補体は、免疫の実働部隊。抗体にしたって、C1qを通じて古典経路を活性化している。腎移植後のAMR(antibody-mediated rejection、免疫拒絶反応)も然りで、補体活性化の跡がC4dとしてperitubular capillaryに残る。
補体を活性化するのは古典的回路だけでなく、代替回路、レクチン回路もある。それで、レシチン回路が移植腎の生存率にどのような影響を持っているかが調べられ始めた。一般にレクチンの発現が少ないと感染症リスクが上がる。では腎グラフトのサバイバルはどうか。
二つの大きな研究論文がでて、結果はバラバラだ。一つは(拒絶リスクが腎単独より高い)膵腎同時移植におけるオランダの研究(JASN 2007 18 2416)で、ここではレクチン(MBL2)レベルが高い群で膵腎どちらの成績も悪かった。
もう一つは今年にだされた腎単独移植におけるスウェーデンの研究(KI 2013 83 264)で、ここでは全般にMBL2レベルが低いほど腎の成績が悪かった。しかし生体腎はMBL2レベルが高いほど成績が悪く、HLA非感作のdeceased-donor腎群では差がなかった。
BML2は肝臓で作られ、多量体(oligomer)になって補体反応を活性化する。多量体の程度によって効果に差があり、high-order oligomerのほうがlow-orderより効果がある(EJCI 2010 40 865、日本の研究)。
正直、「とりあえず注目してみました」というレベルなのでレクチン回路が移植腎に与える影響と病態メカニズムについて理解するにはもうしばらくかかりそうだ。Graft lossの多くがとくに移植後1-2ヶ月に集中していることは、なにか意味しているかもしれない。