Disney Worldというのは果てしなく広く、ランドマークであろうシンデレラ城など奥のほうで全く見えない。日本にあるもので比較できないが、アメリカのNational Parkくらいでかい。そのなかにEpcot、Hollywood Studio、Animal Kingdom、Magical Kingdomという四つのエリアがあるらしい。それと別に、学会の会場となる超巨大なホテルがある。以前にも乗ったことのあるHyundai Sonataをかっ飛ばし、駐車場に乗り付けいざ集合場所へ。
今回は実に88人の内科・小児科研修医が招かれたらしい。ほとんどが内科で、ほとんどがすでに腎臓内科に進むと決めているが、この招待の本来の趣旨は「まだ腎臓内科に進むか迷っている人を呼ぶ」ことらしい。それなら一年目のときに教えてほしかった。ここに来れば最新の知見が学べ、第一人者の先生の話を聞け、将来行きたいプログラムややりたいことなども早めに見つかったかもしれない。とはいえうちの病院で一年目に学会に行かせてもらうのはほぼ不可能だが。
さっそく講義を聞く。朝の一つ目は、各種糸球体腎炎について。IgA腎症では、扁桃や骨髄でB細胞から産生されるgalactose-deficient IgAと、その結果おこるmesangeal proliferationが発症に関与しているらしい。膜性腎症では、足細胞表面にあるPLA2Rに対する自己抗体IgG4が発症に関与しているらしい。Ponticelli regimen(ステロイドパルスとサイトキサン)が主流だが各種免疫抑制剤、それにリツキサンも試されている。FSGSについては、HIV-associated collapsing nephropathyの発症にPYH9遺伝子異常が関与しており、この遺伝子異常はアフリカではじまり以後世界中に広まっていったという考えが面白かった。
朝の二つ目は、慢性腎不全(CKD)と心血管系の疾患の関係について。透析患者の死因の約1/3は心疾患で、そのうち約2/3は不整脈による突然死だという。血中Troponin T濃度、低カリウム濃度の透析液、自律神経異常、睡眠時無呼吸などはリスク因子だ。いまのところ患者さんにbenefitとなる治療はみつかっていない。動脈の硬さの指標に、pulsatility index(脈圧/MAP)、PMV(pulse wave velocity)、AIX(augmentation index)などがある。血圧コントロールをしてもこれらの指標が好転しなければ心血管系イベントは減らない。CKDの領域は「X、Y、Zがmortalityに相関している」という話ばかりで、「じゃあどうすればよいか」という話は数年先なのだろうか。
午後の一つ目は、FGF-23についての講演を聞いていたが面白くないのと本で調べればよいと思ったので、途中から尿路結石についての講演に変えた。同じ枠に3つの講演が並列しているのだ。結石の話では、尿中にカルシウムを多く排泄している人は必然的に骨密度が低いという話がでて、cinacalcet(副甲状腺細胞のCa-sensing receptorに作用しPTH産生を抑制する)は骨密度を改善しないこと、thiazideとbisphosphonateの併用は改善することなどを学んだ。
午後の二つ目は、Literature Reviewを聞いた。これは3人の演者が30分ずつ15-25の重要な論文について要点を語るというもので、講談というかしゃべくり漫才というか、演者の話術を楽しむコーナーでもあるようだった。おかげで高血圧、透析患者、腎移植についての最新の知見をすっかり学ぶことができた。なかには移植腎の予後評価に従来用いられるBanff classificationよりも、PRA(panel reactive antibody)、DSA(donor-specific antibody)、microcirculation injuryなどを取り入れた新しい分類のほうが正確という論文や、透析中の患者さんに心エコーをしたらmyocardial stunningが起こっており、これらの心筋はやがてhybernationを起こし、心機能低下や心血管系イベントにつながっていくという論文などがあった。
夕方には、ポスターを順繰り見て回るというイベントがあったが、この頃にはさすがに疲れてきた。そのあとは会場を後にしたが、今日は面接であった人たちに再会したり、友達の友達に会ったりして学会らしい人とのつながりも感じることができた。そのうちの一人でエチオピア出身でもうじき腎臓内科フェローを卒業するという人とは、一緒にご飯を食べながら少し仕事のことや将来のことなど語り為になった。午前中の講演では大きな会場で質問も一個したし、それなりに参加した一日だった。