米国腎臓内科学会の悩みの一つ、深刻な後継者不足を解決しようと、毎年学会にはたくさんの医学生やレジデントが(発表するしないに関わらず)travel grantで招待される。それでか、今年はセッションも「盛り上がっていこう」という気持ちの伝わるものが多かった。なかでも"Nephrology Quiz and Questionnaire"は秀逸だったし、会場も満員だった。
このセッションは、master clinicianと呼ばれる先生方が4人登場し、それぞれ2症例をクイズ形式で提示しその答えを説明することで思考過程とエビデンスを聴衆と共有する。腎炎を担当したMayoのFervenza先生は大御所中の大御所だが、とても気さくで、知的なユーモアで会場を和やかな笑いに包んだ。さて、全部は書かないが、私にとって勉強になったことを紹介する。
最初の先生は、昨年の講演『電解質診療のEBM』も分かりやすかった。1例目は、低K、尿AG陽性のAG+非AG代謝性アシドーシス(+呼吸性アシドーシス)で、トルエン中毒だった(レビューはJASN 1991 1 1019)。尿AG陽性は「尿NH4+減少」だけでなく「尿アニオン(この場合hippurate)増加」もあり、尿OG(osmolar gap)が有用かもしれないと学んだ。
2例目は褥創治療に砂糖を塗布されたあと低Na血症と腎障害を起こした例。Sucrose(ショ糖)は血中に直接はいるとすぐには分解されないので、尿細管細胞にたまって腎障害が起こる。ショ糖だけでなくマニトールなどその他の浸透圧物質でも起こり、osmotic nephrosisと総称される(レビューはAJKD 2008 51 491)。浸透圧ギャップにより診断を疑う。腎生検すると、特徴的な尿細管のvacuolizationがみられる。治療は浸透圧物質を止めること。
それにしても、傷口に砂糖を塗るなんて私は知らなかった。蜂蜜を塗る例は古代からあるというが、「高浸透圧にして殺菌+砂糖で治癒促進」ということらしい(J Wound Care 2011 20 206)。なんだかべとべとしそうだが、有効で腎機能が保たれアリが寄ってこなければ、いいか。つづく。