最下段は、追加治療や第二選択 |
今回は、それを尊重しながら、以下の2点を考察したい。
1. 点滴シクロホスファミドの量
「0.75g/m2」と聴くと、ループス腎炎のNIHレジメンを思い出す読者も多いだろう(Ann Intern Med 1996 125 549、こちらも参照)。もちろんANCAでこのレジメンを試したスタディはある(Arthritis Rheum 1998 41 1835)し、2012年のKDIGOガイドラインも以下のようになっている。
- 0.75g/m2、3-4週ごと
- 初回は0.5g/m2に減量(60歳以上、GFR 20ml/min/1.73m2未満も)
- 投与2週後の白血球数が3000/mm3以上になるよう用量調節
しかし、RAVEスタディ、RITUXVASスタディなどの代表的なスタディはいずれも、CYCLOPSスタディで用いられたレジメン(Ann Intern Med 2009 150 670、経口CYとの毒性・効果比較が目的)を使っている:
- 15 mg/kg、2週あけて3回
- そのあと3週あけて寛解後3ヶ月まで
- 年齢・腎機能で減量(下図)
出典はこちら |
NIHレジメンは回数が少なくて済むが、体表面積の算出が手間だ。また日本のはKDIGOの「0.5g/m2に減」を半分にした、「0.25-0.75g/m2」と減量幅が大きい。
医師の裁量と経験が反映しやすくなっているともいえるが、その根拠は不詳だ。日本人患者に欧米量のクスリを投与すると効きすぎることは確かに多く(フロセミドなど)、経験的な「1/2の魔法」なのかもしれない。
2. リツキシマブによる維持療法
ANCA関連血管炎に対するリツキシマブの維持療法を延長したMAINRITSAN3スタディの結果が、きょう米国内科学会誌に発表された(doi:10.7326/M19-3827)。フランスの39施設が参加したものだ。
対象は、ANCAの種類(PR3-ANCA:MPO-ANCAは約7:3)、初期治療の種類(シクロフォスファミドが6割、リツキシマブ4割、1例がメソトレキセート)を問わず、リツキシマブ維持療法(6ヶ月ごと0.5gを4回)を受けた97例。約半数がPSL 5mg/dを処方されていた。
彼らをランダム化し、介入群は同様のリスキシマブ維持療法(4回、18ヶ月)を延長した。なお、介入群もプラセボ群もmPSL100mg・アセトアミノフェン1000mg・クロルフェニラミン5mgの前投薬をうけた。すると、延長28ヶ月後の無再発率は以下のようであった。
有害事象の総報告数に有意差はなかったが、敗血症性ショックの発症は介入群にのみ2件あった(肺炎の発症は介入群で1件と、プラセボ群の4件より少なかった)。延長を正当化できるか、リスクと利益は考えなければならない。
またスタディ患者は若く(平均63歳)、寛解後で腎機能も良好(eGFRは約60ml/min/1.73m2)、RTXの忍容性も高かった。やはり、日本でよく診る症例には、なんとなく「ステロイド±アザチオプリン(ミゾリビン)」が安全なようにも思える。
しかし、同じ時代に「それで本当にいいんですか?」という文脈で行動し発表している人たちがいるのもまた確かである。その流れのなかにアバコパンがあり(こちらも参照)、リツキシマブがある(アザチオプリンと比較したスタディは、NEJM 2014 371 1771)。
米国内科学会誌は「標準的なケアがまた変わる(again, changing the standard of care)」と題するエディトリアルを載せているが、こうした流れが日本の標準的なケアに(どんな魔法をかけて)波及するか、注目したい。
公開が待たれるディズニー映画、『1/2の魔法』 (出典はこちら) |
2. リツキシマブによる維持療法
ANCA関連血管炎に対するリツキシマブの維持療法を延長したMAINRITSAN3スタディの結果が、きょう米国内科学会誌に発表された(doi:10.7326/M19-3827)。フランスの39施設が参加したものだ。
対象は、ANCAの種類(PR3-ANCA:MPO-ANCAは約7:3)、初期治療の種類(シクロフォスファミドが6割、リツキシマブ4割、1例がメソトレキセート)を問わず、リツキシマブ維持療法(6ヶ月ごと0.5gを4回)を受けた97例。約半数がPSL 5mg/dを処方されていた。
彼らをランダム化し、介入群は同様のリスキシマブ維持療法(4回、18ヶ月)を延長した。なお、介入群もプラセボ群もmPSL100mg・アセトアミノフェン1000mg・クロルフェニラミン5mgの前投薬をうけた。すると、延長28ヶ月後の無再発率は以下のようであった。
有害事象の総報告数に有意差はなかったが、敗血症性ショックの発症は介入群にのみ2件あった(肺炎の発症は介入群で1件と、プラセボ群の4件より少なかった)。延長を正当化できるか、リスクと利益は考えなければならない。
またスタディ患者は若く(平均63歳)、寛解後で腎機能も良好(eGFRは約60ml/min/1.73m2)、RTXの忍容性も高かった。やはり、日本でよく診る症例には、なんとなく「ステロイド±アザチオプリン(ミゾリビン)」が安全なようにも思える。
しかし、同じ時代に「それで本当にいいんですか?」という文脈で行動し発表している人たちがいるのもまた確かである。その流れのなかにアバコパンがあり(こちらも参照)、リツキシマブがある(アザチオプリンと比較したスタディは、NEJM 2014 371 1771)。
米国内科学会誌は「標準的なケアがまた変わる(again, changing the standard of care)」と題するエディトリアルを載せているが、こうした流れが日本の標準的なケアに(どんな魔法をかけて)波及するか、注目したい。