先日はgrand roundで小児腎の先生がCAKUT(congenital abnormality of kidney and urinary tract)の講義をしてくれた。同じ腎臓なのに扱っている病気が全く違うのに驚いた。治療も違う。CAKUTは小児ESRDの多くを占め、腎移植患者の約30%がCAKUTだ(The North American Pediatric Renal Trials and Collaborative Studies、NAPRTCSによる)。
CAKUTは①"plasias(hypoplasia、dysplasiaなど形成の異常)"、②cysts、③agenesis/ectopy、④"plumbing(VUR、尿路閉塞など尿路の異常)"などが主な疾患だ。診断への手がかりは、出生前の超音波検査(羊水過少や腎低形成)、小児の高血圧、別の原因(たとえば外傷など)でCTを撮ったらたまたま見つかった、尿路感染症、低身長、長く続く夜尿症などだ。
①に関しては、腎低形成・異形成を単独で見られることは稀で、CHARGE症候群(coloboma、heart defects、atresia of nasal choanae、retardation、genital/urinary abnormalities、ear abnormalities/deafnessの略)など、遺伝疾患の一部として見られる。ちなみにCHARGE症候群はChromodomain-helicase-DNA-binding protein 7(CHD7)の異常と関係しているらしい。
②に関しては、なんといっても小児なのでARPKDがメインだ。PKHD1遺伝子の異常で無数のmicrocystsが出来て、腎臓が異常に大きくなり、それ自体が肺を押して呼吸不全を起こすほどだ。それに加えて羊水過少による肺低形成もおこる。他にもMCDK(multicystic dysplastic kidney)があって、これは両側性だとincompatible with lifeなので片側の例しかみない。病側の腎はinvolute(消退)して無くなってしまうこともある。
③については、先生がフェロー時代にNICU医から「出生前超音波で腎のagenesisと診断された児がおしっこしているんだけど、そんなことあるの?」というコールを受けたという笑える話を紹介された。つまり腎があるべき場所にないこともある(ectopy)ということだ。pancake kidney、pelvic kidney、horseshoe kidneyなど色んなところに腎臓ができることがある。
④については、今までVURしか知らなかったが、たとえば男児に見られるposterior urethral valvesなどは割と多いから覚えておかねば。診断をつけるのは簡単(VCUG)だが、まず疑わなければならない。治療はendoscopic urethral ablationだが、これは決壊寸前のダムに穴をあけるようなもので危険そうなので、まずはvesicostomyやpyelostomyで膀胱圧や尿管圧を逃がしてから行うことが多いようだ。他にもUPJO(uretero-pelvic junction obstruction)、UVJO(uretero-vesical junction obstruction)などの尿路閉塞がある。
聴きながら、ほとんどが先天性疾患、生まれてくることすら大変で、生まれてから一日、一週間、一か月、一歳を迎えることすら難しい子供たち、そして大人になったら自分の手を離れて内科に行ってしまうという小児科の運命に思いをはせた。私も先月は尿路異常による腎疾患で移植を受けた大人の患者さんをたくさん診たので、少し身近に感じられた。