HUSといえばO-157などの出血性病原性大腸菌の毒素によるものだと思っていたが、10%位の例はatypical HUSと呼ばれ、補体の制御異常によることがわかった。この疾患はヨーロッパで盛んに研究・治療されているが、うちの病院に米国でこれを初めて報告しかつ治療経験も豊富な先生がいるので症例に接しかつ学ぶことができた。NEJMのレビュー(NEJM 2009 361 1676)を復習してみよう。
Atypical HUSはShiga-like toxinともStreptococcus pneumoniaeとも関係ない。典型的なHUSにくらべ予後が悪い。補体の、なかでもalternative pathwayに異常があってC3のみが低下しC4は正常だ。というのもclassic pathwayとlecithin pathwayではC2、C4 fragmentによってC3 conversatesが作られるのに対し、alternative pathwayではC4が消費されないからだ。
Alternative pathwayではC3がC3a、C3bに加水分解するところから始まる。C3aは好中球を呼び寄せ、C3bはC5をC5a、C5bに分解する。C5aはやはり好中球を呼び寄せ、C5bはC6-C9を引き連れてMAC(membrane-activating complex)を形成し、opsonizationを起こす。
これを制御する様々な仕組みがあって、ひとつはCFH(complement factor H)で、C末端で細胞膜にくっつきN末端でfactor Bと競合してC3 convertaseが出来ないようにする。またCFI(complement factor I)はC3bを不活性化する。ThrombomodulinはCFHやCFIの働きを助けるほか、TAFIa(thrombin-activatable fibrinolysis inhibitor)によりC3aとC5aを不活性化する。
いまのところatypical HUSの原因として知られているのは、CFH遺伝子の異常、CFI遺伝子の異常、C3遺伝子の異常(C3bが不活性化されにくくなる)、他にもTHBD、MCP、CFHR1/3など補体制御遺伝子の異常やCFHに対する自己抗体などがある。これらの異常があると、感染(URIなど)を契機に補体の活性化が止まらなくなる。それで血管内皮細胞の障害から血栓が起こる。
治療は血漿交換で、患者の多くは血漿交換-dependentになる。腎不全に陥る例が多く、移植しても遺伝子異常のタイプによっては90%で再発することがある。ヨーロッパで様々な治療が検討されているが、anti-C5 monoclonal antibodyのeculizumabは患者さんを血漿交換-independentにしたり(Pediatr Nephrol 2011 26 621)、移植後の再発を防止することができる(Pediatr Nephrol 2011 26 613)と注目されている。