夜中に忙しいのは困らない。患者さんを診るのは好きだ。後輩を教えたり、看護師さんたちと昼間はあまりできない気さくな会話をするのも気晴らしになる。問診能力を鍛えることにもなる。このあいだはミルクアルカリ症候群を問診で診断したりもした。高カルシウム血症と急性腎不全が血液検査で判明し入院になった患者さんがいた。血液検査データを読むと、なぜか重炭酸イオン(HCO3-)が異様に高い。
問診しながら患者さんとその家族にカルシウムの値が高いことを伝えると「牛乳の飲みすぎは関係あるでしょうか」と尋ねられた。「たいていそれだけでは(高く)なりません、baking sodaでも飲んでいれば別ですが」と答えると、なんと飲んでいた。それも大量に、TUMS(calcium carbonate)と一緒に、胃薬として。腰痛に対し鎮痛剤(NSAIDs)を摂りすぎて胃炎を起こしていたようだ。
何十年も前によい薬がなかったころの胃炎の治療法に、クリーム・カルシウム・重曹を大量に摂るというのがあり、副作用として高カルシウム血症を起こした。これをミルクアルカリ症候群という。この治療法はもうとっくに廃れているので現在では滅多にみられない。骨粗鬆症予防でビタミンDとカルシウムを摂取することにより似たようなことが起こることはあるが。
クマさんがおしっこしないで冬眠できるのも、じん臓が一日に体液の何十倍もろ過してから不要なものを残して再吸収するのも、じん臓の替わりをしてくれる治療があるのも、すごいことです。でも一番のキセキは、こうして腎臓内科をつうじてみなさまとお会いできたこと。その感謝の気持ちをもって、日々の学びを共有できればと思います。投稿・追記など、Xアカウント(@Kiseki_jinzo)でもアナウンスしています。
2010/03/06
2010/02/13
Academia
天下のJohns Hopkins、ここはAcademiaという別の国なのだなと思う。米国医学教育発祥の地といってもよい本場では、各facultyの教育に対する熱意と、学び続ける強い情熱がちがう。それがインタビューをしたり昼のカンファレンスに参加したりして伝わってくる。特に腎臓内科はそれが満ちているのか、フェローの数は他の科に比べてとても少ないにもかかわらず毎年のようにbest teacher fellowを輩出しているらしい。私の居る病院は分院だけど、どちらの先生にも教わることができるし、診療の場が分院(市中病院)なほうが却ってcommonな病気をよく診療出来そうだ。研修医は本院のほうがtoo confidentなのに対し、分院のほうが教わり上手で話を聞く子が多いらしい。rareな病気も分院とはいえ沢山くるみたいだし、分院で診れないものは本院で補われるようになっている。二年間終わって「おれは何でも診れる、診たことある」と自信を持っていえるプログラムだとフェローやここ出身のアテンディングが太鼓判を押していたのは、きっと本当だろうという印象を持った。
2010/02/11
Thomas Jefferson
Thomas Jefferson大学は、都心にあって歴史も実績もあり、この街に4-5個ある医学部のなかでは名門の部類にはいる(ペンシルベニア大学のようにIvy leagueではないけど)。一学年あたり300人の医学生が在籍する、巨大な医学部である。ただ病院は古くてせまく、前述の特徴を合わせても、なんだか日本のわが母校をみたような既視感を味わった。
大雪のため面接はあまりテキパキとは進まなかったが、それでもキャンセルされていたら代わりの日も選べなかった(研修医にそんな余裕はない、それに飛行機代もバカにならない)ので助かった。アイオワ大学の面接に見られたような「おれたちが未来をつくる」という意気込みは感じられなかったが、「ここは名門でスゴイんだぞ」と皆が思っている感じを受けた。
プログラムディレクターは、私が他にどの病院を受けるのかをすべてリストアップさせ、さらにいまいる病院にICUベッドが何床あるかを訊ねた。症例を与えられ考えを述べさせられたりもしたが、臆せず楽しんで回答できた。彼は「知識を問うというよりも、ストレス下にどう対応するかを見ているのだ」と言っていた。その過程でEwart's signという心嚢液貯留に伴う身体所見を教えてもらった。
ルーマニア系(名字がそんな綴りだったので訊いたらそうだった)の先生と面接したけれど、この先生は教育にとても情熱のある先生で意気投合した。また、私が研修において独立の気風を重んじていることをとても評価してくれた。Yale出身でペンシルベニア大学を経て今の大学に移ったという経歴で、かつフランスと南米の病院に留学したことがある(仏、西語で診療できる)この先生とは、一緒に働いたら面白そうだなと感じた。
大雪のため面接はあまりテキパキとは進まなかったが、それでもキャンセルされていたら代わりの日も選べなかった(研修医にそんな余裕はない、それに飛行機代もバカにならない)ので助かった。アイオワ大学の面接に見られたような「おれたちが未来をつくる」という意気込みは感じられなかったが、「ここは名門でスゴイんだぞ」と皆が思っている感じを受けた。
プログラムディレクターは、私が他にどの病院を受けるのかをすべてリストアップさせ、さらにいまいる病院にICUベッドが何床あるかを訊ねた。症例を与えられ考えを述べさせられたりもしたが、臆せず楽しんで回答できた。彼は「知識を問うというよりも、ストレス下にどう対応するかを見ているのだ」と言っていた。その過程でEwart's signという心嚢液貯留に伴う身体所見を教えてもらった。
ルーマニア系(名字がそんな綴りだったので訊いたらそうだった)の先生と面接したけれど、この先生は教育にとても情熱のある先生で意気投合した。また、私が研修において独立の気風を重んじていることをとても評価してくれた。Yale出身でペンシルベニア大学を経て今の大学に移ったという経歴で、かつフランスと南米の病院に留学したことがある(仏、西語で診療できる)この先生とは、一緒に働いたら面白そうだなと感じた。
2010/02/10
アイオワ
初の面接は(大統領の予備選挙ではないが)アイオワ、二年ぶりの訪問である。レジデンシーの頃と違い、応募者・ポジション数ともに少ない(レジデンシーは1000-2000人の応募者、フェローは200人)ので病院側も振るい落とす質問を沢山せずにすむようだ。お互いの相性が合うかを確かめあったりと、勧誘の向きが強かった。
Program directorは、「ポジション数は3、応募者の中でもっともよい腎臓内科医になりそうな人上位3人を選ぶ。彼らが何をしたいかは問わない、何をしたくてもそれをサポートする環境を作る。」という大らかな発言をした。遠隔地にある巨大な病院で、研究・診療とも国内トップレベルだった。さらに場所柄、「自分以外まわりに医師が誰もいない環境でも独りでやってゆける力をつける」という気風が感じられた。
Program directorは、「ポジション数は3、応募者の中でもっともよい腎臓内科医になりそうな人上位3人を選ぶ。彼らが何をしたいかは問わない、何をしたくてもそれをサポートする環境を作る。」という大らかな発言をした。遠隔地にある巨大な病院で、研究・診療とも国内トップレベルだった。さらに場所柄、「自分以外まわりに医師が誰もいない環境でも独りでやってゆける力をつける」という気風が感じられた。
2010/01/27
master of all trades
"Jack of all trade, master of none"という言い回しがある。これは一方では「generalistは器用貧乏になりがち」という意味である。他方では「専門に偏りすぎてもいけない」という戒めでもある。今月は内分泌内科専門医がattendingであったので、糖尿病の管理や甲状腺疾患、ビタミンD欠乏症と副甲状腺機能亢進症まで、彼の専門分野については耳にタコができるほど学んだ。専門家だから聴ける高尚で深い知見は刺激的でもあった。
ただし、今月学んだこれらの専門的な診療がはたして一般医家にも受け入れられるかというとそうでもない。他の指導医(とくに総合内科医)と働いた場合には、「そんな風に診療する必要はない」と言われるかもしれない。総合内科の指導医と勉強すると何でもオールラウンドにカバーして学べるのだが、どうにも深みがない。基本的にガイドラインに沿った診療で、専門的判断は各専門科医に任せることになる。
そこで私が勉強したい道は、まずとことん何か一個専門を学んで、そこから周辺領域にも理解を深めていくやり方だ。腎臓内科はその点、周辺領域が広い(糖尿病、高血圧、心血管疾患、腎炎、移植と免疫抑制、緊急透析とcritical care、など)。ここまで医学が専門分化すると、結局master of oneで精いっぱいというのが現状だとは思うけれど、一生懸命勉強してmaster of all tradesを目指したい。
ただし、今月学んだこれらの専門的な診療がはたして一般医家にも受け入れられるかというとそうでもない。他の指導医(とくに総合内科医)と働いた場合には、「そんな風に診療する必要はない」と言われるかもしれない。総合内科の指導医と勉強すると何でもオールラウンドにカバーして学べるのだが、どうにも深みがない。基本的にガイドラインに沿った診療で、専門的判断は各専門科医に任せることになる。
そこで私が勉強したい道は、まずとことん何か一個専門を学んで、そこから周辺領域にも理解を深めていくやり方だ。腎臓内科はその点、周辺領域が広い(糖尿病、高血圧、心血管疾患、腎炎、移植と免疫抑制、緊急透析とcritical care、など)。ここまで医学が専門分化すると、結局master of oneで精いっぱいというのが現状だとは思うけれど、一生懸命勉強してmaster of all tradesを目指したい。
2008/09/29
生物系
クマが冬眠中に水分も取らずほとんど尿もせずに体液のバランスを保てるのはなぜか。冬眠中の代謝で生じる老廃物(おもに窒素)や尿はどうなるのか。腎臓内科の先生が講義をしていた。この先生は、以前にペンギンがなぜ足元まで体温をたもてるのか、という話もしていた。動脈と静脈を併走させて温かい血液と冷やされた血液が対向して流れることで、熱が循環し末梢も冷たくなりにくいそうだ。
冬眠中は脂肪をエネルギー源にして、たんぱく質が分解されて老廃物がでるのを防いでいるそうだ。また、エネルギーを消費して生じる水を水分として再利用するので、尿をほとんど作らないで済む(少し作られても膀胱でほとんど吸収される)らしい。また、アミノ酸が分解されて老廃物にならないような、リサイクル回路があるという。こういう話は面白く、食後のレクチャーでも眠くなりにくい。
[2019年10月4日追記]あれから11年、筆者共著の『腎臓診療の考具箱』にも、これを考具の一つとして紹介させていただいているので、よろしければ。
なお上述のアミノ酸(窒素化合物)のリサイクルについては、クマが冬眠前に食べるベリー類に多く含まれる、quercetin(クエルセチン)が大切だと考えられている。尿素代謝に大切なSIRT5(サーチュイン5)やCSP1といった酵素を活性化するそうだ。
さらに、補足すると・・。
近頃は、こうしたクエルセチンやサーチュイン5についての腎臓領域での研究が、よく見られる!
クエルセチンは、チロシンキナーゼ阻害薬dasatinib(ダサチニブ)と組み合わせることで老化細胞や老化物質を抑えることが期待され(senolyticsと呼ばれる)、糖尿病性腎臓病患者の皮下組織や血中から老化物質が選択的に減ったという第1相試験結果が報告されている(EBioMedicine 2019 47 446)。
またサーチュイン5は、近位尿細管で脂肪酸がβ酸化される細胞内器官を、ペルオキシソームからミトコンドリアにスイッチすることが示唆されており、サーチュイン5遺伝子ノックアウトマウスはミトコンドリアの負担が減ってAKIになりにくい(doi:10.1681/ASN.2019020163)。
これだけ真に受けると、「ベリー(写真は、クマもヒトも食べるランゴンベリー)を食べると老化しないけどAKIになりやすい?」となってしまうように、いまだ未解明の部分は多い。しかし今後も、この領域から目が離せない。
冬眠中は脂肪をエネルギー源にして、たんぱく質が分解されて老廃物がでるのを防いでいるそうだ。また、エネルギーを消費して生じる水を水分として再利用するので、尿をほとんど作らないで済む(少し作られても膀胱でほとんど吸収される)らしい。また、アミノ酸が分解されて老廃物にならないような、リサイクル回路があるという。こういう話は面白く、食後のレクチャーでも眠くなりにくい。
[2019年10月4日追記]あれから11年、筆者共著の『腎臓診療の考具箱』にも、これを考具の一つとして紹介させていただいているので、よろしければ。
なお上述のアミノ酸(窒素化合物)のリサイクルについては、クマが冬眠前に食べるベリー類に多く含まれる、quercetin(クエルセチン)が大切だと考えられている。尿素代謝に大切なSIRT5(サーチュイン5)やCSP1といった酵素を活性化するそうだ。
さらに、補足すると・・。
近頃は、こうしたクエルセチンやサーチュイン5についての腎臓領域での研究が、よく見られる!
クエルセチンは、チロシンキナーゼ阻害薬dasatinib(ダサチニブ)と組み合わせることで老化細胞や老化物質を抑えることが期待され(senolyticsと呼ばれる)、糖尿病性腎臓病患者の皮下組織や血中から老化物質が選択的に減ったという第1相試験結果が報告されている(EBioMedicine 2019 47 446)。
またサーチュイン5は、近位尿細管で脂肪酸がβ酸化される細胞内器官を、ペルオキシソームからミトコンドリアにスイッチすることが示唆されており、サーチュイン5遺伝子ノックアウトマウスはミトコンドリアの負担が減ってAKIになりにくい(doi:10.1681/ASN.2019020163)。
これだけ真に受けると、「ベリー(写真は、クマもヒトも食べるランゴンベリー)を食べると老化しないけどAKIになりやすい?」となってしまうように、いまだ未解明の部分は多い。しかし今後も、この領域から目が離せない。
2007/12/29
節目にあたり
私はこの2ヶ月間フル回転だったらしい。自分にはあたらしい科だったので、知識や経験を吸収しようと一生懸命だった。透析のことも、透析室に日参しては本にかじりつきスタッフの皆さんに聞いてまわった。透析事典という本を、100頁くらいコピーしたかもしれない。指導医の先生もねぎらってくれた。
終わるに当たり、虚脱感をあじわっている。虚脱感は、中学1年生の体育祭後におこった。中学受験のときは「受験で燃え尽きない頭脳の育成」を謳った塾に通っていたので大丈夫だったが、体育祭前の熱き練習の日々、そして本番・優勝という興奮がおわったあとにぽかんとしていたのを思い出す。
昨日は仕事納めで、夕方に職員の多く(数百人)が集まり立食の食事をとりながら歓談した。新しい職場で話す相手もいないとおもったら、透析室の皆さん、看護師さん、リハビリスタッフ、事務の方々など、共に患者さんのために良かれと思って働いた人たちがたくさんで和んだ。
「来年はどうするんですか?」「来年はあんなことをしたいですね」「来年もよろしくおねがいします」「○○病棟、○○室で待ってます」ありがたい言葉である。熱心だなどと、評価してくれる人もいる。もったいない言葉、励みになる。確かに来年もあんな新しいことやこんな楽しいことをしたい。
一方で、来年は大きな変化の年である。折角こうして新しい仲間を得たのに残念ではあるが、別れと出会いは避けられぬさだめ。前の職場の人たちとも、もう一生会わないかもしれないがきっと繋がっているに違いない。おたおたしていられない、次の目標に向っていかねば。
終わるに当たり、虚脱感をあじわっている。虚脱感は、中学1年生の体育祭後におこった。中学受験のときは「受験で燃え尽きない頭脳の育成」を謳った塾に通っていたので大丈夫だったが、体育祭前の熱き練習の日々、そして本番・優勝という興奮がおわったあとにぽかんとしていたのを思い出す。
昨日は仕事納めで、夕方に職員の多く(数百人)が集まり立食の食事をとりながら歓談した。新しい職場で話す相手もいないとおもったら、透析室の皆さん、看護師さん、リハビリスタッフ、事務の方々など、共に患者さんのために良かれと思って働いた人たちがたくさんで和んだ。
「来年はどうするんですか?」「来年はあんなことをしたいですね」「来年もよろしくおねがいします」「○○病棟、○○室で待ってます」ありがたい言葉である。熱心だなどと、評価してくれる人もいる。もったいない言葉、励みになる。確かに来年もあんな新しいことやこんな楽しいことをしたい。
一方で、来年は大きな変化の年である。折角こうして新しい仲間を得たのに残念ではあるが、別れと出会いは避けられぬさだめ。前の職場の人たちとも、もう一生会わないかもしれないがきっと繋がっているに違いない。おたおたしていられない、次の目標に向っていかねば。
登録:
投稿 (Atom)
