2024/08/01

タクロリムスとサイアザイド

  移植後に用いられるタクロリムスは、遠位尿細管のNCC活性を亢進するため、遠位ネフロンに届くNa+が減り、Na+の再吸収と交換で排泄されるK+とH+が減り、高カリウム血症と代謝性アシドーシス(4型RTA)を起こす。

 この仕組みが解明されたのは2010年代で、筆者は当時(それならサイアザイドを使えばよいのでは?)と思った。ただし、当時はまだ、「移植後患者をdryにしたくない」というためらいや、「血管収縮作用に拮抗するCCBを使うべきだ」といった意見もあった。

 しかし、2017年にアムロジピンに対するクロルサリドンの非劣勢を示すランダム化クロスオーバー試験(AJKD 2017 69 796、下図)が行われ、現在では移植後患者にサイアザイドを少量足して血圧とカリウム値をコントロールするtrickは一般的なものになっている。

 「病態理解から診療の変化につながるまで、10年はかかる」とは、よく言ったものである。ただし、同論文は移植後平均2年、平均eGFRは約60ml/min/1.73m2であった。移植直後や、DGF後で腎機能が十分に回復していない場合などは、ループ利尿薬のほうが効果的かもしれない。

 優秀なカリウム吸着薬がある昨今、医療者はついついそれに甘えがちであるが、利尿薬のほかにもSGLT2阻害薬、インスリン、重曹、(体液量が少なければ鉱質コルチコイド)など、さまざまなtricksがある。病態生理に合わせて使いたい。※ただし、移植後患者についてはSGLT2阻害薬のデータは少なく、重曹は腎予後や拒絶予防に否定的なRCTが出た(Lancet 2023 401 557)。