血液透析のバスキュラー・アクセスといえば、自己血管内シャント、人工血管内シャント、表在化動脈、そして中心静脈カテーテルである。中心静脈カテーテルは急性期に用いられるカテーテルと、外来透析で長期使用できる皮下トンネルとカフのあるカテーテルに分かれる。
なお、以前は前者をtemp cath、後者をperm cathと呼んでいたが、残念ながら感染や閉塞などの問題が起きうるため、永久(permanent)には使えない。そのため、最近はトンネル透析カテーテル(tunnelled dialysis catheter, TDC)と呼ばれる。
カテーテルが使えなくなったら、他の静脈に新しいカテーテルを挿入すればよいのだが、体表からアクセスできる中心静脈は左右の内頚・鎖骨下・大腿静脈の6つしかない(鎖骨下静脈は、上肢腫脹のおそれや同じ側に内シャントが作れなくなるおそれがあり、避けられる)。
これらの静脈がどれも使えなくなると、非常にまずい。しかし、問題あるところに解決策あり(必要は発明の母である、とも言うが)。そこで、私の知る限り3つの方法が提案されている。それぞれ、Surfacer® Inside-Out Access Cather System、経腰部カテーテル、経肝臓カテーテルである。
・Surfacer® Inside-Out
2016年に欧州で基準適合となり、2020年に米国で承認された。上大静脈や腕頭静脈が血栓閉塞している場合の解決策で、大腿静脈から挿入したカテーテルを血栓閉塞の右心房側まで進め、デバイスを透視下に透析カテーテルを挿入したい皮膚の位置まで貫通させる。そして、needle wireで体表に出てくる。
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(出典はDiagn Interv Radiol 2016 22 560) |
経腰部・肝臓とも第3、第4選択肢であり、血栓閉塞・感染・迷入・屈曲などの合併症は避けられない。経腰部の開存・使用可能率は12か月で45%、経肝臓は挿入後136日で50%にすぎなかった(それぞれ、前掲論文)。