2011/09/16

RAVE

 同じ薬でも、科によって違う病気に用いられて、その薬がもつイメージが違う。たとえばrituximabはその良い例だ。hematology/oncologyにいた頃は、なんとなくCHOPのオマケ(R-CHOP)のように軽く使っていた。もちろんSIRS様の副作用を起こした例も経験したのでbenignな薬でないことは知っているが、他のheavyな化学療法に比べると軽い感じがした。リウマチ内科にいた頃は、使う機会こそなかったが、いろんな病気に用いられ始めておりimmunomodulatorsの一つくらいに感じられた。

 それが、腎臓内科に来たらみんなのこの薬に対する見方がチョット違うのに気づいた。こないだ「ANCA-associated vasculitisにrituximabとcyclophosphamideとどちらがいいか?」という問いに対する二つの論文(NEJM 2010, 363, 211とNEJM 2010, 363, 221)がgrand roundで紹介された。前者はANCA-associated renal vasculitisを対象にしたもので、12か月の時点で両者にremission、severe adverse effectの率に差がなかった(not superior)。

 後者(RAVE study)はANCA-associated vasculitis(Wegener or microscopic polyangiitis)を対象にしたもので、6か月の時点でrituximab群のほうがprimary endpoint(BVAS/WGスコア)に達する割合が高く(non-inferiorityを満たし)、再発患者のremissionについてはcyclophosphamideより優れていた。severe adverse effectの率には差がなかった。

 先生方は、ritaximabには否定的な意見であった。たしかに後者の論文は明らかにフォロー期間が短くこれだけでは何も言えない。前者もnot superiorならあえて高額なrituximabを選択することはないということになる。fertilityが問題になる場合は別だが、ANCA-associated vasculitisはSLEと違いたいてい50代から発症するのであまり問題にならない。私は「どっちも一緒に使ってみたらどうかな?」と思ったが。