いまの大学は、いるだけで毎週エキサイティングで新しいことが学べるから好きだ。最近は、臨床現場よりもこういったアカデミックな機会のほうが、知らないことが多く学べる。臨床は未知との遭遇というより、既存の知識と経験を活用する場所になりつつある。
どうしてそんなに毎週いろいろ学ぶことが可能なのか?それは、スタッフが多く、各人が持ち回りで質の高い発表をするからだ。面白い症例を沢山診ればよいというものではない。座って、そこから深く掘り下げる手間とひまが必要なのだ。
さて、今週はMolecular Absorbent Recirculating System(MARS)という画期的な血液浄化について学んだ。これは分子量が大きくタンパク質結合率の高い毒素を効率よく除去する目的で開発された。俗に"liver dialysis"と呼ばれているように、欧州では肝不全患者に対して移植前のbridgeに使われている。米国ではまだその目的での適応はない。
ダイアライザは分子量の大きな毒素を除くため、孔のサイズが大きい(50kDa)が、high cut-off HDのダイアライザと違ってアルブミンは移動出来ない。膜内外のgradientを無限大にするため、膜の外にはアルブミンを流す(ので、毒素は膜から出るなりアルブミンに結合してしまう)。
この原理じたいは、charcoal hemodialysisと同じだ。しかし、biocompatibilityの都合上アルブミンのほうが優れているらしい。しかしアルブミンは透析液のように湯水のようには使えないので、リサイクルするようなclosed circuitをまわす。透析膜で洗い、さらにcharcoal filter、anion exchange resinを通してアルブミンに結合した毒素を引き剥がし、また戻す仕組みだ。
あいにく発表がここまでで終わってしまったので、肝不全においてどんな老廃物が蓄積するのか、それを除去するためにどんな「肝臓透析」のモダリティがあるのか(MARS、SPAD、Prometheus system、どれも欧州生まれだ)、そしてこれらの臨床成績はどうなのか、など話は次の機会になった。しかし、ここまででも十分面白かった。MARSの臨床成績については論文をみつけた(JASN 2010 12 S75)から読んでみよう。