2018/11/23

シカゴおみやげ

 例年春と秋は学会シーズンだが、シカゴはこの時期に多数の学会誘致に成功している(もう寒いにもかかわらず・・私の留学していた夏はこんな感じだが)。本土の真ん中にあってみんなが参加しやすいのかもしれない。




 そのひとつがAHA(米国心臓協会)で、私は参加していないがこんなニュースがメールボックスに入ってきた。 

Cardiac Remodeling Following Ligation of Arteriovenous Fistula in Stable Renal Transplant Recipients: a Randomised Controlled Study. Abstract 19322

 発表は著者がインタビューを受けるくらい(リンク内にYouTube動画あり)だから、かなり注目されたのだろう。

 これは、腎移植後1年が経過し、安定したグラフト機能があって、もう透析することはないと見込まれるのなら、「保険」としてシャントを残すメリットよりも、心負荷のデメリットのほうが大きいんじゃないですか?という問いに答えるスタディだ。
 
 約30例ずつのランダム化で結紮群と非結紮群をくらべたところ、6ヵ月後に結紮群で心MRI上左室筋肉量がマイナス11g/m2と有意に減少した。左室筋肉量は心血管死の代理マーカーとして確立しており、これは相当インパクトのある数字だ。ほかにも、左房容積がさがる(心房細動になりにくい)、ANP・BNPなどの心筋ホルモン値の低下などがみられた。

 そうはいっても、移植患者さんのシャントを閉じるというのは相当覚悟のいることで、(シャント感染など他の理由がない限り)まずやらない。この発表が大きく取り上げられたのも、そのためである。

 移植業界は施設間で診療の差が大きいが、このオーストラリア発のパイロットスタディから、グラフト生着率のよい時代にあわせ移植医療がかわっていくかもしれない(下図は英エコノミスト誌2018年10月27日付のオーストラリア特集号)。