T-Chol 173mg/dl
Ca 9.2mg/dl
IP 3.9mg/dl
ALP 89U/l
25(OH)VitD 28ng/ml
1,25(OH)2VitD 30pg/ml
Intact PTH 112pg/ml
Intact FGF23 133pg/ml
Q:IMPROVE-CKDスタディを踏まえて、どうしますか?
IMPROVE-CKDスタディ(doi:10.1681/ASN.2020040411)といえば、CKD3B・4期の278人を、炭酸ランタン群(500mg1日3回から開始、リン値が4.9mg/dlを越えたら増量)とプラセボ群にランダム化した多国籍(オーストラリア・マレーシア・ニュージーランド)スタディだ。
コレステロールを「下げれば下げるほど」心血管系イベントを抑制できることを示したIMPROVE-ITスタディ(NEJM 2015 372 2387)にあやかったのか、96ヶ月フォローしてのプライマリ・エンドポイントは、頚動脈‐大腿動脈PMV。石灰化スコア・PTH・FGF23なども調べられた。
しかし結果は・・
そもそも「リンが下がらなかった」!グラフを見てわかるように、介入群でリンは低めなのであるが、すべてのデータをあわせてもその差は0.28mg/dlにすぎなかった(信頼区間0.03~0.4mg/dl、p=0.03)。
(前掲論文より) |
これでは、「リンをさげる→石灰化を抑制する→PMV・石灰化スコア・FGF23などの数値が改善する」のドミノ倒しが始まらない。それでか、PMV・石灰化スコア・FGF23などにも有意差は見られなかった(石灰化スコアは、介入群のほうが治療前から高かったのだが)。
なぜリンが下がらなかったのか?アドヒアランスは74%の患者で80%以上と悪くなかったが、介入群の93.5%が炭酸ランタン500mg3錠/日であり、用量を増やす閾値(前述の4.9mg/dl)を越えなかったようだ。
もしこの閾値を低くして薬を増やしておけば、下図のようにもっとクッキリしたリン値の差がでたのかもしれない。しかし、CKD3B・4期で3台mg/dlの患者に、炭酸ランタン500mg6錠/日を処方しようと思う方は少ないだろう。 消化器系副作用・薬の量・コストなどが馬鹿にならないからだ。
クッキリとした差(模式図) |
それもあってか、JASN同月号のエディトリアルは題名からして「吸着薬の失敗(Binder Blunder)」と手厳しい(doi:10.1681/ASN.202081182)。しかし理論上は、リン値をクッキリと(2台mg/dlとかのレベルまで)さげると石灰化をキッチリと抑制できる(できない)かが証明されておらず、ドミノ倒し仮説は完全には否定できない。
だからこそ、NHE3阻害薬・NPT2a阻害薬など新規リン吸着薬が数々治験されている(こちらも参照)のだし、その文脈でFGF23とそのモノクローナル抗体が注目されてもいる(こちらも参照)。ドミノ倒しの研究は、まだまだ続くだろう。
(引用元はこちら) |