2012/11/30

Stewart Approach

 塩素イオンの害について調べていたら(Crit Care 2010 14 226)、Stewart Approachと呼ばれる酸塩基平衡の解釈方法を学ぶことができた。これは、腎臓内科が用いる古典的なHenderson-Hasselbalch(H-H)に代わる新しい解釈で、麻酔科・ICU領域で用いられている。

 原理に電離平衡のみならず、電気的中立性と質量保存の法則を取り入れるこの方法によれば、プロトン濃度の決定要因は三つ、SID(strong ion difference)、CO2分圧、弱酸濃度という。H-Hとの決定的な違いは、HCO3が酸塩基平衡のマーカーであってメカニズムではないと言い切るところにある。

 SIDは(Na + K + Mg + Ca) - (Cl + lactate)のことだ。高Cl代謝性アシドーシスというが、実際はCl濃度そのものよりもSIDが重要で、たとえCl濃度が高くてもSIDが動かなければプロトン濃度は変わらず、それはICU患者300人のデータでも確かめられた(Anesth Analg 2006 103 144)。