腎機能が低下すると、①ビタミンDが活性化されずにカルシウムの吸収が低下し、②リンが尿に排泄されず、低カルシウム血症と高リン血症が起きる。活性型ビタミンDの低下、低カルシウム血症、高リン血症はいずれも③副甲状腺ホルモン(PTH)を増加させる。その結果、破骨細胞が刺激されて骨からカルシウムが流出し、血管などが石灰化する。いわゆる、CKD-MBDである。
では、腎臓を移植するとどうなるか?
①ビタミンDが活性化されるようになり、カルシウムの吸収が増加し、②リンが尿に排泄され、低リン血症が起きる。③副甲状腺ホルモンは、副甲状腺から自律的に分泌されるので、なかなか減少しない。副甲状腺ホルモンには尿中のカルシウムを再吸収する作用もあるので、①と③を合わせて移植後に高カルシウム血症がみられることがある。
頻度は15%(Transplantation 2016 100 184)、25%(Front Med 9 821884)などさまざまであるが、PTHやCaが正常化しない患者は正常化する患者に比べて生命予後・グラフト予後が不良であったという報告もある(Diagnostics 2024 14 1358)。
そのため、ビタミンD、CaSRアゴニスト、デノスマブ、副甲状腺摘出術などが試みられる。ただし、これらの介入によりPTHは下がるが、骨密度・骨折リスク・腎グラフト予後・生命予後などが改善したという報告はほとんどない。手探りである。
(出典はFront Med 9 821884) |