2013/11/28

SES(socio-economic status)とCKD

 フェローシップのマッチングに参加したレジデンシー2年目の冬(いまは3年目だが)、そのあとボスになる恩師の先生と面接して「どうして腎臓内科には最近breakthroughがないのですか?」と聞いた。今思うと生意気な質問だが、そのとき先生がいくつか説明してくれた中に”kidney patients are poor”というのがあった。その時は分からなかったが、こないだ学会で「SES(socio-economic status)とCKD」というお話があって、納得した。

 お話でいちばん衝撃だったのは、USRDSによる米国のESRDマップと、US Census Bureauによる貧困マップが酷似していたことだ。どちらも濃厚なのは南部(とくにミシシッピデルタ)、アパラチア山系、メキシコ国境など。実際、地域で貧困の率とESRDの有病率を見ると相関していた(JASN 2008 19 356)。

 米国内の地域もさることながら、都市の中でも低教育、低収入、悪いneighborhood、移民・マイノリティの多い地域に疾患(と犯罪)が集積する。San Franciscoのsafety-net clinicでCKD患者さんを調べたら貧しいマイノリティ優位だったというデータもある(CJASN 2010 5 828)。私も街は違うがレジデンシー時代にクリニックがそういうエリアにあったので、保険がなかったり言葉が通じなかったりする患者さん達に行き届いたケアを提供するのに苦労した。

 で、どうすればよいのか?ACA(affordable care act、別名Obama Care)がvulnerableな群の医療アクセスを改善するだろうか?医療アクセスがあがっても、人種・遺伝子・持って生まれたネフロンの数など変えられない要素もあるのだろうか?高貧困neighborhoodから低貧困neighborhoodに移るとsubjective well-beingが変わるという研究はあるが(Science 2012 337 1505)、objectiveな話はこれからみたいだ。