2024/09/22

IVRならではのアプローチ

 血液透析のバスキュラー・アクセスといえば、自己血管内シャント、人工血管内シャント、表在化動脈、そして中心静脈カテーテルである。中心静脈カテーテルは急性期に用いられるカテーテルと、外来透析で長期使用できる皮下トンネルとカフのあるカテーテルに分かれる。

 なお、以前は前者をtemp cath、後者をperm cathと呼んでいたが、残念ながら感染や閉塞などの問題が起きうるため、永久(permanent)には使えない。そのため、最近はトンネル透析カテーテル(tunnelled dialysis catheter, TDC)と呼ばれる。

 カテーテルが使えなくなったら、他の静脈に新しいカテーテルを挿入すればよいのだが、体表からアクセスできる中心静脈は左右の内頚・鎖骨下・大腿静脈の6つしかない(鎖骨下静脈は、上肢腫脹のおそれや同じ側に内シャントが作れなくなるおそれがあり、避けられる)。

 これらの静脈がどれも使えなくなると、非常にまずい。しかし、問題あるところに解決策あり(必要は発明の母である、とも言うが)。そこで、私の知る限り3つの方法が提案されている。それぞれ、Surfacer® Inside-Out Access Cather System、経腰部カテーテル、経肝臓カテーテルである。

・Surfacer® Inside-Out

 2016年に欧州で基準適合となり、2020年に米国で承認された。上大静脈や腕頭静脈が血栓閉塞している場合の解決策で、大腿静脈から挿入したカテーテルを血栓閉塞の右心房側まで進め、デバイスを透視下に透析カテーテルを挿入したい皮膚の位置まで貫通させる。そして、needle wireで体表に出てくる。

(出典はこちら

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・経腰部(translumbar)カテーテル

 腰部から下大静脈にアプローチする方法である。一例は:腹臥位で腸骨稜の少し頭側(L3レベル)から透視下に脊柱起立筋や腸腰筋を貫通し、腎静脈合流部よりすこし尾側の下大静脈を穿刺してガイドワイヤーを挿入する。出口部は、ベルトの位置より頭側でできるだけ前側(中腋窩線)にする(J Bras Nefrol 2019 41 89)。

(出典は前掲論文)

・経肝臓(transhepatic)カテーテル

 腹臥位になれないなどの理由で経腰部アプローチができない場合の選択肢とされ、右・正中・左肝静脈などを通じて下大静脈に至る。どの静脈を穿刺するかはエコーなどで決定され、安全性を考慮し細い支流の静脈が選択される。

(出典はDiagn Interv Radiol 2016 22 560)

 経腰部・肝臓とも第3、第4選択肢であり、血栓閉塞・感染・迷入・屈曲などの合併症は避けられない。経腰部の開存・使用可能率は12か月で45%、経肝臓は挿入後136日で50%にすぎなかった(それぞれ、前掲論文)。

 いずれも、IVRならではの発想であり、インターベンショナル・ネフロロジーを専門にしている経験豊富な施設・医師に任せるべきだと思うが、選択肢を知っておくことは、例によって「いまのアクセスがだめでも、次があります」と言えるので医師と患者の心の支えになるだろう。
 
 それにしても、この世にpermanentなものは、なかなか見つからないものである。しかし、2019年のディズニー映画『アナと雪の女王2』でオラフはアナに"I thought of one thing that's permanent. Love."といった※。

 諦めずに可能性を探ることもまた、変わらない愛なのだろう。

 ※5年前なのでネタバレでも許してほしい。なお先日、アナ雪1と2の監督Jeniffer Leeが、アナ雪3と4(二つでセットの物語になる予定)の制作に集中するためDisney AnimationのChief Creation Officerを退任した。