腎臓内科フェローが当直で緊急に透析カテーテルを挿入するのは、日本でも米国でも同じだ。しかし米国では「やりたい人がやればよい(そのほうが患者も安全だ)」という風潮が高まっており、CJASNでも2018年に賛否両論が掲載された(「必修であるべき」がCJASN 2018 13 1099、「必修でなくてよい」がCJASN 2018 13 1102)。
筆者は、8年前のある出来事がいまだに忘れられず(1、2、3)、その後も「カテ道」で経験を積ませていただき、現在の施設でもカテを入れている。そんなわけで、大腿静脈からガイドワイヤーの付属していないCVカテーテル(透析用ではないもの)キットを挿入したある日のこと。
そのキットは、穿刺針の外筒がシース・イントロデューサーのような役割を果たし、その内腔からカテーテルを挿入する(挿入後は外筒を剥いて除去できるようになっている)ものだった。
しかしカテーテルだけでは操作性がわるく、少しでも抵抗があると(左で総腸骨静脈と動脈が交差するなど)進まないし、一旦細い静脈に迷入するとバックはできるが方向転換ができない。抜いたり出したりするたび位置確認にポータブルX線を撮っても、埒が明かない。
しかし、CVカテーテルは「カテーテル」というだけあって、どれも「何ゲージ」という以外に、内腔に「何インチ(0.025、0.035など)」のガイドワイヤーが入るか明記してある。そこで、透視下にカテーテル内腔からガイドワイヤーを進めると、するすると容易にIVCに入ってカテーテルを導いてくれた。
吉田兼好の『徒然草』第52段は仁和寺の和尚が石清水八幡(写真)に行った時の話で、「少しのことにも、先達はあらまほしき事なり」とある。
ガイドワイヤーもまた、あると大変ありがたいものである。
しかし、注意すべき点もある。それは、先端がどこにいるかわからないガイドワイヤーは、却ってあぶないということだ。
たとえば内頚静脈からCVカテーテルを挿入する場合、ベッドサイドでガイドワイヤーの先端位置を確認することはむずかしい。「心電図モニターで不整脈(心室性期外収縮や非持続性心室頻拍)が出れば心室内だから、引きましょう」などというが、それ以外にも迷入してほしくない(穿破してほしくない)場所は沢山ある。
だから筆者は、最近もっぱら(透析用か、短期・長期用かを問わず)CVカテーテルはカテ室で挿入することにしている。安全には替えられないからだ。
「少しのことにも、ガイドワイヤーと透視はあらまほしき事なり」とでも言おうか。
クマさんがおしっこしないで冬眠できるのも、じん臓が一日に体液の何十倍もろ過してから不要なものを残して再吸収するのも、じん臓の替わりをしてくれる治療があるのも、すごいことです。でも一番のキセキは、こうして腎臓内科をつうじてみなさまとお会いできたこと。その感謝の気持ちをもって、日々の学びを共有できればと思います。投稿・追記など、Xアカウント(@Kiseki_jinzo)でもアナウンスしています。
2019/03/29
2019/03/07
尿からも色々と考えてみよう (尿中Naの使い方と注意点)
尿の生化学検査を使うことは多いだろうか?
腎臓内科医は使うことも多いかもしれないが、使い道に迷う時も多いと思う。
今回は基礎的なことから少しこの部分に触れたい。
・尿中Na (ナトリウム)
通常は尿中Na排泄量は、食事の摂取量から汗、便排泄での喪失量を差し引いたものになる。通常は40-220mEq/day程度と言われる。
有効循環血液量が少ない時は、交感神経やRAA(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン)系が働き、尿中Na排泄を<15mEq/Lにし、Na喪失を避け有効循環血液量を維持する。
有効循環血液量が多い時は、ANP(atrial natriuretic peptide)などが放出され、尿細管でのNa再吸収を抑制し尿中Na排泄を促進している。
☆尿中Naは有効循環血液量を間接的に測定する手段として、Na異常症の診断にも用いられている。
また、FENaを用いる場面も多い。これは、腎臓から尿のNa排泄割合を示している。
尿中Na濃度は利尿剤などを使用している場合などは測定誤差が出てしまう。
尿中NaやFENaを利用する場面:
・AKIの原因が腎前性か腎性(ATN:急性尿細管壊死)かを鑑別する材料として使用される。
尿中Na<15mEq/LやFENa<1%は腎不全の原因が輸液に反応する腎前性が原因を示唆する。
もともと腎機能のベースが悪い(CKD)の人にもこの式は使用できるのか?
→正常腎に比して尿中Na移行が少なく、反応は遅くなることに留意して使用すれば有用。
この鑑別方法を用いて、鑑別できない場合はあるか?
→下記の病態には注意が必要
早期:腎血管収縮が生じGFRが低下、まだ尿細管は問題なし(腎前性の値が出る)
晩期:早期の状態が持続し、尿細管壊死が生じ尿中Na増加(腎性の値が出る)
上記の場合は、測定するタイミングによって数値が変化するので注意する。
上記の状態を起こしうるものとして、下図にもあげたような敗血症やNSAIDs使用や横紋筋融解症など我々が遭遇し安いものということはチェックしておく必要はある。
・敗血症や高齢者使用時には注意(エンドトキシンや高齢によりurea transporterがdown regurateして、FE ureaの値が高く出やすくなってしまう。)
腎臓内科医は使うことも多いかもしれないが、使い道に迷う時も多いと思う。
今回は基礎的なことから少しこの部分に触れたい。
・尿中Na (ナトリウム)
通常は尿中Na排泄量は、食事の摂取量から汗、便排泄での喪失量を差し引いたものになる。通常は40-220mEq/day程度と言われる。
有効循環血液量が少ない時は、交感神経やRAA(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン)系が働き、尿中Na排泄を<15mEq/Lにし、Na喪失を避け有効循環血液量を維持する。
有効循環血液量が多い時は、ANP(atrial natriuretic peptide)などが放出され、尿細管でのNa再吸収を抑制し尿中Na排泄を促進している。
☆尿中Naは有効循環血液量を間接的に測定する手段として、Na異常症の診断にも用いられている。
また、FENaを用いる場面も多い。これは、腎臓から尿のNa排泄割合を示している。
FENa = (UNa × P crea / P Na × U crea) × 100
尿中Na濃度は利尿剤などを使用している場合などは測定誤差が出てしまう。
尿中NaやFENaを利用する場面:
・AKIの原因が腎前性か腎性(ATN:急性尿細管壊死)かを鑑別する材料として使用される。
尿中Na<15mEq/LやFENa<1%は腎不全の原因が輸液に反応する腎前性が原因を示唆する。
もともと腎機能のベースが悪い(CKD)の人にもこの式は使用できるのか?
→正常腎に比して尿中Na移行が少なく、反応は遅くなることに留意して使用すれば有用。
この鑑別方法を用いて、鑑別できない場合はあるか?
→下記の病態には注意が必要
早期:腎血管収縮が生じGFRが低下、まだ尿細管は問題なし(腎前性の値が出る)
晩期:早期の状態が持続し、尿細管壊死が生じ尿中Na増加(腎性の値が出る)
上記の場合は、測定するタイミングによって数値が変化するので注意する。
上記の状態を起こしうるものとして、下図にもあげたような敗血症やNSAIDs使用や横紋筋融解症など我々が遭遇し安いものということはチェックしておく必要はある。
☆FENaの感度・特異度が最も高い場合は乏尿を伴い、GFRが低下している場合であることは知っておくべきである!
FE urea
利尿剤使用時は尿中NaやFENaの数値は正確ではなく、その場合にはFEureaが診断の助けとなる。
FE urea = (U urea × P crea / P urea × U crea) × 100
FE urea < 35%が有効循環血液量減少を示唆すると言われている。
ureaは水とともに近位尿細管で再吸収されるため、サイアザイドやループ利尿薬の使用での影響を受けない。
しかし、近位尿細管の障害を生じうるアセタゾラミド投与中やマンニトール、グリセオールなどの浸透圧利尿薬使用中は正確ではなく、urea産生が増加しうるタンパク質過剰摂取や体内異化の亢進での使用は注意する。
副腎不全時は、遠位尿細管でのミネラルコルチコイド作用不足により、Na利尿が生じ有効循環血液量が減少しFE ureaも減少する。
FE urea使用の注意点は?
・利尿剤の使用がない状態ではFENaに代わって使用すべきではない。
・敗血症や高齢者使用時には注意(エンドトキシンや高齢によりurea transporterがdown regurateして、FE ureaの値が高く出やすくなってしまう。)
2019/03/01
腎臓内科医が考えるC型肝炎について。
皆さんはC型肝炎(HCV)の診療は得意だろうか?
多くの腎臓内科医は首を横に振る人も多いかと思う。筆者もその一人である。
KDIGOからCKDにおけるHCVのガイドラインが出ており、それを見ながら少し勉強できたらと思う。
今回は、簡単な記載であり実際には直接ガイドラインを見ていただきたい。
評価のタイミング
以前の2008年に比べて、より細かく提言された。
・CKD患者
−CKD評価の最初の段階でHCVスクリーニングを行う(1C)。
−抗体検査が陽性の場合には、NAT(核酸増幅検査)によってHCV-RNA検査を行う(1A)。
−HCV感染患者には肝臓の繊維化を評価を行う(1A)
・透析患者
−施設透析開始時、または透析機器の変更や方法変更時にHCVスクリーニングを行う(1A)。
−施設透析では、6ヶ月毎に抗体検査とNAT検査を行う(1B)。
−NATだけ、もしくは抗体検査が陽性時にNAT検査を行う(1A)。
・腎移植患者
−腎移植評価の際にHCVスクリーニング評価を行う(1A)。
肝繊維化評価目的に肝生検などの侵襲的な検査は行うべきではない。
☆抗体検査
下記に簡単な手順のアルゴリズムの表を載せる。
HCV感染の治療(CKD患者、移植患者)
以前のガイドラインと比べインターフェロンの使用推奨がなくなった。
・HCV感染のある、すべてのCKD患者に対して抗ウイルス治療可能か評価を行う(1A)。
−インターフェロンなしの治療を推奨(1A)
−HCVのgenotype、ウイルス量、治療歴、薬剤の反応、GFR、肝臓繊維化の程度、合併疾患の程度、腎臓・肝臓移植の適応(1A)
・GFR≧30ml/min/1.73m2 (CKD G1-G3b)の患者では、DAA(direct-active antiviral)治療のレジメンが推奨(1A)
・GFR <30ml/min/1.73m2 (CKD G4-G5D)の患者では、リバビリンを用いないDAA治療を推奨。
・腎移植患者ではHCV治療時に評価をする。
−DAAを基本とした治療を推奨(1A)
−HCVのgenotype、ウイルス量、治療歴、薬剤の反応、GFR、肝臓繊維化の程度、合併疾患の程度、腎臓・肝臓移植の適応(1A)
−インターフェロンを含めた治療は避ける。
薬剤について:
透析施設でのHCV感染の予防:
これに関しては、2008年のガイドラインとの違いはない。
・感染管理と手指衛生が非常に重要(1A)。
・HCV患者に専用の透析機械を用いることは推奨されない(1D)。
・HCV感染患者の隔離は推奨されない(2D)。
腎移植前後のHCV感染の管理:
2008年からDAAの使用推奨もあり抜本的に改訂された。
・代償性肝硬変患者では腎移植単独(肝腎同時移植でなく)が推奨される。
・HCV感染ドナーはHCV感染レシピエントに移植すべき。
・DAA治療のタイミングは個々のケースで決定すべき。下記の表を参照。
HCV感染患者の腎疾患の診断と治療:
・HCV関連腎症の治療は初期治療として、DAAでの治療を行い、クリオグロブリンの増悪、ネフローゼ症候群の発症や急速進行性腎障害が生じている場合には、免疫抑制剤や血漿交換を追加使用検討する。
このHCVのガイドラインは我々が臨床を行う上で非常に重要である。
このガイドラインでは、DAA治療が中心となっている。DAA治療において難点はが高コストである。なので、低所得国など多くの国で純粋に踏襲できない可能性はあることには注意するべきである。
![]() |
| http://chiba-kantomo.com/hepatitis-commentary/2431 より引用 |
2019/02/22
こつこつとコツをひろう道
腎臓内科を目指す人はやっぱり病態生理とかを詳しく知りたいのかなあと思っていたら、バスキュラーアクセスの各手技に習熟したいという情熱を持った人も多い。英語だとinterventional nephrologyと呼ばれ、やはり米国でも注目を集めている(CJASN 2013 8 1211)。かくいう筆者もそこへ足を踏み入れたひとりだ。
さまざまな工夫がモノを言う世界なので、最初はとにかくお師匠たちの教えてくれるコツをひとつひとつ書きとめていたが、だんだんやりながら自分なりに得たコツもでてきた。お師匠たちのコツにくらべれば小さなことだが、このような媒体でシェアすればなんらかの形で役に立つかも知れない。たとえばこんなことだ。
1.局所麻酔
「シャントPTAは内側からだから局所麻酔は効かない」という話もあるが、キシロカイン1ml程度をしっかりと拡張部位の周囲に置いてくれば、けっこう効く。
2.バルーンの進め方
内シャントでシャント本幹の側からガイドワイヤーに沿わせてバルーンを進めても吻合部でつかえて越えない時には、①動静脈が吻合部でつくる角度を鈍にする、②ワイヤーのたわみをまっすぐにする、などを習った。が、③バルーン部分を指でやさしく「くい」っと入れ込むのがけっこう効く。
3.清潔野
患者さんを覆う清潔野と物品を置く清潔野(台など)は、連続しているとなにかと便利(図は右内頚静脈への透析カテ挿入時だが、大腿静脈やシャントPTAでも同様だ)。
たとえば、①患者さんのうえに穿刺針などをおかないので安全でマナーに適う、②ガイドワイヤーが不潔になりにくい、③術者が動いたり振り向いたりする手間が減る(筆者の施設では台が術者の後ろにあった)、④エコープローブを落としにくい、などが挙げられる。
おそらく、こういったコツは筆者が気づくよりずっと前からよく知られていると思われる(筆者も1.は手術時の経験を転用している)。でも、自分で気づくのはうれしい。こういう繰り返しで、『羊と鋼の森』のように道を分け入っていくのかなと思う(こちらも参照)。
さまざまな工夫がモノを言う世界なので、最初はとにかくお師匠たちの教えてくれるコツをひとつひとつ書きとめていたが、だんだんやりながら自分なりに得たコツもでてきた。お師匠たちのコツにくらべれば小さなことだが、このような媒体でシェアすればなんらかの形で役に立つかも知れない。たとえばこんなことだ。
1.局所麻酔
「シャントPTAは内側からだから局所麻酔は効かない」という話もあるが、キシロカイン1ml程度をしっかりと拡張部位の周囲に置いてくれば、けっこう効く。
2.バルーンの進め方
内シャントでシャント本幹の側からガイドワイヤーに沿わせてバルーンを進めても吻合部でつかえて越えない時には、①動静脈が吻合部でつくる角度を鈍にする、②ワイヤーのたわみをまっすぐにする、などを習った。が、③バルーン部分を指でやさしく「くい」っと入れ込むのがけっこう効く。
3.清潔野
患者さんを覆う清潔野と物品を置く清潔野(台など)は、連続しているとなにかと便利(図は右内頚静脈への透析カテ挿入時だが、大腿静脈やシャントPTAでも同様だ)。
たとえば、①患者さんのうえに穿刺針などをおかないので安全でマナーに適う、②ガイドワイヤーが不潔になりにくい、③術者が動いたり振り向いたりする手間が減る(筆者の施設では台が術者の後ろにあった)、④エコープローブを落としにくい、などが挙げられる。
おそらく、こういったコツは筆者が気づくよりずっと前からよく知られていると思われる(筆者も1.は手術時の経験を転用している)。でも、自分で気づくのはうれしい。こういう繰り返しで、『羊と鋼の森』のように道を分け入っていくのかなと思う(こちらも参照)。
2019/02/17
ループス腎炎に対しての腎移植の有効性
ループス腎炎の人を診療する機会は多い。
一般的にループス腎炎はSLE患者の30−50%に発症し、ループス腎炎患者の10−30%が末期腎不全に至るとされている。もちろん、SLEの重症度、遺伝性の要因、社会的な要因、薬剤のコンプライアンス、最初の治療の反応の有無などが大きく関連している(Lupus2010:review)。
ループス腎炎に伴う末期腎不全で一番懸念されるのは、患者の罹患年齢も低いことも一因としてあるが、premature death(早すぎる死亡)である。
NDT2012の報告では、他の疾患に伴う末期腎不全患者に比べて26倍もpremature deathのリスクが高いというから驚きである。
ループス腎炎のpremature deathの主な原因は感染とSLEのflareである。CKJ 2018の論文では、AKIの存在、治療開始後1年での寛解不良、治療に対するコンプライアンス不良はpremature deathの単独のリスクになると報告している。
その中で腎移植が、どんな原因にかかわらずESRD患者の生存率を改善させたという報告がされている。では、ループス腎炎の患者さんに対してはどうなのだろうか?というのを見たのがAnnals of internal medicine 2019である。
今回は、少しその内容を見てみる。
研究は米国の大規模データを用いて、1995年1月1日〜2015年12月31日までの期間の患者で行われた。20974人の患者がいて、9659人(46%)が移植の待機リストになり、そのうちの5738人(59%)が腎移植を施行された。
Primary endpointは全死亡率。
Secondary endpointは死亡原因に設定している。
結果:
・全死亡率は移植を受けた人で973人、移植を受けていない人で1697人であった。下の図を見てもらえばわかるように、移植を受けていない人に比べ受けた人のHazard ratioは0.3と低かった。
・死亡原因では移植を受けることで心血管死が74%低下し、冠動脈疾患(70%)、脳卒中(61%)も低下した。先に述べたループス腎炎の死因のtopの感染も移植を受けた人では減少していた(下図)。
移植がここまで聞くととてもいいなと思ってしまう。
ただ、懸念されるのは他の報告でもあるように、
・他の原因による末期腎不全で移植を受けた患者に比べて、SLEではallograft failureが多いのではないか?
・ループス腎炎末期腎不全の移植患者では、免疫抑制療法をしっかり行うために感染の発症率は上がっているのではないか?
などもある。
日本では、移植治療はまだまだ少ないがSLE患者のpremature deathはしっかりと防ぐ必要がある。移植の治療はとても希望のある分野であるし、おそらく今後は再生治療などがこの分野を席巻していくのであろう。
一般的にループス腎炎はSLE患者の30−50%に発症し、ループス腎炎患者の10−30%が末期腎不全に至るとされている。もちろん、SLEの重症度、遺伝性の要因、社会的な要因、薬剤のコンプライアンス、最初の治療の反応の有無などが大きく関連している(Lupus2010:review)。
ループス腎炎に伴う末期腎不全で一番懸念されるのは、患者の罹患年齢も低いことも一因としてあるが、premature death(早すぎる死亡)である。
NDT2012の報告では、他の疾患に伴う末期腎不全患者に比べて26倍もpremature deathのリスクが高いというから驚きである。
ループス腎炎のpremature deathの主な原因は感染とSLEのflareである。CKJ 2018の論文では、AKIの存在、治療開始後1年での寛解不良、治療に対するコンプライアンス不良はpremature deathの単独のリスクになると報告している。
その中で腎移植が、どんな原因にかかわらずESRD患者の生存率を改善させたという報告がされている。では、ループス腎炎の患者さんに対してはどうなのだろうか?というのを見たのがAnnals of internal medicine 2019である。
今回は、少しその内容を見てみる。
研究は米国の大規模データを用いて、1995年1月1日〜2015年12月31日までの期間の患者で行われた。20974人の患者がいて、9659人(46%)が移植の待機リストになり、そのうちの5738人(59%)が腎移植を施行された。
Primary endpointは全死亡率。
Secondary endpointは死亡原因に設定している。
結果:
・全死亡率は移植を受けた人で973人、移植を受けていない人で1697人であった。下の図を見てもらえばわかるように、移植を受けていない人に比べ受けた人のHazard ratioは0.3と低かった。
![]() |
| Annals 2019より引用 |
・死亡原因では移植を受けることで心血管死が74%低下し、冠動脈疾患(70%)、脳卒中(61%)も低下した。先に述べたループス腎炎の死因のtopの感染も移植を受けた人では減少していた(下図)。
![]() |
| Annals 2019より引用 |
移植がここまで聞くととてもいいなと思ってしまう。
ただ、懸念されるのは他の報告でもあるように、
・他の原因による末期腎不全で移植を受けた患者に比べて、SLEではallograft failureが多いのではないか?
・ループス腎炎末期腎不全の移植患者では、免疫抑制療法をしっかり行うために感染の発症率は上がっているのではないか?
などもある。
日本では、移植治療はまだまだ少ないがSLE患者のpremature deathはしっかりと防ぐ必要がある。移植の治療はとても希望のある分野であるし、おそらく今後は再生治療などがこの分野を席巻していくのであろう。
2019/02/16
AKIにおける透析のタイミング
以前にもこの話題に関しては、腎臓内科が必要とされる時で触れたが少しアップデートした話題もあるので、触れたいなと思う。
AKIは様々な原因で生じる。そして、原因検査を行いながら原因に応じた治療を行なっていく。
例えば、嘔吐・下痢を繰り返してAKIになった症例であれば、バイタルを測定し適切な補液を行えば改善する可能性が高い。
ただ、適切な治療を行なっているにも関わらずAKIの重症度が高かったり、AKI罹患期間が長かったりした場合には透析を必要となる場合が多い。
AKIに対する薬物治療は、様々なものが試されているが有用なものは出ていない。
今も、敗血症AKIに対してAlkaline phosphataseやL-カルニチン、入院中のAKIに対してビタミンD、尿毒素除去、ペントキシフィリンなどがon goingで行われている。
透析時に考えるのは、いつ透析するの?何の透析をすればいいの?かと思う。
☆いつ透析?
これに関しては、現時点では早期にやることの有用性は示されておらず緊急透析のindicationに入る前の段階で透析を行うことが重要になる。
−例えば、適切な薬物治療を行なっているのに、血清K濃度が6mEq/Lを超えてきたり、著明なアシデミアが進行したり(pH<7.1)、体液過剰が進行し呼吸状態が悪化する場合などがいい例である。
これに関しての裏付けのtrialは前回も記載したAKIKI trialとELAIN trialがあり、下記の表と前回の話を確認してもらいたい。
ELAINで早期群の有用性が示されたが、単施設であり目立たないバイアスなどが、過剰に早期群の有用性を示しているのではないかと言われている。
JAMA2016の早期透析は健康?という論文は面白いので添付しておく。
2018年にNEJMに敗血症によるAKIに対しての早期透析の有用性についての検証もされている。
この論文ではフランスの29施設のICUの488人の早期敗血症に重度AKI(RIFLE分類でFailureに入っているもの)を伴う患者に対して行われ、早期群にはAKI後12時間以内、晩期群はAKI後48時間以上して透析を行なったものである。
晩期群では有意差はなかったが、早期群に比べ高カリウム血症の発生があったり、代謝異常が起きたりなどはあったが、90日死亡率に有意差は認めなかった。
この話題に関しては、現在STARRT-AKI(NCT2568722)も行われており、今後の検証が待たれる。
☆何のmodality?
これに関しては、腹膜透析は今回は割愛し、IHD(intermittent hemodialysis)、CRRT(continuous renal replacement therapy)、SLED(sustained low-efficiency hemodialysis)に関してどれがいだろうか?ということに関して話していく。
これは現時点では、どれが有意というものは示されてはいなく、その施設の経験や慣れているものを用いるのがいいのではとされている。
この分野はおそらく今後も調べられていく分野であり、我々も常にアップデートしていく必要性があるなと感じた。
AKIは様々な原因で生じる。そして、原因検査を行いながら原因に応じた治療を行なっていく。
例えば、嘔吐・下痢を繰り返してAKIになった症例であれば、バイタルを測定し適切な補液を行えば改善する可能性が高い。
ただ、適切な治療を行なっているにも関わらずAKIの重症度が高かったり、AKI罹患期間が長かったりした場合には透析を必要となる場合が多い。
AKIに対する薬物治療は、様々なものが試されているが有用なものは出ていない。
今も、敗血症AKIに対してAlkaline phosphataseやL-カルニチン、入院中のAKIに対してビタミンD、尿毒素除去、ペントキシフィリンなどがon goingで行われている。
透析時に考えるのは、いつ透析するの?何の透析をすればいいの?かと思う。
☆いつ透析?
これに関しては、現時点では早期にやることの有用性は示されておらず緊急透析のindicationに入る前の段階で透析を行うことが重要になる。
−例えば、適切な薬物治療を行なっているのに、血清K濃度が6mEq/Lを超えてきたり、著明なアシデミアが進行したり(pH<7.1)、体液過剰が進行し呼吸状態が悪化する場合などがいい例である。
これに関しての裏付けのtrialは前回も記載したAKIKI trialとELAIN trialがあり、下記の表と前回の話を確認してもらいたい。
ELAINで早期群の有用性が示されたが、単施設であり目立たないバイアスなどが、過剰に早期群の有用性を示しているのではないかと言われている。
JAMA2016の早期透析は健康?という論文は面白いので添付しておく。
2018年にNEJMに敗血症によるAKIに対しての早期透析の有用性についての検証もされている。
この論文ではフランスの29施設のICUの488人の早期敗血症に重度AKI(RIFLE分類でFailureに入っているもの)を伴う患者に対して行われ、早期群にはAKI後12時間以内、晩期群はAKI後48時間以上して透析を行なったものである。
晩期群では有意差はなかったが、早期群に比べ高カリウム血症の発生があったり、代謝異常が起きたりなどはあったが、90日死亡率に有意差は認めなかった。
この話題に関しては、現在STARRT-AKI(NCT2568722)も行われており、今後の検証が待たれる。
☆何のmodality?
これに関しては、腹膜透析は今回は割愛し、IHD(intermittent hemodialysis)、CRRT(continuous renal replacement therapy)、SLED(sustained low-efficiency hemodialysis)に関してどれがいだろうか?ということに関して話していく。
これは現時点では、どれが有意というものは示されてはいなく、その施設の経験や慣れているものを用いるのがいいのではとされている。
この分野はおそらく今後も調べられていく分野であり、我々も常にアップデートしていく必要性があるなと感じた。
2019/02/14
ナトリウムで語る低ナトリウム血症
ST合剤といえば、Tのほう(トリメトプリム)にENaC阻害作用があって、スピロノラクトンやトリアムテレンなどのK保持性利尿薬と同様に高カリウム血症を起こすことはよく知られている(こちらも参照)。
しかし、同じように低ナトリウム血症も起こすことは、正直初めて知った。AJKDのティーチング・ケース(AJKD 2013 62 1188)に取り上げられたニューモシスチス肺炎に対する高用量ST(トリメトプリムとして15mg/kg/d)で発症した症例では、SIADHとして水分制限とトルバプタンで治療しても体液喪失になり、塩分負荷で改善していた。
そして、彼らが参考文献に挙げていた2つの論文はいずれも日本内科学会の英字誌、Internal Medicineからだった(図は同誌ウェブサイトより)!
一つ目(Intern Med 1995 34 96)はホジキン病の化学療法後に発症したニューモシスチス肺炎で12g/d(トリメトプリムとして960mg/d)のSTを用いて120未満mEq/lの低ナトリウム血症をきたし、380mmol/dのナトリウム(22g/dの食塩)を点滴し改善を認めている。STを予防量にして軽快した。
二つ目(Intern Med 2003 42 665)はニューモシスチス予防や尿路感染症などのため比較的少ない用量でSTを処方された53人について電解質異常(135mEq/l未満の低Na血症、5mEq/l以上の高K血症)の頻度を調べたもので、トリメトプリムとして平均68mg/d、82mg/d、315mg/dの三群にわけるとそれぞれ9、22、46%に異常がみられた。
どうして起きるのか直接には証明されていないが、AJKDの例も一つ目の日本の例もナトリウムの喪失が機序なことを十分に示唆しており、簡単に言えば「ENaCをおさえるからナトリウムが抜ける」ということらしい。これで、利尿薬について
サイアザイド 低ナトリウム血症
(SIADHないしPGトランスポーターの異常)
(こちらも参照)
フロセミド 高ナトリウム血症
(浸透圧勾配をなくし低張尿がでて水が抜ける)
バプタン 高ナトリウム血症
(集合管の水再吸収ができず水が抜ける)
ST合剤 低ナトリウム血症
(ENaCをおさえてナトリウムが抜ける)
という4通りのナトリウムへの影響がリストできるようになった。
では、やはりENaCに効くトリアムテレンや(わが国にはないが)アミロライドなども同様に低ナトリウム血症になるのだろうか?トリテレン®の添付文書には副作用に食欲不振などしかないが、「減塩療法を受けている患者」は低ナトリウム血症を起こしうるので慎重投与となっている。
筆者の受けたトレーニングでは、低ナトリウム血症は水の量とADHの効きぐあいで説明されてきた。なので、「ナトリウムが抜ける低ナトリウム血症」というトピックは苦手というか避けてきた感もある(クリアカットに説明できない感じがするのは、私だけだろうか・・)。
しかし実際にはCSW(脳疾患による塩類喪失)、RSW(腎疾患による塩類喪失)、副腎不全、MRHE(高齢者に起こる鉱質コルチコイド反応性の低ナトリウム血症)などについてもよく学び経験を積まなければならないと、じっさいにST合剤による低ナトリウム血症を経験して痛感した。
しかし、同じように低ナトリウム血症も起こすことは、正直初めて知った。AJKDのティーチング・ケース(AJKD 2013 62 1188)に取り上げられたニューモシスチス肺炎に対する高用量ST(トリメトプリムとして15mg/kg/d)で発症した症例では、SIADHとして水分制限とトルバプタンで治療しても体液喪失になり、塩分負荷で改善していた。
そして、彼らが参考文献に挙げていた2つの論文はいずれも日本内科学会の英字誌、Internal Medicineからだった(図は同誌ウェブサイトより)!
一つ目(Intern Med 1995 34 96)はホジキン病の化学療法後に発症したニューモシスチス肺炎で12g/d(トリメトプリムとして960mg/d)のSTを用いて120未満mEq/lの低ナトリウム血症をきたし、380mmol/dのナトリウム(22g/dの食塩)を点滴し改善を認めている。STを予防量にして軽快した。
二つ目(Intern Med 2003 42 665)はニューモシスチス予防や尿路感染症などのため比較的少ない用量でSTを処方された53人について電解質異常(135mEq/l未満の低Na血症、5mEq/l以上の高K血症)の頻度を調べたもので、トリメトプリムとして平均68mg/d、82mg/d、315mg/dの三群にわけるとそれぞれ9、22、46%に異常がみられた。
どうして起きるのか直接には証明されていないが、AJKDの例も一つ目の日本の例もナトリウムの喪失が機序なことを十分に示唆しており、簡単に言えば「ENaCをおさえるからナトリウムが抜ける」ということらしい。これで、利尿薬について
サイアザイド 低ナトリウム血症
(SIADHないしPGトランスポーターの異常)
(こちらも参照)
フロセミド 高ナトリウム血症
(浸透圧勾配をなくし低張尿がでて水が抜ける)
バプタン 高ナトリウム血症
(集合管の水再吸収ができず水が抜ける)
ST合剤 低ナトリウム血症
(ENaCをおさえてナトリウムが抜ける)
という4通りのナトリウムへの影響がリストできるようになった。
では、やはりENaCに効くトリアムテレンや(わが国にはないが)アミロライドなども同様に低ナトリウム血症になるのだろうか?トリテレン®の添付文書には副作用に食欲不振などしかないが、「減塩療法を受けている患者」は低ナトリウム血症を起こしうるので慎重投与となっている。
筆者の受けたトレーニングでは、低ナトリウム血症は水の量とADHの効きぐあいで説明されてきた。なので、「ナトリウムが抜ける低ナトリウム血症」というトピックは苦手というか避けてきた感もある(クリアカットに説明できない感じがするのは、私だけだろうか・・)。
しかし実際にはCSW(脳疾患による塩類喪失)、RSW(腎疾患による塩類喪失)、副腎不全、MRHE(高齢者に起こる鉱質コルチコイド反応性の低ナトリウム血症)などについてもよく学び経験を積まなければならないと、じっさいにST合剤による低ナトリウム血症を経験して痛感した。
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