(NEJMのツイートより) |
介入はRTXが1000mg点滴を14日空けて2回。6ヵ月後に蛋白尿が25%以上減少したが完全寛解(下記参照)していなかった場合には、もう1クールだけ追加できた。シクロスポリンはトラフ125-175ng/mlを目指し、Cr 30%以上の上昇がみられた場合はプロトコルに従い減量した(それでもCr値が戻らなければ中止となった)。
なお、RTXがmPSL100mgの前投薬を受けたものの、両群ともステロイドはレジメンに含まれなかった。
結果は、完全寛解(蛋白尿0.3グラム/日以下+アルブミン3.5g/dl以上)と部分寛解(蛋白尿が50%以上減少して0.3-3.5グラム/日になった)が24ヶ月経過時にRTX群で60%と、シクロスポリン群の20%よりも有意差に多かった(非劣性を前提に組んだスタディであったが、より優れている結果になった)。
副作用報告の割合は両群とも70-80%であったが、Grade 3以上ではRTX群で17%と、35%のシクロスポリン群より有意に少なかった。RTX群の主な副作用は点滴時のアレルギー反応と皮膚のかゆみなどで、シクロスポリンの主な副作用は消化器症状と腎機能低下であった。
なお、RTXの販売会社が薬を無償供与していること、オープン・レーベルなこと(剤形が違うので無理もない)はさておき、RTX1回量は多く(ANCA関連腎炎などは375mg/体表面積m2)、血球減少や劇症肝炎などには注意が必要だ。またコントロール群であるシクロスポリンの中止基準は厳しめかもしれない。また、治験患者は比較的若く、80歳以上は除外されていた。
それでも、「2回注射したらネフローゼが治る」なんて、夢みたいだ。わが国のリツキシマブ添付文書には「成人期に発症したネフローゼ症候群の患者に対する有効性及び安全性は確立していない」とあるが、書き換えられる日もそう遠くないと期待される。
[2019年7月24日追記]昨日、FDAがリツキシマブのバイオシミラー、rituximab-pvvr(RUXIENCE®)を承認した。同国のバイオシミラーとしては、2018年11月に認可されたrituximab-abbs(TRUXIMA®)以来2件目になる。ただし、1件目は腫瘍領域のみの適応申請であったのが、2件目はANCA関連血管炎の適応も通った。
じつは、欧州のFDAにあたるEMAは、すでに6件のリツキシマブ・バイオシミラーを認可している。いっぽう米国はバイオシミラーの認可に保守的で、市場にでているバイオシミラーは数えるほどしかない。オリジナル企業の利権を守っているとも、創薬インセンティブを削がぬよう配慮しているとも言われる。下図によれば、日本のほうが多いほどだ。
(出典はこちら) |
そんなわけで、日本にもバイオシミラーは1件認可されており(リツキシマブBS®)、薬価は500mgで約12万円(オリジナルは約15万円)。前述のrituximab-abbsが治験中で、これが通れば2件目になるかもしれない(今回FDAを通ったrituximab-pvvrのほうは、試みられたようだが予定は立っていない)。
ただし、少なくとも1件目は腫瘍領域のみの適応である。バイオシミラーが独自の適応を取得するとは考えにくいが、すくなくともオリジナルが持っている適応までは拡大しうる。また、オリジナルの治験がすすみ膜性腎症などにまで拡大すれば、バイオシミラーまで波及するかもしれない。今後の展開に注目したい。