カルシフィラキシスという言葉はあまり聞く機会も見る機会も少ないと思う。
ただ、カルシフィラキシスは患者さんの死亡率が50%以上という報告もあり、しっかりと認知・治療にあたることは非常に重要である。
言葉:
CalciphylaxisよりCalcific uremic arteriolopathy (CUA) のほうがESRD(末期腎不全)の人の病態を正確に示している。
病態:
正確な部分は不明な所が多いが、全身の血管や軟部組織の石灰化によって生じると考えられている。ただ、血液透析患者などは石灰化が強い症例が全例CUAをおこさないため、他の要因があると考えられる(リスクファクター参照)。
中等度の動脈の石灰化→血管内皮障害の進行→血管の狭窄や過凝固→組織壊死
となる。
リスクファクター:
・透析期間>6~7年
・女性
・肥満(BMI>30)
・糖尿病
・高リン血症
・高カルシウム血症
・高PTH血症
・低アルブミン血症
・薬剤:ワーファリン、カルシウム含有リン吸着薬、活性型ビタミンD製剤、鉄剤投与、全身のステロイド投与
★しかし、ESRDがなくてもカルシフィラキシスは生じる。
下記の図で示したように原発性副甲状腺亢進症や悪性腫瘍での割合は高い。
また、表にはないがカルシフィラキシスを発症した60%の患者でステロイド投与歴があり、25%にワーファリン投与歴がある。
なので、ESRDがなくても薬剤暴露(ステロイド、ワーファリン)や下表の疾患の患者の皮膚病変をみたら鑑別に上げる事は重要である!
どのような所見か?:
皮膚病変は一言で言うと
疼痛をともなった虚血性壊死である。
先程の病態にあったように虚血に伴って生じるので、治りづらい。
病理に関して:
下図のように一つの特徴は血管の石灰化である。
もうひとつは間質のカルシウム沈着が特徴である。
採血検査は何かわかる?:
特異的な採血検査項目に関してはない。PTHが高かったり、リンが高かったりなどの原因の推定には繋がる可能性がある。
★診断:
疼痛病変で非潰瘍性の病変があればCUAを疑う
→Ca×PやPTHの濃度を見て病変の悪化に直結する変化がないかを見る
→病変の皮膚生検は推奨(しかし、感染の併発をしている場合などは感染の助長をしてしまうため行われない場合も多い)
※ここで上記のように生検をせずに治療をする場合があるが、CUAににて違う疾患のこともある!なので生検はなるべくしたほうがいい(下表のような疾患を見逃す可能性も)。
表:カルシフィラキシスの鑑別
日本の診断基準もあるのでのせる。
病理はもちろん必須ではないが、やったほうがいいのではないかということがわかる。
好発部位:
下肢が最多であり、腹部や乳房や陰部などにも生じる。
まずは、カルシフィラキシス or CUAについて全体的に触れた。
次は治療について触れたい。
写真はカルシフィラキシスを提唱したProffessor Selye