透析患者さんでTSHを測ってみると、低い群にくらべて高い群は疲れやすく仕事や家事ができにくく痛みもつよかった(doi: 10.2215/CJN.13211216)。米国の透析施設で、6割程度がアフリカ系で、平均年齢は50歳代。そういわれても「そりゃ、そうでしょう」と思う。
TSHが高いからと言って、甲状腺ホルモンを補充していいかには議論の余地もある(心疾患があったり高齢者だったりで不整脈などの問題もあるし、fT3やfT4のことはわからない)。でもまあ、患者さんの生存期間も大事だけれどQOLも大事、という最近の考え方にそって調べられているし、そのうち治療介入したスタディも出ると思う。
さて、この論文をとりあげたのは、じつは内容もさることながら、著者が「ビジュアル・オーバービュー」を載せていたからだ(下図)。
しかも、学会ポスターのように無味乾燥なの(たとえば下図はdoi: 10.2215/CJN.10270916、じつは論文の中身としてはこっちのほうが面白いんだけど…)がおおいなか、注意を引くように力を入れて作っている。だから、こうして目に留まる。
これがあると、ぱっと要旨をつかむのに便利だ。ウェブサイトやニュースサイトでいうところの「ざっくりまとめ」みたいなもので、パソコン・スマホ世代に合ったメディア戦略と思う。活字離れ(「読者」という言葉がそのうち「ビューワー」というカタカナに置き換えられるかもしれない)がどうあれ、視覚効果があるほうが頭に入りやすいのは仕方がない。
しかし、注意は必要だ。悪魔は細部に宿る(The devil is in the detail、図)という言葉もあるが、たとえばこの論文ではTSHが高い群はほとんどが透析を始めてからの12ヶ月未満のひとたちで、低い群はほとんどが透析を始めて12ヶ月以上のひとたちだった。透析を始めたばかりなら、疲れるだろう。
またTSHが1.28未満、1.28以上2.11未満、2.11以上mU/lの三群にわけているが、たとえば2.11以上の群といってもTSHの最大測定値は39.4mU/lで、こういう人を入れたから有意に甲状腺機能低下的な有意差がでたのかもしれない(TSHの平均値は2.2でSDは2.9だそうだが…ちなみにTSHの最小測定値は0.07mU/l)。
ざっくりまとめ(写真は「ざっくりまとめ髪」のNAVERまとめサイトより;出典はwww.biteki.com)も便利だが、やっぱり忙しくてもだれかが客観的に読まないといけないと思う。このサイトはその「だれか」の役目を果たしていく予定です。これからもビューワー・フレンドリーさ(「読みやすさ」はもう古い?!)を工夫しながら続けてまいりますので、よろしくお願いします。