Renovascular conferenceという、vascular accessについて血管外科と腎臓内科が話し合う機会があった。米国では腎臓内科がfistulaを作ることはまずなく(interventional nephrologyという分野もあるにはあるが、せいぜいfistulogramやPTCAしかしないようだ)、従ってアクセスについて学ぶ機会も実はほとんどなかった。それに米国は歴史的にAV fistulaの利用率が非常に低い(Fistula First Initiativeとか言ってるがまだまだ)。
さておきカンファレンスでは、基礎疾患が多く良質な静脈のあまりない高齢患者のside-to-side anastomosisが二例議論された。一例目はbranching veinがとても多く、ligationをした後もうまく静脈が育っていない様子だった。血管外科が「fistulogramもultrasoundも自分たちでやらないとレポートだけでは何が問題やらサッパリ分からない」と困惑して、この件は彼らが自分たちでfistulogramをして問題を究明することになった。
二例目は、fistulogramの質が悪くどこがanastomosisでどこがarteryかすら分からなかった。幸い患者さんがカンファレンスに腕を見せに来てくれたので、みんなで診察して様子が少しわかった。この件では、cephalic veinとbasilic veinの間にstenosisがあり、さらにその近辺に静脈弁でもあるのか、動脈からの流れはほぼbasilic veinに吸われてしまってcephalic veinが成長しないようだった。彼のbasilic veinを指で押さえると、cephalic veinの流れが増えるのが分かった。一人の血管外科医はanastomosisの位置をcephalic vein寄りに変えてはどうかと提案した。
私は正直、cephalic veinとbasilic veinの違いも知らなかったので貴重な機会だった。Cephalic veinと言うのは、イブンシーナーの医学書がラテン語に訳される際の誤りとも分かった(本来は「外側」を意味するアラビア語al-kífalだった)。プレゼンターのフェローから文献(Seminars in Dialysis 2005 18 331)を貰って、まとまった勉強ができた。血管外科医が「fistulogramの前にultrasoundをしろ、そしてultrasoundは自分たちにやらせろ(リアルタイムで診たほうが問題が分かる)」と言っていたのもtake-home pointだった。