
これは、非常に参考になるのでダウンロードをすることをおすすめする!


では、まずは血漿交換について話をする。まずは、単純血漿交換について話す。


◆血漿交換のターゲットは上の表にも示したが、全部ごっそりと交換する。なので、BUN
やCrも下がる。


血漿交換はまずは、下記のイメージが一番認識しやすい。Plasmafloを用いて血漿成分と血球成分を分離し行う。








★適応
・保険適用:日本の保険適用(下表)を参照
医学の歩み234巻13号参照


・処方について
 -処理量:原則、1.5×血漿量(plasma volume)とする
 
 -血漿量の計算:血漿量(L)=0.07×体重(kg)×(1-Ht) ※体重は理想体重
 
 -処理速度:最大処理速度=Qb (ml/min)×0.3とする
※Qb×0.3以上では、膜内が過粘稠となり膜間圧力差(TMP)が上昇。


 -血漿分離器:原則、プラズマフロー08W®(旭化成メディカル)を使用。



種類

膜型血漿分離器

品名

OP-05W

OP-08W

膜面積

0.5 m2

0.8 m2

最高使用TMP

60 mmHg

プライミングボリューム(血液側)

55 ml

80 ml

 ★置換液
ASFA
のガイドラインを参照する
FFP:
輸血室に「○○ml相当のFFPをオーダーする
アルブミン:25%アルブミン製剤をソリューゲンFで希釈しおよそ5%アルブミン溶液とする。



置換液

利点

欠点

アルブミン

感染危険性が少ない

アレルギー反応まれ

凝固因子を含まない

免疫グロブリン含まない

FFP

凝固因子を含有

免疫グロブリンを含有

“有用な”因子を含有

補体を含有

感染の可能性

アレルギー反応

クエン酸負荷
(低Ca血症のリスク)

◆FFPを使用する場合:肝不全などで凝固因子の補充が必要な場合、TTPなど血小板活性化抑制因子補充が必要な場合、抗GBM関連血管炎などで肺胞出血など臓器の持続性出血などの場合


★抗凝固薬:原則、ヘパリンを使用


★合併症対策:
置換液に対する過敏症(FFP使用時)
a)
予防
・治療1時間前にポララミン 4mg内服(内服困難な場合は、5mg静脈内投与)
・治療1時間前にプレドニン 50mg 内服(内服困難な場合は、50mg静脈内投与)


b) 重症例
・治療1時間前にポララミン 4mg内服(内服困難な場合は、5mg静脈内投与)
・治療13, 7, 1時間前にプレドニン 50mg 内服(内服困難な場合は、50mg静脈内投与)

-低カルシウム血症(FFP使用時)
1
時間ごとに血液ガスでイオン化カルシウムを評価
イオン化カルシウム<2.0 mEq/Lで、8.5%カルチコール 10 ml静脈内投与
 
-感染症(アルブミン使用時)
感染症のリスクが高い患者では、血清IgG<500 mg/dl*のときにIVIG 100-400 mg/kg*の単回投与を検討。


まずは、長くなってしまったが血漿交換についてふれてみた。
血漿交換はよく遭遇するものであり、しっかりと知っていなくてはならないものである。






2017/02/19

下肢虚血について考える パート2(PAD with CKD or dailysis)

パート2を書く前に少し古い論文にはあるがCJASN2007に腎臓内科にとってのPADというまさにの論文があったので、提示しておく。これは最低限は必読なのかなと感じた。

PADの末期腎不全患者での割合は高い。米国の報告では有症状のPADは慢性腎不全stage5の患者で15%に及ぶとされ、非症候性のものを含めるとさらに多くなると言われている。
糖尿病の有無に関わらず透析患者はPADの独立因子となる。

KDIGOのガイドラインでもPADに関しては透析を開始する前には評価をするべきであるとしている。その際に身体診察(下肢動脈の拍動や皮膚の状態の把握)を行う、そして追加で画像検査やABIなどの整理検査を行う。

皮膚の状態に関しては鑑別は神経原性の足病変との鑑別であり、神経原性であれば皮膚は胼胝や亀裂が生じやすく、PADであればツルツルでテカテカしたなどの違いがある。

また、理学的検査に関しては、Ratschowの下肢挙上ストレス試験(臥位で両歌詞を屈曲させ測定が白くなるまで足関節を20−40回転させ、その後両下肢を座位にして下垂させ2分後の足背の色の変化を見る検査)は有用であると言われる。

治療に関しては一般的治療と薬物治療と侵襲的治療(外科的治療や血管内治療)に分かれる。
一般的治療は爪や皮膚ケアは重要である(当院でも透析の看護師さんがここをチェックしてくれている。)また、禁煙・運動療法も重要である。運動療法は非透析患者では1週間3回で1回30~45分、12週間が有効であったとされる。
腎臓リハビリテーショは重要な分野である。

また、創傷の適切なデブリドマンやドレッシングも傷からの感染を防ぐという意味でも重要である。

薬物療法は抗血小板薬が中心になる。シロスタゾールの経口投与(50~100mg 1日2回)は非透析患者で症状および歩行距離の改善や間歇跛行に有効であった音は報告されているが、透析患者には注意を用いて使用することが必要である。

そのほかに、透析患者ではベラプラスト(PGI2誘導体)、チクロピジンなどが有効であるという報告もされている。

そのほかに、LDLアフェレーシス治療や末梢血幹細胞移植治療などが提示はされている。

しかし、何にせよ早期発見を行い患者さんの下肢を守ることが本当に重要である。

透析患者で下肢切断をした症例では死亡率が上昇し、ADLの低下が報告されている。

足は本当に重要である。。


2016/12/12

血漿交換はどんな疾患に適応?迷った際のワンポイント!!

久々の投稿になります。

今回は血漿交換についての話題に触れたいと思う。
血漿交換を考えるときに、まず何が適応になってどのくらいの回数が保健上適応になっているかは常に考える必要がある。その際に下記のような形でどの疾患が適応あるんだろ?と常に考えると思う。



しかし、この表が頭に入って入れば話は別であるが、この疾患はどうだろ?と考えた際にどのように調べるだろうか?
ここは日本!なので、日本語でとことん探すのも一つであるが、世界標準はどうかを知るのは重要である。

アフェレーシスのガイドラインがあり、2016年度に新しいものが出ている(J Clin apher 2016 Jun;31(3):149-62)。

これの良い点は一つ一つの疾患についてまとめられており、どれくらいの推奨度があるかや置換液をアルブミンにした方が良いのか?FFPにした方が良いのかがわかるところなのかと感じる。

例えば、多発性骨髄腫に伴うcast nephropathyで高度な腎機能障害を呈する人が来たとする。
その際に上の表を見ただけだと多発性骨髄腫という疾患はあるが、多発性骨髄腫だけでできるのか?なんなのかは不明である。

ガイドラインで引くとcast nephropathyは推奨度はGrade2Bとなっている。この疾患に対してやる意味は軽鎖の糸球体への量を低下させることで腎予後、生存率の改善につながる。腹膜透析や高性能膜の血液透析よりも血漿交換の方が軽鎖の除去に関しては効果がある。

では、どのような人に優先的に使用を考えるかというと尿量がある人に関しては、まずは補液治療(2.5-4L/日)であり、尿量が出ていないCre ≧ 6mg/dLの症例などは治療的血漿交換を考慮した方が良いとガイドラインには記載してある。
とても、ひとつひとつの症例に対して細かくどのRCTからエビデンスが抜き出されているかなど書かれており、とても勉強になっている。
ぜひ、迷うことがある際には参考にしていただきたい。



2016/07/28

Oh My Google

 Google検索で何のキーワードを入れるかが実力を左右するというのもすごい時代だなと思う。私は経験的に英語で入力できたほうが大きな網を張れるなと感じるが、その程度で止まっていて、たとえばコンピュータ言語とかも習ったほうがいいのかなとおもっても実際はやっていない。こないだ何かの本でGoogle検索にワイルドカードというのがあると読んで、かっこいい響きだなと思った。

 ワイルドカードとは「*」のことで、不明な語句があってもそれをワイルドカードで表示することで前後の語句との類推で検索してくれる。たとえば「blessed are the * inherit *(なんとかな者は幸いである、なんとかを継ぐ)」と入れれば「Blessed are the meek, for they will inherit the earth(柔和な者は幸いである、彼は地を継ぐからである;Mathew 5 5)」と出る。まあ言葉はかっこいいが、Googleが優秀すぎてワイルドカードを使わなくてもだいたい当ててくれるが。

 と、ここまで調べてもまだGoogle検索演算子について系統的に勉強しようという気にならなかったのは、わたしの怠惰というかGoogleが頭が良すぎるのである…。しかし最近「血漿交換で溶血しますか?」と研修医に聞かれて「plasma exchange complication hemolysis」と入れても、TTP-HUSのことしか出てこない。それでPubmedならBUTで除外検索をかけるなあと思いだしたが、Googleでは使えない。仕方なく「Google 除外検索」で検索演算子一覧をみたら、除外検索は「"A" -"B"」とダッシュを使うらしい。

 しかしこれでTTPを除外したらABO不適合移植の話しかでてこない。でABOも除外検索したら検索結果がなくなってしまった。Googleに勝ったような見捨てられたような複雜な気分だ。私は血漿交換膜のせいでもなく自己免疫疾患に続発したAIHAでもなく、置換でつかうFFPのなかに運悪く変な抗体があったのだろう(から肺胞出血のない透析依存ANCA関連急性進行性糸球体腎炎なのでアルブミン置換にすればいい)と思っているが。それで「FFP transfusion hemolysis」検索をかけたらいっぱいでてきた(Transfusion 2012 52 S1 65S )。Googleと仲直りだ。

 [2016年7月追加]日本で用いられる血漿分離器(ポリエチレン中空糸)の添付文書には溶血の記載があって、TMP 60mmHg以下にすること、起きたら中止することとあった。機序、頻度、起こるタイミング、置換液による違い、中止後の対応、一回発生したあとの代替分離器の有無など、詳細は不明だが(会社の電話番号はあるので問い合わせることは可能だ)。やはり日本語でも検索しないといけない。



2015/05/25

Anti-AQP4 IgG

 NMO(neuromyelitis optica)で陽性の自己抗体がAQP4をターゲットにしているということが分かるにつれ、この抗体が陽性な疾患群をNMO spectrum disorderと呼ぶようになったそうだ(たとえばAsian optic spinal multiple sclerosisなど)。NMOは自己免疫疾患に続発することが多く、典型的には視神経と脊髄の脱髄(ただし広汎に中枢神経系の脱髄を起こすこともある)と浮腫・壊死、好中球・好酸球優位の浸潤、病変部細胞表面のAQP4消失などを特徴とする(Nat Clin Pract Neuro 2008 4 202)。

 抗AQP4-IgGは、脳血管バリアを越えてAQP4を攻撃しているらしく、抗体価と病勢が相関することがわかっているが、なぜ中枢神経系の、それも視神経と脊髄にあるAQP4を好んで標的にするのかは分かっていない(腎臓においてもAQP4は集合管の間質側に表出している;Physiol Rev 2002 82 205)。

 いずれにせよ抗AQP4-IgGないしそれを産生するB細胞を対象にした治療が行われ(Nat Rev Neuro 2010 6 383)、ステロイドパルス±血漿交換(重症例、不応例に;比較スタディがArch Ophthalmol 2012 130 858;血漿交換追加群で視力がより回復した←以前書いた血漿交換適応疾患リストには載っていないが)。しかし再発する経過を取ることが多く、予防にはAZA+RTX+MMFが慣習的に行われるそうだが、RTX単剤も試されているようだ。



2014/01/24

血漿交換 4

 ここまで自分が経験した血漿交換例を手がかりに勉強してきた。ところで、ASFAガイドラインは140ページもある。だから必要なときに必要な部分を読めばよいが、最後にASFAがGrade Iで適応を推奨している疾患一覧を並べる。

AIDP
age-related macular degeneration, dry (rheopheresis)
ANCA-associated RPGN, dialysis dependent
ANCA-associated RPGN, with diffuse alveolar hemorrhage
anti-GBM disease, with alveolar hemorrhage
anti-GBM disease, dialysis independent
babesiosis, severe
CIDP
cryoglobulinemia, severe
cutaneous T-cell lymphoma, erythrodermic (ECP)
familial hypercholesterolemia, homozygotes (LDL-apheresis)
FSGS, recurrent in transplanted kidney
atypical HUS, factor H antibody
hereditary hemachromatosis (erythrocytapheresis)
hyperleukocytosis (leukocytapheresis)
hyperviscosity in monoclonal gammopathies, symptomatic
hyperviscosity in monocloncal gammopathies, prophylaxis for rituximab
ABOi liver transplantation, desensitization
myasthenia gravis, moderate-to-severe
myasthenia gravis, pre-thymectomy
paraproteinemic demyelinating polyneuropathies
PANDAS (sydenham's chorea)
polycythemia vera (erythrocytapheresis)
ABO compatible renal transplant, AMR
ABO compatible renal transplant, desensitization
sickle cell disease, acute stroke (RBC exchange)
TMA, ticlopidine-induced
Wilson's disease, fulminant

 RheopheresisはDFPP(double-filtration plasmapheresis)のことで、血漿のうち高分子量の成分を選択的に除去する治療だ。Age-related macular degenerationでは、fibrinogen、LDL-C、fibronectin、vWFなどを除去して血液の粘稠度を下げ、網膜の血流を改善することが期待される。

 ECPはextracorporeal photopheresisの略で、血液のある成分を体外に取ってきて、光で焼く治療だ。たとえばcutaneous T-cell lymphomaでは、CD4+のT細胞を選択的に取ってきて、8-methoxypsoralenで処理してから紫外線Aで焼き体内に戻すそうだ。


2014/01/22

血漿交換 3 (aka TTP)

 さらにASFAガイドラインのTTPのところを読み、まずはADAMTS13がA disintegrin and metalloproteinase with a thrombospondin type 1 motif, member 13の略であることを知った(十年一昔というが、私が学生のときはこれを単にvWFのcleaving enzymeと習った)。そして、現在では診断はpentad(発熱、溶血性貧血、血小板減少、腎機能障害、意識障害)が揃わなくても、説明のつかない急性発症のMAHA(microangiopathic hemolytic anemia)と血小板減少で、他のTMA(DIC、悪性高血圧、HUS、幹細胞移植後など)が考えにくければ十分と学んだ。つまり、TTPはいまだ臨床診断ということだ(Br J Haematol 2012 158 323も参照)。

 後天性TTPは多くの場合自己免疫で、抗ADAMTS13抗体(IgG4サブクラスが最も多い)があれば再発リスクというデータもあるようだが、いまだこの抗体を測定することは一般的ではない。膠原病、感染症、悪性腫瘍、薬剤、妊娠、骨髄移植などさまざまな病態が誘因になる。先天性TTPはADAMTS13欠損をもたらさうさまざまな遺伝子変異と関連している。

 ASFAガイドラインは、TTPはほぼ致死的な病気だったのが、血漿交換によって致死率が10%以下にさがったと、治療の勝利を誇っている。もっともこれは後天性の場合(抗ADAMTS13抗体を除去する)で、先天性の場合は単にADAMTS13を補う意味で血漿、cryopricipitate、濃縮ADAMTS13などが投与されることもある。

 どれだけの量で、いつまで血漿交換を続けるべきか?ASFAガイドラインはTPVの1-1.5倍量で毎日、血小板が15万/mm3を越え、LDHが基準値内で2-3日安定するまで行われることが多いと書いてある。UKガイドラインはTPVの1.5倍量を3日間、そのあとはTPVの1倍量と書いている。教科書には7日間とあった(が、日本は保険の都合で週3日なのだとか)。

 抗ADAMTS13抗体産生を抑えるためにもっともよく用いられる補助治療はステロイドで、ASFAガイドラインは1mg/kg/dayと言う(UKガイドラインは1g/day methylprednisolone三日間を併記、また別の教科書には200mgから始めろと書いてある)が、有効性はどのみち確立していない。

 再発例には血漿交換のdoseを増やしてさらにrituximabが用いられ、あるスタディでは375mg/m2/weekを4回(Blood 2011 118 1746)。しかし、最近はrituximabがfirst-lineとしても用いられるようになってきた(J Thromb Thrombolysis 2012 34 347)。CNI、vincrisineなども文献はあるようだ。つづく。


2014/01/20

血漿交換 2 (aka TPV)

 ABO不適合の脱感作で薦められる血漿交換の量と回数は?これも、施設によって異なる(交換量はTPVの1-1.5倍、交換はアルブミンまたはFFP、毎日または隔日で数回と書いてある)。TPVとはtotal plasma volumeの略で、Total blood volume×(1-Hct)だ。Total blood volumeは、Nadlerの方程式というのが最も正確だそうで、男性は0.3669 * Ht(in meter)^3 + 0.03219 * Wt(in kg)+ 0.6041、女性は0.3561 * Ht(in meter)^3 + 0.03308 x Wt(in kg)+ 0.1833。

 しかし、さらに調べると近似したGilcher’s Rule of Fivesというのがあった。これは性別と体格で大体total blood volumeがわかるという優れものだ。男性なら60ml/kg(太り体型)、65ml/kg(やせ体型)、70ml/kg(普通体型)、75ml/kg(筋肉質体型)。女性なら55ml/kg(太り体型)、60ml/kg(やせ体型)、65ml/kg(普通体型)、70ml/kg(筋肉質体型)。

 だから、たとえば普通体型でHctが40%の男性の1-1.5倍のTPV量は36-54ml/kgだが、実際にはこの計算をしている人はほとんどいないと思われる。これを交換するのに必要なFFPを、今度は単位に変換するのだが、これが紛らわしい。というのも、FFP一単位が120ml(全血200mlから取れる血漿量)と思ったら、480mlのことを慣習的に「5単位」というらしいからだ。だから、当座は単位よりmlで表現したほうがよさそうだ。


2014/01/17

血漿交換 1 (aka ABOi kidney transplant)

 じつは、私が前にいた施設では血漿交換を病理部がやっていた。病理部というか、輸血部・検査部という感じだったが、とにかく腎臓内科は(血漿交換に使うカテーテルの挿入も含めて)タッチしなかった。これは改善されるべき問題で、さもなければフェローシップを卒業してから自分で学ばなければならない。

 そんなわけで、ABO不適合の移植前血漿交換はAB型のFFPで置換する、とか聞いても最初は「何のことやら」だった(抗A、抗B抗体をふくまない血漿を選択するといわれれば納得だが;そもそもABO不適合移植じたい、前いた施設では少なくとも私がいた2年間では1件もなかった…レクチャは受けたが)。それで、いま勉強している。

 たとえばABO不適合移植の場合、昔は脾摘していたがRituximabを使うようになってからはしないという歴史的な背景、Rituximabは200mg投与が多い(が人により100mgだったり500-1000mgだったり、1回だったり複数回だったりする)、血漿交換は抗A・抗B抗体が16倍以下を目標にしている、などについて論文で読んだ(Transplantation 2011 91 853)。

  またASFA(American Society for Apheresis)によるガイドライン(J Clin Apher 2013 28 145)も入手した。この文献は、ABO不適合の移植前脱感作をRecommendation Grade 1B、Category Iに分類しているのみならず、教科書的記述もあって分かりやすい。

 まずABO不適合にはmajor incompatibility(レシピエントの抗A・抗B抗体によりドナー臓器の内皮細胞にあるA抗原・B抗原が攻撃され超急性・急性の体液性拒絶を起こす)、minor incompatibility(ドナー臓器に含まれるリンパ球が抗A・抗B抗体を産生してレシピエントに溶血性貧血を起こす)がある。

 Rituximabが主流だがbortezomibなどほかの免疫抑制剤が用いられることもあるし、これらの他にステロイド・MMF・CNIなども用いられるが、universalなレジメンはない。移植後に抗体価があがってくることはあるが、それらが全てAMR(antibody-mediated rejection)なわけではない(PPVは低いがNPVは高いということ)。腎生検でのC4d positivityについても同様で、それすなわちAMRなわけではない。つづく。

2012/11/03

PKD v. desensitization

 Living donorがいてABOないしクロスマッチが不適合の場合、選択肢はPKD(paired kidney donation)かdesensitizationだ。それぞれの第一人者のトークが聴けた。PKDを熱心に(30-40/year)しているNorthwestern Memorial Hospitalの先生は、自分の経験したnon-simultaneous  extended altruistic-donor chain(NEJM 2009 360 1096)を紹介した後、KPDには脆さ(chainは簡単に壊れる)があるし、cPRAが高ければいくらプールを広げてもマッチする可能性は低いが、効率をあげれば全米で年に1000-2000件は行けるのではないかと話した。

 Desensitizationを熱心にしているJohn Hopkinsの移植外科医は、やはり自分の経験した211例(mean cPRA 82、NEJM 2011 365 318)についてまず話し、術前後にIVIGと血漿交換をおこなうこと、Death-censored graft survival、patient survivalはcompatibleな移植例に比べれば悪い(抗体価の強さに応じてLuminex、Flow、CDCの順に悪い)が、移植を受けずに透析しながらマッチを待つのに比べれば(たとえCDCクロスマッチ陽性でも)良いと主張した。

 次に、LuminexやFlowをクロスマッチに用いる、脱感作にIVIGと血漿交換を用いるなどは全米の施設にほぼ共通したプラクティスと主張した(CJASN 2011 6 2041)。これを彼は"eminence-based medicine(誰かが始め、皆が従い、慣習になる医療)"と呼んだ。Rituximab、Bortezomibの話はでなかったが、Eculizumabの話は出た(NEJM 2010 362 1744、catastrophic APSの一例だが)。

 そのあとPKDとdesensitizationの比較に話は及び、cPRAとDSAと血液型できれいに治療方針を分けていた。Low PRA、low DSA、O donorならKPD、Low PRA、high DSA、O donorもPKD、High PRA、low DSA、non-O donor(とくにAB)、O recipientならまずPKDでマッチしない(モデルで示した論文はJAMA 2005 293 1883)からdesensitization、High PRA、high DSA、non-O donor、O recipientならPKDもdesensitizationも難しい。

 しかし、実際は最後のカテゴリーが一番多い…。彼はPKDでDSA抗体価の少ないドナーをみつけて脱感作するというコンビネーションを薦めていた。ただPKDは前述のようにchainがbreakしてしまうことが多々あり、実際は困難を極める。DSAのタイプ(DQが特に悪い?)についても会場から質問が出たが、まだスタディなどでvalidateはされていないようだ。

2012/05/20

ABO incompatibility

 あるliving donorがあるintended recipientに腎をあげたいと申し出たとする。でもその組み合わせではABO不適合だったら、どうするか。とくに、患者さんがO型の場合、その人は抗A、抗B抗体を両方持っているので、A型の腎臓は患者さんの抗A抗体、B型の腎臓は抗B抗体、AB型の腎臓は抗A、抗B抗体両方による拒絶反応(AMR、antibody-mediated rejection)の危険がある。

 ひとつの方法は、paired kidney donation(PKD)だ。同じように不適合なドナーとレシピエントのペアがたくさんいるので、そのなかでマッチする組み合わせを見つけてswapするということ。もっともシンプルなのは、A型の患者さんに腎臓をあげたいB型のドナーが、べつのB型の患者さんに腎臓をあげるかわりに、そのB型の患者さんに腎臓をあげたい(があげられない)A型のドナーが、A型の患者さんに腎臓をあげる、という交換だ。PKDは韓国で最初に報告された。

 しかし、O型の患者さんはO型からしか腎臓をもらえない一方で、O型のドナーは、腎臓にA抗原もB抗原もついてないので、A、B、AB、O、すべての血液型の患者さんにあげられる。だから、たとえPKDをしてもO型のレシピエントがどうしても長く待たなければならない。そこで、生まれ持った抗A抗体、抗B抗体をできるだけ除去して、なんとかA抗原、またはB抗原のある腎臓を生着させようというのがABO不適合移植だ。

 米国ではJohns Hopkins大学が最もABO不適合移植を先進的に行ってきた(Transplatation 2009 87 1246)。術前治療は血漿交換とIVIGで、抗Aあるいは抗B抗体の抗体価が1:16以下に下がるまでやる。手術前日にもやり、そのあと抗体価が下がっていることを確認する。

 成績は術直後のgraft lossがどうしても一定の割合でおこるが、それを過ぎると、極めてvigilantなモニタリングが必要(protocol biopsyなど)だけれども、成績はABO適合の移植と変わらない(Transplantation 2012 93 603)。ただ少なくともこちらでは、抗体価が1:512以上、AB→Oの不適合、HLAのflow cytometry cross matchも陽性な場合、などはやらない。

2012/04/26

基本原理

 私が症例について話す全てのことは、①病態生理的にかなっており、②エビデンスに裏打ちされているように努めている。最近は、③経験に裏打ちされている、も加えたいと思っているのと、①から③の全てが揃っても、患者さんに検査や治療を提案するにはもう一つ、④信じること、が必要なのかなと思う。

 anti-phospholipid syndrome(APS)の患者さんが重度の深部静脈塞栓症で入院し、さらに腎不全になった。Up/Ucr 1.6のタンパク尿もある。SLEではなく(抗核抗体の他に症状も所見もない)、腎動静脈に血栓はない。Thrombotic microangiopathyは否定できないが、血液検査上は溶血の所見がない。

 UpToDateを調べると、primary antiphospholipid syndromeは様々な糸球体腎炎をきたすことが分かっている。だがこの人はAPSの他にもpro-thromboticな病気を抱えているうえ、heparinでは物足りないとdirect thrombin inhibitorのargatrobanが持続静注されているので腎生検というoptionはない(出血と塞栓症のリスクが高すぎる)。

 日一日と腎機能は悪くなる。透析導入は時間の問題だ。病勢を変えることはできないものか。論文を調べて、血漿交換が有効かもしれないというのがでてきた(QJM 1988 68 795)。生理学的にはanti-phospholipid antibodiesを除くわけだから話は通っている。この論文、SLEではないprimary APSによる腎不全が対象なところは患者さんと共通だ。

 ただし全例が20-30代と若く、かつ分娩後の腎不全、そして腎生検でthrombotic microangiopathyが確認されている点は患者さんと関係ない。多くの例で血漿交換後に速やかに腎機能が回復しているのはencouragingだが、実際血漿交換をするには透析カテーテルを挿入せねばならず、抗凝固剤argatrobanを切ったり、絶対にミスできなかったりとリスクが高い。

 それでスタッフはanti-phospholipid syndromeの経験が豊富な別のスタッフに相談した。すると彼はcatastrophic anti-phospholipid syndrome(三つ以上の臓器が冒されている状態)でないと適応にならないだろうと言う。エビデンスはない、あくまで彼の経験だ。それでさしあたっては血漿交換を控えていたが、そうこうしているうちに別の2臓器が血栓・虚血によって冒されてしまった。

 それで血漿交換を始めることになった。上手くいけばいいと思う。①生理学的にかなっており、②エビデンスは乏しいが一応encouragingな論文があり、③経験に裏打ちされ、④信じている。これが私たちにできるベストだ。専門家になるとこういう難局に追いつめられるから、①から④の基本原理を持つのが大事になるだろう。

 たとえば、この患者さんは血漿交換の前にIVIGを投与された。これは私からすると①生理学的な正当性に乏しく、②エビデンスはなく、③経験もなく、④信じていたかは知らないが「他に手がないからする」という感じがした。これにより患者さんは低ナトリウム血症(IVIGはほぼelectrolyte-freeなので)、TRALI(IVIGでも報告されている)、塞栓症(副作用の一つだ)すべてを合併することになった。


2012/03/17

Chimerism

 移植後は、免疫抑制剤を調節して感染症と拒絶反応のはざまで戦わなければならない。それならいっそレシピエントの免疫系をドナーの免疫系にすり替えてしまえば、移植腎に拒絶反応がおこることもなく免疫抑制剤をのまなくてもよくなるのではないか?という考え方がある。

 この場合を、一つの身体に二つのシステムが共存するので、ギリシャ神話の神獣chimeraにあやかりchimerismという。移植腎はいいかもしれないが、ドナーの免疫系がレシピエントの他の細胞をアタックするのではないの?(これをgraft-versus-host disease、GVHDという)という心配もある。

 Bostonのグループの仕事が2008年NEJMに載った(NEJM 2008 358 353)。かなり毒性の強い薬と放射線でレシピエントの骨髄を根絶やしにして、そこにドナーの骨髄を静注する。被験者のレシピエントはみな若く、5人中4人が遅くとも術後一年で免疫抑制剤が要らなくなった。

 残りの1人は、元々PRAが高かった。しかし奇跡的に妹とのcross matchが陰性で腎&骨髄移植に踏み切った。驚くべきことに根絶やしになったはずの本人の免疫系が術後にanti-donor HLA antibodyを作りはじめ、術後10日に免疫性拒絶反応が起きた。血漿交換、ATG、rituximabにも関わらず腎臓は戻らず、その後べつの家族から二回目の移植を受けて腎機能は通常の免疫抑制剤で維持されている。

 そしてこないだやはりBostonのグループの仕事が発表された(Sci Transl Med 2012 4 124ra28)。これはfacilitating-based hematopoietic stem cellという、骨髄由来でCD8陽性だがTCRを欠く細胞を使っている。要するにprecursor dendritic cellのことらしいが、これを使うとtoleranceが導入されやすいらしい。

 ここから先は免疫学の知識がないと何のことやらさっぱりなので、もう少しtransplant nephrologistの先生に学んで帰ってこよう(revisit)と思う。ともかく若くてsensitizeされていないレシピエントで、HLAが1-5/6 matchのliving donor transplantには有効なようだ。ボストンでは治療の一つとして確立されているのかもしれない。

2011/12/03

UNC Chapel Hill v. EUVS

 今日はrenal vasculitisの講義があった。先生はUNC Chapel Hillの出身だ。UNC Chapel Hillといえば糸球体腎炎の全米における最大のセンターであり、全米屈指の腎臓内科センターらしい。そんなことも知らなかった。そんな先生が「悔しいけどEUVS(欧州の血管炎研究グループ)のほうが質の高いスタディをしてるのよねー、でも彼らは論文を発表するのが遅い!」とか言うのを聞くと「本場で鍛えた人は違うなあ」とか思う。

 さてそんな先生の講義で分かったのは、腎血管炎(ANCA-associated vasculitits)の治療が9年前と変わっていないことだ。IV cyclophosphamideのほうがPO cyclophosphamideよりも短期間で積算投与量が少なく毒性を減らすことができるらしい。maintainanceにはAZA(azathioprine)のほうがMMF(mycofenolate mofetil)より優れている(EUVSのRCT、NEJM 2003, 349, 36-44)。

 血漿交換も、これまたEUVSがRCTをしており(MEPEX study: JASN 2007, 18, 2180-2188)腎機能の悪い例(Scr 5.8以上、あるいは透析を要する)では血漿交換とcyclosporine(とステロイド)を併用した群でESRDへの進行が有意に防がれた。彼らのprotocolが"7 exchanges in 14 days, exchange volume of 60mg/kg/session, with albumin replacement"だったので、皆それに従っている。

 以前に紹介したRAVE trialも、腎臓内科医(やリウマチ内科医)が「cyclophosphamideよりも毒性の少ないクスリはないものか?」と何年もかけて探し求めた文脈の中で生まれたと気付かされた。それでcyclophosphamideとrituximabを組み合わせようなどという話にはならないわけだ。MTXなども試され、重要臓器が冒されていないケースでは関節痛などの症状を緩和するらしい。

2011/10/11

Atypical HUS

 HUSといえばO-157などの出血性病原性大腸菌の毒素によるものだと思っていたが、10%位の例はatypical HUSと呼ばれ、補体の制御異常によることがわかった。この疾患はヨーロッパで盛んに研究・治療されているが、うちの病院に米国でこれを初めて報告しかつ治療経験も豊富な先生がいるので症例に接しかつ学ぶことができた。NEJMのレビュー(NEJM 2009 361 1676)を復習してみよう。

 Atypical HUSはShiga-like toxinともStreptococcus pneumoniaeとも関係ない。典型的なHUSにくらべ予後が悪い。補体の、なかでもalternative pathwayに異常があってC3のみが低下しC4は正常だ。というのもclassic pathwayとlecithin pathwayではC2、C4 fragmentによってC3 conversatesが作られるのに対し、alternative pathwayではC4が消費されないからだ。

 Alternative pathwayではC3がC3a、C3bに加水分解するところから始まる。C3aは好中球を呼び寄せ、C3bはC5をC5a、C5bに分解する。C5aはやはり好中球を呼び寄せ、C5bはC6-C9を引き連れてMAC(membrane-activating complex)を形成し、opsonizationを起こす。

 これを制御する様々な仕組みがあって、ひとつはCFH(complement factor H)で、C末端で細胞膜にくっつきN末端でfactor Bと競合してC3 convertaseが出来ないようにする。またCFI(complement factor I)はC3bを不活性化する。ThrombomodulinはCFHやCFIの働きを助けるほか、TAFIa(thrombin-activatable fibrinolysis inhibitor)によりC3aとC5aを不活性化する。

 いまのところatypical HUSの原因として知られているのは、CFH遺伝子の異常、CFI遺伝子の異常、C3遺伝子の異常(C3bが不活性化されにくくなる)、他にもTHBD、MCP、CFHR1/3など補体制御遺伝子の異常やCFHに対する自己抗体などがある。これらの異常があると、感染(URIなど)を契機に補体の活性化が止まらなくなる。それで血管内皮細胞の障害から血栓が起こる。

 治療は血漿交換で、患者の多くは血漿交換-dependentになる。腎不全に陥る例が多く、移植しても遺伝子異常のタイプによっては90%で再発することがある。ヨーロッパで様々な治療が検討されているが、anti-C5 monoclonal antibodyのeculizumabは患者さんを血漿交換-independentにしたり(Pediatr Nephrol 2011 26 621)、移植後の再発を防止することができる(Pediatr Nephrol 2011 26 613)と注目されている。

2011/08/16

Anti-HLA antibody

 ドナーがなかなか見つからない患者さんは、desensitizationをしてでもHLA不適合移植をしたほうが、移植せずに透析をして待ち続けるより長生きできるという論文がJournal clubで紹介された(NEJM 365, 318-26, 2011)。

 Donor-specific anti-HLA antibodyは、妊娠や輸血、以前の移植などで作られることが多いが、そうでなくても敏感な免疫の人は元々持っている場合もある。ウイルス感染なども免疫反応を惹起する過程でこれらの抗体を作ることがある。

 この抗体がターゲットとなる抗原をもった臓器をあげたら、免疫の思う壺というか、飛んで火に入る夏の虫というか、移植臓器はdonor-specific anti-HLA antibodyの餌食になってしまう。だからドナーの免疫と移植臓器がマッチすることをあらかじめ確かめる必要がある。

 CDC(complement-dependent cytotoxicity assay)はドナーの血清とレシピエントのリンパ球を混ぜて反応するかをみる試験だ。補体とanti-human globulinをつかって反応を起こりやすくしている。さらに感度が高いのがFCXM(flow-cytometry cross-match)。

 さらに感度が高いのはbead assayで、これはレシピエントとの反応がどうこうというより、単に抗体を検出している。この試験は感度が高い半面、false positiveも高い。言い換えると、非常に抗体価の低いものまで拾ってくるが、これらの抗体がどれだけ移植後悪さをするかは分からない。

 移植にあたってはクロスマッチで反応がおこらない相手を探すのが第一だが、ドナーの30%は残念ながらdonor-specific anti-HLA antibotyを持っており、彼らに適合する臓器を見つけてくることは容易ではない。そこで、ただ待ちぼうけるのではなく、ドナーをde-sensitizeしてはどうかと言う話になる。

 De-sensitizationには大きく二つの方法があり、ひとつは高用量のIVIG、もうひとつは低用量のIVIGと血漿交換を組み合わせたものだ。これを行ってからHLA不適合移植した群は、適合移植の相手が見つかるまで待った群(どちらも移植後は免疫抑制を掛けるが)、相手が見つからずに待ち続けた群に比べて長生きした。

 しかし、どの群もloss of follow upが多く、8年間のフォローアップで得たKaplan-Meier曲線は美しく不適合輸血群の有意な長期生存を示しているものの、説得する真のパワー(計算上の統計学的なパワーでなく)は低い、と先輩フェローがこれをビシッと指摘しており、なるほどなと尊敬した。