大変ご無沙汰しています!
こんなに投稿できなかったのは、久々です。執筆陣は元気ですので、ご心配しないでください!
久々の内容はCKD(慢性腎不全)における貧血について少しずつ考えてみようと思います。過去にも投稿はあるので、そちらも参考にしてもらいたいです。
・貧血はCKDの進行とともに必ずくるものなのか?
・・CKD(慢性腎不全)の進行に伴い貧血の重症度は増加するが、CKDの進行と貧血の人数の関係は相関性はなく、患者によって変化する。透析前のCKD患者では約50%が貧血を有していると言われている(Curr Med Res Opin.2004)。
・CKDにおける貧血は影響があるのか?
・・貧血は組織酸素運搬の低下をもたらし、倦怠感や息切れや活動性低下につながる。また、観察研究では貧血は左室肥大(AJKD 1996)、死亡率の上昇(JASN 1999)との関連性が示唆されているが、RCT(NEJM 2009)では貧血の改善に伴い左室肥大や死亡率の改善には寄与していない。これらのことから、貧血ではない他の因子が関連している可能性が考えられている。
・何がCKDにおける貧血の原因になるのか?
・・一般的な原因は下記のものになる(AJKD 2008)。
−相対的エリスロポエチン不足
−鉄欠乏
−失血
−炎症、感染
−隠れている血液疾患
−副甲状腺機能亢進症(透析患者)
−溶血
−栄養不足
・鉄不足の場合には、経口鉄と静脈鉄はどちらがいいのか?
・・安価(経口 8円/錠 vs 60円/1A)で、投与がしやすいことや貧血の改善に効果的であることから経口投与が推奨される。
*少し深掘り
まず、鉄不足は、Absolute iron deficiency (鉄吸収低下による欠乏)とFunctional iron deficiency(機能的鉄欠乏)に分けられる。
Absolute iron deficiencyは消化管出血や手術後の出血、透析によるものなどや稀だが摂取不足によるものが原因となる。TSAT低下、Ferritin低下が特徴。
Functional iron deficiencyは貯蔵鉄はたくさんあるが、ESA製剤を用いても赤芽球への取り込みが悪くなってしまうものである。TSAT低下、Ferritin上昇が特徴。
起こる病態としては、ヘプシジン(鉄の恒常性を調整するもの)上昇に伴う2次性の鉄欠乏であると考えられている(Semin neph 2016)。ヘプシジン上昇は慢性炎症や腎臓からのヘプシジンのクリアランス低下によって生じている。ヘプシジンは細胞の内側から外側へ鉄イオンを輸送する機能を持つ膜貫通タンパク質であるフェロポーチン(Ferroportin)に結合する。それによって、ヘプシジン上昇によって、フォロポーチンの働きを抑制し、鉄の細胞の内在化と劣化を起こす。また、ヘプシジン上昇によって十二指腸や肝臓、脾臓マクロファージからの鉄の放出を抑制する。
・鉄剤の経口投与は飲めない人がいるよどうしよう?
・・一定頻度で、消化器症状で飲めない人がいる。記載時では未発売であるが、Ferric maltol(マルトール第二鉄)は消化器症状は少なめで、効果が高いとのことで、今後に期待はしたい(Ann Pharmacy 2021)。
次回にHIF阻害薬やESAなどについて少し深掘りしていく。