2016/12/30

suPARとタンパク尿(proteinuria)

前回の投稿でsuPARとCKDについて記載した。これは、Nephrologyの2015年のインパクトのあるもので14番目にランクされた(ちなみにこの年の1位はSPRINT trial)。

今回、nature medicineから基礎の分野であるがsuPARに関する論文が発表され、2016年のインパクトのある論文の1位を獲得しているので見ていただきたい。

この論文は
タンパク尿の増加は腎疾患(糖尿病や高血圧や遺伝子異常や薬物や感染や原因不明なもの)の特徴である。suPARは前述した様にCKDの進行や発症に関連がある。例えばFSGSなどとの関連性もある(Nat med 2011)。
しかし、suPARの上昇が未来の腎疾患の予測になるかは不明確であり、今回の論文では骨髄由来のimmature myeloid cellsがsuPAR上昇に関連あるものとして、動物実験でsuPAR高値を持つタンパク尿を有する動物の増加したGr1(lo) myeloid cellsを健康なマウスに導入しsuPARとタンパク尿を有する腎疾患の関連を示すものである。

この論文はとてもよく練られているものであり、今までFSGS(移植後の再発も)やCKDとの関連性が言われていたsuPARがタンパク尿の腎症との関連性があるとのことであり、今後このsuPARを抑えることで腎疾患のコントロールがつきやすくなるのかもしれない。

この様に基礎実験の上に臨床が成り立っていると実感する論文であり、また今後の腎疾患の未来を明るくするものであると感じた。



2016/12/29

suPARと慢性腎不全(CKD)~NEJMの論文から~

今回この話題を書いたのは、個人的に興味があったのと次の投稿に書かせていただくアメリカのサイトで2016年の論文でインパクトが強かった腎臓の論文に関連するためである。
まず、suPARと慢性腎不全に関しては、NEJMの2015年の論文がいいと思う。

まず、そもそもsuPARに関してだが、suPARはsoluble urokinase-type plasminogen activator receptor の略であり、可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体である。

suPARに関しては様々な分野で取り上げられている(呼吸器領域循環器領域腫瘍領域)。腎臓の領域に関してはsuPARが微小変化群や膜性腎症と異なり、一部のFSGS患者で特異的に上昇している報告がある(CJASN November 07, 2014 vol. 9 no. 11 1903-1911)。

このNEJMの研究では、心カテーテル検査受検者の大規模血液標本登録であるEmory Cardiovascular Biobankから3683例の血中suPAR値を同定し、腎機能を評価(平均年齢 63歳、65%が男性、suPARの中央値が3040pg/ml)。
そのうち2292例で,線形混合モデルを用いてベースライン時のsuPAR値とeGFR,eGFRの変化,CKD発症(eGFR 60mL/分/1.73m2未満と定義)の関連をそれぞれ検討し,Cox回帰モデルにより人口統計学的因子と臨床変数を調整後の相関を解析している。

今回の結果では、ベースラインのsuPAR高値は追跡期間中のeGFR低下量と関連していた。suPARに関連したeGFRの低下は、ベースライン時のeGFR正常群で最も顕著であったというものである。
この論文の論評で、研究デザインの複雑さや交絡因子の除外がどうかなどのことはあり、今後の検討が必要な分野ではあるが、suPARが慢性腎不全の早期の診断マーカーになりうるかもしれないと提示した論文であり、腎臓内科としては知っておく必要性がある。

最近様々なマーカーの発見があり、混乱する部分も多いがしっかりと使い分けることは重要である。


2016/12/28

血液透析患者とけいれん 治療について

では治療はどうしたらいいであろうか?

□血液透析患者がけいれんした場合に
・血液透析をやめて、必要があれば補液を行い酸素投与を行う。
・透析時に転倒のリスクがない場所に移したり、けいれん中には口に何かを入れない。
・人の応援を呼ぶ(RRSなど)。ほとんどのけいれんは5分以内に頓挫する。
・5分以上持続するなら気道確保やベンゾジアゼピンの点滴を第一選択治療として行う。

□血液検査で血糖・カルシウム・ナトリウム・マグネシウムや他の電解質を検査する。

□予防に関して
・尿毒症性脳症:透析の開始を行う。
・不均衡症候群:グリセオールの使用を行なったり、初回の透析効率を落としたりしてBUNの変動の幅を少なくする。
・エリスロポエチン治療:ヘモグロビンの急激な上昇を避ける。
・透析の低血圧:体重が適切か?心機能はどうか?などをしっかりと評価する。

□抗けいれん薬の開始
通常の場合と同じであるが、初回けいれん時は抗けいれん薬は開始しない場合が多く、2回目以降にけいれんが生じた場合には抗けいれん薬を導入する。

初回けいれんでも
・脳波でてんかんを疑う場合
・脳腫瘍、脳挫傷、中枢神経障害などの原因があり症状を生じる場合。
・睡眠中に初回の発作が生じた場合
などは抗けいれん薬を導入することを考慮する。

□抗けいれん薬は何がいいか?血液透析患者では。
多く使用されるものはレベチラセタム(イーケプラ)である。他の薬物との相互性が少ない。
使用する場合には500-1000mg/dayで使用する。
他のものではラコサミド(ビムパット)も他の薬物との相互性が少ないため有用とされる。

逆にフェニトインやバルプロ酸などは薬物との相互性が多いため血液透析患者では推奨されない。

□透析で抜けるの?
レベチラセタムやラコサミドなどの新しい抗けいれん薬は透析で除去される。そのため、透析後に血中濃度は下がりやすいため、維持できるように管理する必要がある。

けいれん時の薬物に関しては専門的な部分になることも多い。しかし、新しい薬などは把握しておく必要性があるし、逆に薬物の相互作用が大きい薬を使用している場合には中止なども考えなくてはならない。

けいれんは起こるとびっくりすることが多いが、しっかりとした管理をすることが重要である。




2016/12/27

血液透析患者とけいれん 原因などについて

血液透析をしていると色々な合併症に遭遇する。多いのは血圧低下などである。
今回取り上げるけいれんは決して稀なものではない(Pediatr Nephrol. 1992;6(2):182.)。

血液透析患者ではけいれんを引き起こす様々な要因があり、血行動態の変動なども起きやすい。

今回は上記に関して少しまとめてみようと思う。

こんな場面であったらどうしよう?
・いつものように患者さんの透析回診を回っていた。Aさんに「今日の調子はどうですか?」と言ったところ、急にけいれんをしだしてしまった。
この人は新規のけいれんである。

もちろんけいれんを止めることが第一であるが、気道確保とどんなけいれんなのかを確認することはけいれんのfirst stepである。

ここで疑問が。。
血液透析患者と非血液透析患者では対応や評価は何か違うのか?
→これに関しては基本的には同じである。ただ、末期腎不全や血液透析患者では考えておかねばならないけいれんの原因はある。
・尿毒症性脳症・不均衡症候群・透析時血圧不安定・アルミニウム脳症・空気塞栓・低血糖・低カルシウム血症・低ナトリウム血症
などは考える必要がある。

透析患者では頭蓋内病変(出血や梗塞や硬膜外血腫)などは考える必要がある。

特に血液透析患者においては下記は頻度が高いのでチェックする必要がある。
・尿毒症性脳症:適切な透析開始後に数日から数週間で神経症状が改善する。
・不均衡症候群:BUNが高値な症例(170mg/dlや60mmol/L以上)や初回透析時にリスクが高い。
・エリスロポエチン刺激因子:EPO刺激因子による血圧上昇により高血圧性脳症を起こす(Int J Artif Organs. 1994;17(1):5.)。しかし、メタアナリシスではESA使用で増加はないとも言われている(J Am Soc Nephrol. 2004;15(12):3154.)。血圧問題ない人にESA投与でけいれんの発症が増えるエビデンスはない。
・薬剤や毒性:様々なものがけいれんを起こす。抗生物質(ペニシリン、セファロスポリン、エトラペネム)、テオフィリン、L-Dopa、リチウム、アシクロビル、高用量のヨード造影剤、カルバマゼピン、メトクロプラミドなどは起こす。そのほかにも多種の薬が起こしうる。
・透析認知症:アルミニウム脳症が少なくなってからは少ない。

透析患者のけいれんを見たときには、通常の鑑別は重要ではあるが特殊なものも考えるべきであり、それは腎臓内科医は知っておかなくてはならないと感じる。






2016/12/26

腎移植後の免疫抑制剤:ステロイドはいらない?

腎臓の移植は移植を受ける人にとっては、透析をしている人であれば透析での時間の制約から脱却することができるし、また多くの内服薬を必要としなくなる。(腎不全の人ではリンの薬や降圧薬などたくさん。。)

しかし、移植を受ける人は免疫抑制剤を飲み続けなければならない。一生である。
基本的にはカルシニューリン阻害薬(主にはタクロリムス)、ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト)、ステロイドが移植後の免疫抑制剤の維持療法で重要な薬となってくる。

移植直後は腎移植の拒絶反応を抑制するために抗体製剤を使用することが多く、バジリキシマブ(シムレクト)が日本では主に使われる。抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(サイモグロブリン)は日本では使えないが米国では中心的に使われている。

今回、LANCETにHARMONY trialというものが出た。
これは、2008年から2013年までの期間で615人に介入したRCTである。
介入群は3つに分けられ
A:シムレクト投与を行い、タクロリムス・セルセプト・ステロイドの維持療法を行う
B:シムレクト投与を行い、タクロリムス・セルセプト投与を行い、8日目にステロイドの投与を終了する。
C:サイモグロブリン投与を行い、タクロリムス・セルセプト投与を行い、8日目にステロイドの投与を終了する。

患者対象は18-75歳までで、免疫のリスクが低い症例(ABO適合症例など)である。
妊婦などは除外。

一次評価項目:12ヶ月での急性拒絶反応の有無
二次評価項目:グラフト生着率やグラフト機能、NODAT(移植後の糖尿病)の割合、収縮期・拡張期血圧、脂質、体重、移植後感染、悪性腫瘍の割合、傷の治りなどを評価

結論
移植後1年でサイモグロブリン投与はシムレクト投与に比べて有用性がすごく高いというものはない。
免疫のリスクが低い症例ではステロイドの早期の中止は特にやめない場合と異なり優位な差はない。逆に糖尿病のリスクを低下させた。


これは、シムレクトとサイモグロブリンを比較したRCTでは初めてのものである。

限界点としては、症例数がもう少し必要、腎病理の読む人の技量がバラバラ、タクロリムスの血中濃度にばらつきがある、プロトコール腎生検は強制的なものでないなどがある。

患者は内服薬を減らせれば、薬のコンプライアンスもよくなるはずである。
僕らがしっかりとそうできるように努力することが、大事である。



2016/12/25

腎移植後に血液が濃くなる??(post transplant erythrocytosis)

腎の移植後に血液が濃縮される症例を見たことがあるだろうか?
Posttransplant erythrocytosis(PTE)という。2003年のreviewがあり、それを中心にまとめさせていただいた。

PTEとは腎移植後に持続的にヘモグロビンやヘマトクリットが上昇する病態
塞栓などなく6ヶ月以上持続する。

PTEの疫学
・腎移植のレシピエントに移植後8-15%の割合で生じる。多い報告だと22%と言われる。
・移植後8-24ヶ月後に生じる。
・グラフトの障害を一般的に来さない。
・PTEの報告は減少している(1993-1996までは19%で、1997-2005までは8%であった。)

PTEのリスクファクター
・男性
・拒絶を起こしていない
・腎機能が保持されている
・喫煙やDMなどもリスクをあげる報告がある。
・膵腎同時移植もリスクが上昇する。

ちなみに移植非関連性のerythrocytosisには腎細胞癌、乳癌、肝細胞癌、COPD、脳血管腫などがある。

PTEの原因
・様々なものが関連していると考えられており、現時点でははっきりとした原因は不明。

下記のホルモンが関連があると言われている。
・エリスロポエチン
・ヘマトポエチン成長因子(IGF1;インスリン成長因子、sSCF:血清幹細胞因子)
・RAS(レニンアンギオテンシン系)
・アンドロゲン

多くの研究で上記に対してACE-IやARBが腎移植後のエリスロポエチンの産生を抑制することがわかっている。機序ははっきりとわかってはいないが。

PTEの症状
PTE発症後治療なく、2年で1/4は症状が改善してくる。ただ、残りの人たちは何年も症状が持続し、腎機能障害も来たしてくる。

・60%の症例で症状があり、気分不良、頭痛、無気力、多血症症状、めまいなどが見られる。
・10-30%が血栓症状を呈する。
・1-2%が合併症で亡くなる場合がある。

PTEの治療
・Hb<18.5g/dL:ARBやACE-Iは治療の方法の一つ。どちらを選択するかに関しては患者や処方医の判断でいいとされている。ACE-IのがHb降下作用は強く、好まれる。

処方例として
ロサルタン 50mg/dayで開始。100mg/dayまで増量。
それでも改善なければ、エナラプリルに変更し、10-49mg/dayで加える。

・Hb>18.5g/dLは瀉血を行い、ACE-IやARBを導入する。

・ACE-IやARBが効かない時:テオフィリンは効果があると言われている。

腎移植後の血球増加を見たときに、PTEはしっかりと念頭に置いておかなくてはならない疾患である。
自分もしっかりと知識を積んで見たときに驚かないようにしていきたいと感じた。




2016/12/24

利尿剤が効かない!?(利尿剤抵抗性について考える) パート3

利尿薬抵抗性の症例を見たときにアルゴリズムがあるといいなと思うのは僕だけだろうか?
アルゴリズムはその流れに乗ればある程度うまくできるので好きなのだが、もちろんしっかりとなぜこのようなアルゴリズムになっているかなどを考えなくてはいけないと思う。
今回、アルゴリズムを乗せる。

1:アドヒアランスの不良やNSAIDsの使用はないかチェック!!
2:食事で塩分制限はできているか?
3:症例のPK,PDの点から考えて一回の利尿薬の投与量を増量したほうがいいのか回数を増やしたほうがいいのかを考える。
4:経口のループ利尿薬を使用し、ダメなら違う作用の利尿薬を加える(遠位尿細管の薬や近位尿細管作動薬など)
5:点滴投与を考える。ダメなら持続投与も考える。

パート2を読んでいただいた方にはスッと内容が理解できるであろう。

利尿薬抵抗性を乗り越えるために重要な点は
・2つの作用タイプの利尿薬を使用する(ループ利尿薬がファーストライン治療薬)。
・肝硬変症例であればフロセミドとスピロノラクトンの併用が様々なデータの蓄積がある。
・肝硬変以外の併用薬に関してはエビデンスが少ない。なので、小規模の研究からサイアザイドをセカンドラインの治療薬をして推奨されている。
・タンパク尿が出ている症例ではプラスミンの働きでENaCの活性が生じているので、ENaC阻害薬がいいかもしれない。

また、アセタゾラミドがペンドリンの阻害を起こすのでセカンドラインではどうだろうという意見もある。

本当に浮腫は悩まされるし、難しい。

ちなみに今回の症例はフロセミドの投与を行いつつ(しっかりと量と回数を注意して)、あとENaCを阻害するトリアムテレンを使用し、浮腫の改善を認めた。
つまり、今回の症例は
ネフローゼ、慢性腎不全、ENaC亢進などが主に利尿薬抵抗性に関連していたのだろう。


あと、ポイントとして利尿薬はスピロノラクトンとトルバプタン以外は糸球体濾過を受けずに近位尿細管から基本的には分泌されて作用するのはポイントだろう!

どうであろうか?
かなり深く抵抗性に関してかかせていただいた。腎臓内科は利尿薬使用のスペシャリストとしてしっかりと把握しなくてはと常に思う。


2016/12/23

利尿剤が効かない!?(利尿剤抵抗性について考える) パート2

先ほどの症例をみてどうだっただろうか??

この症例にはいくつかの利尿薬の抵抗性を起こす機序がある。
まずは、利尿薬に関しては、作用部位に沿った薬がある。
・近位尿細管:炭酸脱水素酵素阻害薬(アセタゾラミド)
・ヘンレループ:ループ利尿薬(フロセミド、ブメタニド、トルセミドなど)
・遠位尿細管:サイアザイド利尿薬(Na-Cl阻害薬)
・遠位のカリウム保持性利尿薬は2つに分かれる
 -ENac blocker:トリアムテレン
 -ミネラルコルチコイド阻害薬:スピロノラクトン、エプレレノン

まず、PK(薬物動態学:Pharmacokinetics)、PD(薬力学:Pharmacodynamics)を把握することが大事である。
ちなみに
PK:薬物の吸収、分布、代謝、排泄にフォーカスを絞っている。
PD:薬物の作用部位における反応性を見ている。

ネフローゼ症候群や心不全や肝硬変では腸管浮腫などが生じ吸収障害が生じる。
ネフローゼ症候群では低アルブミン血症になることが多く、ループ利尿薬はアルブミンとの親和性が高いため、効果が減弱する。

CKD患者では、尿酸やアシドーシスや有機酸の影響で利尿薬の分泌が障害される。

心不全や肝硬変では腎血管の血流低下が生じる。
つまり、心不全、肝硬変、腎臓に利尿薬が届きにくいネフローゼ症候群などは、利尿薬の量を増やしてもダメで(届きにくいから。。)、投与回数を頻回にすることが重要である。

逆に慢性腎不全の症例では、届いてはいるからしっかりと分泌を阻害されないぐらいに一回量を使うことが重要である。

まずこの症例ではネフローゼであり、慢性腎不全でもあるからしっかりと1回量も使わなくてはいけないし、投与間隔も頻回にする必要があるだろう。

また、ネフローゼ症候群では尿細管管腔内のプラスミンが集合管のENacを活性化することが一つの説で言われている。これは、前子癇や抵抗性高血圧、心不全、糖尿病性腎症でも見られる。
このENac活性化によってNaの貯留などにつながる。

ここまでで、腎不全、ネフローゼですでに3つの薬物抵抗性の機序が浮かび上がっている。

今日はここまで。


2016/12/22

利尿剤が効かない!?(利尿剤抵抗性について考える) パート1

利尿剤は腎臓内科がよく使う薬の一つである。
薬の選択に関してはもちろんであるが、効かない時にどうしよう?と迷うことが多いと思う。今回、AJKDに利尿剤抵抗性についての総評があったので読んでみた。

利尿薬の抵抗性に関しては定義としては
「利尿剤投与を最大量使用しているが、望んだ浮腫の改善がない。」
ものである。

利尿剤抵抗性の原因としては
・診断が間違っている(浮腫が静脈うっ滞やリンパ浮腫など)
・塩分制限や水分の制限が守られていない。
・薬が腎臓に届いていない。
 -アドヒアランスが悪い
 -量が少なすぎる、投与回数が適切でない
 -吸収が悪い(腸管吸収など:ネフローゼ症候群)
・利尿薬分泌の低下
 -尿毒素による利尿薬の吸収障害
 -腎血流の低下
 -腎の機能している範囲の低下
・薬物に腎臓が働かない
 -GFRの低下(心不全や肝不全など)
 -有効循環血液量の低下
 -RAA系の活性化
 -NSAIDsの使用(遠位の尿細管での代償性Na再吸収亢進)

症例を提示しよう。
55歳男性で浮腫と呼吸困難で入院。
肝硬変にはいたっていない慢性C型肝炎があり、MPGNで2回再発がある。
MPGNの再発はステロイドと利尿剤の併用で改善していた。
ただ、再発の影響か腎機能に関しては低下して、GFRが37mL/min/1.73m2まで低下。

今回は体重が20kg増加して、腹水も伴っていた。血圧は145/110mmHg
今回の診断としてはネフローゼ症候群の再発と考えられた。

腎生検が施行されて、C型肝炎関連のMPGNの再発が考えられた。

治療でフロセミドの投与を行い、持続まで行ったが体重減少に関してしっかりとした反応がなく、サイアザイド利尿薬なども使用するも反応が乏しい状態であった。

どう考えよう?利尿薬も最大に使ってるのに、、
上の抵抗性のに当てはまるものはあるのか??

次回少しずつ紐解いてみる。


2016/12/21

ウロジラチン(Urodilatin)について

ウロジラチンという言葉を聞いたことがあるだろうか?今回浮腫の成因のoverfilling に伴う浮腫でこの話が出てきたときなんだろ?と思った。

恥ずかしながら私は知らなかったので、今回の話題に触れてみた。

簡単にいうとウロジラチンはNa利尿ペプチドの一種である。

ナトリウム利尿ペプチドに関しては3つの異なった遺伝子によって作成され、3つの異なった様式で蓄積される。その形がANP(atrial natriuretic peptide),BNP(brain natriuretic peptide),CNP(C-type natriuretic peptide)である。

ANP前駆体ホルモンは4つのペプチドであるが、BNPやCNPは単一のホルモンから生成されている。ANPはこの4つのペプチドの99-126の部分が切断されて生成される。

ウロジラヂンは腎臓でANP前駆体ホルモン(1-126)によって異なる経路で産生される。産生部位は腎臓の遠位尿細管や集合管で産生される。ANP前駆ホルモンの95-126の断片である。ウロジラチンは商品でウラリチドというものである。

AKIやCKDでの尿量が低下した症例に対して、血清Crを下げたり尿量増加を起こしたりするホルモンとして知られている。

ウロジラチンに関しては分かっていないことも多々あるが、知っておくと良いと感じた。




2016/12/20

腎動脈瘤(RAA:renal artery aneurysm)について。手術適応や疾患概念に関して。

腎動脈瘤は意外と分かりづらいことが多い。
超音波検査でわかることもあるが、技師さんの腕による部分もあるのではないかと個人的には思う。なので、実際に僕たちが遭遇するときの注意点と治療をどう考えるかを簡単にまとめてみた。個人的にはこのReviewがよくまとまっていると感じた。

・RAAの頻度
成人で1%程度と低いが実際のところは不明であるそうだ。剖検をして見つかる場合なども多い。血管造影検査やCT検査で偶然に見つかる割合としては0.3-2.5%程度。

・RAAの経過
ゆっくりと大きくなる(0.06-0.6mm/year)。
剖検例での腎動脈破裂の報告はない。
非妊娠例での破裂の割合は3-5%で死亡率は10%未満

・原因
繊維筋異形成(35%)
遺伝疾患(Ehlers-Danlon症候群、Kawasaki病)(20%)
感染(梅毒感染)
外傷
手術による損傷

・臨床症状とリスクファクター
60歳以上に典型的に見られる。
女性の割合が72%以上
繊維筋異形成の割合が68%にも及ぶ
症状を呈することは稀(4-23%):腹痛や背部痛や血尿
臨床所見としては:高血圧、腎動脈狭窄音聴取、拍動性の腹部の腫瘤
キーとしては多くの患者が高血圧がある!(なので、若い女性の高血圧を見た際にはこれを鑑別診断の一つにあげることは重要!)
慢性腎不全で発見される患者の割合が4-14%。
側副動脈瘤が7-30%の割合で見られる。

・形など
ほとんどが紡錘状
2/3が動脈の分枝に認められる。
しばしば多発性で10-20%で両側性に見られ、非腎動脈瘤は7-30%
18-68%は石灰化病変を伴っている
8-11%に血栓塞栓を起こしうる。

・治療
無症状:進行速度の経過を見て、初回との増大速度があまりにも早い場合などは手術適応を考える。
症状あり:
・疼痛:NSAIDsやオピオイド
・高血圧:リジノプリルなどのACE-I
・1-1.5cmであれば1−2年のフォローで経過を見ていく。
・1.5cm以上であればコイル塞栓の適応:分岐部は良い適応
・手術:2cm以上の瘤や腎梗塞併発症例や腎動脈破裂症例、本幹の動脈瘤

腎動脈瘤はやはり見つけられればいいが、難しい。
高齢者に多いということであり、高血圧があっても高齢だからと片付けてしまい見つけづらいのかもしれない。
しっかりと病気をうたがえる目を養うことは本当に重要である。





2016/12/19

バンコマイシンと急性腎機能障害(Acute kidney injury:AKI)を考える。

今回バンコマイシンとAKIの件を書こうと思ったのは、日常でよく遭遇するのと、CJASNの論文で取り上げられていたからである。


そもそもバンコマイシンの歴史は1958年に最初に認可された。
ラットの研究で大量のバンコマイシンを投与した一部が腎機能障害を呈したが、他のは腎機能障害を呈さなかったという報告がある(Antimicrob Agents Chemother 30: 20–24, 1986)。
アミノグリコシドとの併用は腎毒性を惹起したと言われ、これは腎の刷子縁にくっついたことによるものと考えられている。それにエンドトキシンが作用していると。

バンコマイシンによる腎機能障害というと想像されるのは尿細管障害であるが、実際に腎生検をしてみると間質障害の方が多かったという報告が多い。間質障害は基本的には容量依存ではなく、反応によるものである。

また、バンコマイシンの血中濃度はバンコマイシンは未変化体で75-90%腎臓で排泄されるためGFRに依存する。


日常で相談されるのは
A「腎機能が悪くなっているのですが、どうしましょう?今、感染症の治療でバンコマイシンの治療を行なっています。バンコマイシンのトラフ値が25とかなり高くて今は少し中止して、再度採血をする予定です。」

この時にやはり悩むのは腎機能障害の原因である。
もちろん他の腎機能障害の原因の薬物や造影剤の使用の有無や循環の変動がなかったかはまずは除外するべきであるが、それがなかった場合にバンコマイシンは本当に腎毒性になるのか?と常に悩む。

今回のCJASNの論文ではsystematic reviewとmeta analysisでこれを考えている。
ちなみに
システマティックレビュー:特定の疑問に関して数多くの研究を網羅的に再現性のある方法に従って集めて、その時点の結果のまとめを行なったもの
メタアナリシス:集められた複数の研究の結果を統計学的手法を用いて統合したものである。

今回の論文のようにメタアナリシスが行われているシステマティックレビューは個々の研究結果の羅列にとどまらず結論を導き出すことができ結論の信頼度が高くなる。

今回の論文ではRCTやコホート研究を取り出し、1990年から2005年までPubMedやCochrane Libraryで抽出したものである。
Funnel PlotもRCTの部分のみではあるがしっかりばらけている。
この論文では最終的に13の論文を検討している(7個がRCTで6個がコホート研究)。

結果ではバンコマイシンによるAKIリスクは相対危険度で2.45(95%信頼区間:1.69-3.55)と関連性を認めた。
また、感染部位としては皮膚や軟部組織感染で使用する場合と肺炎や多臓器感染で使用する場合のAKIのリスクの違いはなかった。
ただ、様々なバイアスはあるため、この著者たちはエビデンスとしてはとても強いものではないが、関連性があるという形で示されている。

バンコマイシンの腎機能障害には本当かな?と常に思いながら診療してきたが、エビデンスはそこまでにせよ、関連性があるということに納得する論文であった。





アンジオテンシン阻害薬(ARB/ACE-I)の慢性腎不全(CKD)への使用を考える パート2

前回RAS阻害薬による血圧降下までの話をした。

今回は腎保護について考えてみたい。
・腎保護の観点でACE-IとARBの違いはある。これは"AngⅡ escape"によると考えられている。ACE-Iでブロックしても前述した違う経路でAngⅡは産生される。対して、ARBは直接的にAT1やAngⅡを阻害するのでAngⅡ産生は抑制される。
なら、ARBがいいのかというとそうでもなく、AngⅡの完全ブロックで神経液性因子が働き、他のATレセプター(AT2, AT3, AT4など)にくっついてしまう。これはARBはブロックできない。AT2はAT1と対照的に働きアポトーシスや前炎症状態を起こしたりケモカインさん性などが言われている。ARB阻害はこんな状態を起こしうる危険もある。

ACE-IとARBのdouble blockが両者の悪いところを補填するので理論的に良いとされているのはこのためである(AJKD 2009)。

・タンパク尿産生に関して
ACE-IやARB使用によるタンパク産生抑制は様々な研究で報告されている(Ann inter med 2008)。ACE-I、ARBは比較しても同等であ理、両者の併用療法が効果が高かったと報告されている。
少しstudyを紹介する。
・MARVAL trial:ディオバンがアムロジンよりも尿中タンパク排泄を減らした(インスリン必要としないDM患者) (Circulation 2002)
・LIFE study:ニューロタンがアテノロールと比較してアルブミン尿を減らした(高血圧の患者)(J Hypertention 2004)。
・MICRO-HOPE study:ラミプリル(ACE-I)使用でAlb/Cr比の低下を認め、心血管イベント減少や腎保護作用を認めた(DM患者)(LANCET 2000)
・BENEDIC trial:トランドラプリル微量タンパク尿を減少させた(Cont clin trial 2003)
・IRMA2 study:アバプロがアルブミン尿の進展を抑えた(インスリン必要としないDM患者)(NEJM 2001)

尿蛋白には早期から使用した方がいいことがわかる。

・腎機能保護に関して
腎機能保護に関しても様々な歴史の上に積み重なっている。
・RENAAL study:アルブミン尿の低下が腎保護につながっており、下げれば下げる程腎保護に役立ってた(KI 2004)。
・IDN trial:アバプロ使用でアムロジピン使用に比して腎不全リスクを低下させた(AJKD 2005)。
・AIPRI trial:様々な腎疾患の患者に対してベナゼプリルが腎機能低下を抑えた(J Cardio Pharm 1999)
・REIN trial:ラミプリルが血圧低下と比例して腎保護に働いた(Lancet 1998)
他の研究で血圧と相関なく腎保護があることがわかった(NEJM 2006)。
・AASK trial;高血圧性腎症でラミプリルがGFR低下を緩め、特にアルブミン尿が200mg/day以上で有効だった(JAMA 2002)

糖尿病腎症ではどのタンパク尿のステージでもRAS阻害薬の使用が腎保護という観点で有効なことが示されている。

・Double blockに関しては使用によりAKIの増加や高カリウム血症の出現があり、効果もそこまで強くなく推奨度は低い(NEJM 2013)

そのため、結論としては腎臓の保護に関して血圧のコントロールは重要であり、その際に選択されるのはRAS系阻害薬である。もちろん使用に伴う弊害(Kのことや腎機能の一時的な悪化がないか)などをモニターしながら投与がいいと感じる。
なので、腎機能が悪い=躊躇というのは避けるべきであろう。
RAS系の併用に関しては理論的には有用であるが、現時点での推奨度は低いなと感じた。

とても、奥の深い領域だなと感じた。



2016/12/17

アンジオテンシン阻害薬(ARB/ACE-I)の慢性腎不全(CKD)への使用を考える パート1

今回、この題材にしたのは自分の知識が不足しているからである。
恥ずかしながら僕の認識ではあまり慢性腎不全にアンジオテンシン阻害薬の投与は推奨されないのではないかと自己解釈していた。

・腎不全でのRAA系の変化
 腎不全になると早期:腎臓の炎症が生じる→尿細管間質障害が生じる→尿細管壊死が生じる→子宮体硬化が生じると考えられている。
その時にRAAS(Renin-Angiotensin-Aldosteron system)は各々に対して重要な因子として働いている。

・RAA系の考え方
以前はRAASは血圧の関連や集合管でのNa吸収に関連しているものだと思われてきていた。
しかし、現在RAASはとっても複雑になっている。(ACEがAngⅡ合成の重要な要因と考えたれていたが、代替経路も存在する:Chymase, chymostatin-sensitive AngⅡ generating enzyme(CAGE), ACE2など)、Ang Ⅲ, Ang Ⅳ, Ang 1-9 , Ang 1-7などの新しいタンパクも見つかっている。
なので、ACE-IのよるAngⅡ産生抑制は腎臓内のAngⅡ産生抑制には関連しないとも言われている(JASN 2002)。
腎臓内の部分的なAngⅡが高血圧や腎臓の廃絶に関連していると言われている(濾過圧の上昇や輸出細動脈の収縮や自動調節能障害などを起こす)

・血圧降下に対して
慢性腎不全に対する血圧降下に関しては、様々な研究で有用性が分かっている(Eur heart journal 2003)。また、両者の薬の作用の違いは血圧の観点では同様と言われている(Ann intern med 2008)。
ACE-IとARBの両者の併用に関してはACE-I単独と比較して4.7/3.0mmHg、ARB単独と比較して3.8/2.9mmHgと血圧の点では低下を認めることが分かっている(Hypertention 2005)。

今日はまずはここまでにしておこう。

本当に僕たちの診療は日々進化している。患者さんにとって良い治療を選択できるように努力しよう!


2016/12/15

透析のシャント感染を考える。

血液透析患者さんに一定頻度で起こる可能性があるものがシャント感染である。
透析患者では、血液透析を行う際に観血的な処置を行い透析を行うため、一定頻度で感染症は生じる。
AVF(自己血管のシャント)では、3年間で70%以上が問題なく使えるし感染の割合も2-3%と言われている。
AVG(人工血管のシャント)では、3年間で50%以上が問題なく使え、感染や血栓で透析ができなくなることが多い。

上記の点から考えてもシャントはAVFの方が良さそうであるが、患者の中には血管の走行が変わっていたりして、自己血管のシャント増設ができない症例も多い。

まず、ここまでで知っておくことは患者さんのシャントが自分の血管なのか人工血管なのかを把握することは重要である。

・所見:発熱、発赤、皮膚バリアの消失、膿や稀だが出血などもある。
シャント感染で皮膚や血管が脆弱になり、出血で救急搬送された症例も経験した。

・感染菌:黄色ブドウ球菌が最多で、表皮ブドウ球菌が次に多い。

・リスク:偽性動脈瘤、血腫、皮膚の掻爬、薬物などをシャントから使用。

特にアクセスのタイプや局所性かなどで治療などは考える選択肢は異なってくる。

AVF,AVGにしても局所感染が最も多く
・AVFで発熱や菌血症を疑わない:抗生剤加療を2週間は少なくとも行う
・AVFで発熱や菌血症の併存が疑わせる:静脈投与の抗生剤を少なくとも4週間以上行い、シャント穿刺は同部位では行わない。2006年のKDOQIのガイドラインでは6週間の抗生剤投与を推奨。
・AVFで感染性血栓や敗血症性塞栓がある:自己血管シャント(感染部)を抜去する。

・AVGであれば常にグラフと抜去は考えないといけない。
静脈投与の抗生剤を用いて少なくとも2-4週間以上は治療するが、多くの場合は外科的な介入でグラフト抜去になる症例が多い。

もし、グラフト抜去後も発熱が持続していた場合には他の原因(骨髄炎や感染性心内膜炎など)や感染の波及などを考える必要がある。感染の波及は起こ
りやすく、また起こした場合には患者の予後は非常に悪いと言われる。

透析患者さんは様々な合併症に注意を払いながら我々も治療を行なっていく必要がある。

このシャント感染を書いていると私の恩師とExcitingな経験をした沖縄の冬を思いだす。

2016/12/14

低ナトリウム血症に尿素投与を考える。

低ナトリウム血症の治療は悩む部分が多いし、難しいことが多い。

ご存知のようにガイドラインが2014年に欧州と米国から出ており、欧州のガイドラインがよく引用されており、その中でSIADHの治療に尿素の負荷が推奨されている(推奨は2D)。

In moderate or profound hyponatraemia, we suggest the following can be considered equal second line treatments: increasing solute intake with 0.25–0.50 g/kg/day of urea or a combination of low dose loop diuretics and oral sodium chloride.

では、尿素の負荷はどのように作用するのか?を少し考えてみたいなと思う。

調べてみると意外に尿素の歴史はふるい。。
1950年代に提唱され(この時は受け入れられなかったよう)、1960年代には頭蓋内圧や眼球内圧をあげる治療として標準治療となった。尿素は点滴で投与されていたとのことで、今では想像がつかない。(Urovertという点滴:糖を含有し溶血を防いでいた。)
その後、マンニトールなどが簡便であるということで使用され、Urovertは過去のものとなってしまったらしい。
尿素の点滴は問題が色々とあり、尿素は腸管吸収も良かったことから経口薬として1892年に利尿薬として初めて使用されたまた、1926年の報告では心不全で使用された報告がある。
このように尿素負荷は注目を浴びている。

尿素は有効浸透圧か?
→尿素は非有効浸透圧である。アルコールやエタノールと同じである。
有効浸透圧としてはブドウ糖やマンニトールや高張性造影剤などがある。

血液に尿素が入ると:
尿素に関しては血液中に入っても筋肉細胞や脳細胞などに分布し、血清浸透圧はわずかに上昇はさせ(20mOsm程度)、BBBを介して脳細胞から水が移行する。
しかし、浸透圧格差はすぐに是正される。
理由としては
1:脳細胞内にゆっくりであるが尿素が移行する。
2:尿から尿素排出で尿素が下がる。

尿からの尿素は:
尿素投与ですぐに尿素の排泄が亢進される。腎機能が問題ない方であれば12時間で全てが排泄される。最大尿希釈力から最大排泄尿量がわかるが、溶質負荷に伴い最大排泄尿量が増加する。その際に自由水の排泄が亢進する。

尿素負荷に伴うNa上昇に関しては自由水排泄に伴うものである。

実際3%生理食塩水と比較するとどうかも乗っていたが、3%に関しては希釈尿が上昇した際にovershootする可能性があるが、尿素では少ないとされている。

しかし、尿素の内服はどのようにすればいいのか?美味しくないそうである。
アミノレバンも一つの方法である。これも美味しくないそうである。
美味しくないため患者さんのQOLが極端に落ちたそうである。

とても勉強になる。患者さんにとって一番いい治療が選択できればいいと感じる。



2016/12/13

被嚢性腹膜硬化症〜腹膜炎との関連は?〜

被嚢性腹膜硬化症(Encapsulating peritoneal sclerosis:EPS)は現在ではまれな腹膜透析患者の合併症である。しかし、死亡率の高い疾患であり我々もしっかりと注意して管理する必要がある。
個人的には、なるべく腹膜透析を長くさせてあげたい反面とEPSの発症はどうなのだろうと常に診療の中で気を揉んでいる。

・EPSの歴史:
EPSが報告されたのは、1980年に報告され(Arch.Intern.Med. 140,1201–1203 )、1996年には0.9%、2005年には3.3%に上昇していた。
2009年の報告では0.7-3.3%となっておりやはり一定数の患者はいるため注意する。
やはり、一番は死亡率の高さで25-55%の死亡率があることは知っておかねばならない。

・EPSを考えるときに
腹膜透析患者はもちろんではあるが、非腹膜透析患者にも起こりうる。自己免疫疾患やサルコイドーシスや腹膜や腹部の悪性腫瘍や感染患者、慢性的な肝硬変の腹水患者、β遮断薬投与患者などは考える必要がある。

腹膜透析患者においては単純腹膜硬化症という1st hitの前段階がある状況で、急激なPDの休止や腹膜炎や移植などが2nd HitとなりEPSが発症すると考えられている。

腎移植後のEPSも報告されている(Nephron.Clin.Pract. 111,149–154.) 
腹膜炎に関しては繰り返すものでの報告があり、菌としては緑膿菌や黄色ブドウ球菌や真菌などが関連性があるとされる。

腹膜劣化が進んだ症例では腹腔洗浄を行い待機的にカテーテル抜去を検討するが、腹膜炎の症例で抜去が必要な症例(難治性腹膜炎、再燃性腹膜炎、難治性出口感染と皮下トンネル感染、真菌感染、反復性腹膜炎、マイコバクテリウム属による腹膜炎)で腹膜劣化も進んでいる症例ではいつ抜いた方が良いのであろうか??
これは、今後調べてみたい。

腹膜透析ができるような環境をもっと作っていけたらと思う。


2016/12/12

血漿交換はどんな疾患に適応?迷った際のワンポイント!!

久々の投稿になります。

今回は血漿交換についての話題に触れたいと思う。
血漿交換を考えるときに、まず何が適応になってどのくらいの回数が保健上適応になっているかは常に考える必要がある。その際に下記のような形でどの疾患が適応あるんだろ?と常に考えると思う。



しかし、この表が頭に入って入れば話は別であるが、この疾患はどうだろ?と考えた際にどのように調べるだろうか?
ここは日本!なので、日本語でとことん探すのも一つであるが、世界標準はどうかを知るのは重要である。

アフェレーシスのガイドラインがあり、2016年度に新しいものが出ている(J Clin apher 2016 Jun;31(3):149-62)。

これの良い点は一つ一つの疾患についてまとめられており、どれくらいの推奨度があるかや置換液をアルブミンにした方が良いのか?FFPにした方が良いのかがわかるところなのかと感じる。

例えば、多発性骨髄腫に伴うcast nephropathyで高度な腎機能障害を呈する人が来たとする。
その際に上の表を見ただけだと多発性骨髄腫という疾患はあるが、多発性骨髄腫だけでできるのか?なんなのかは不明である。

ガイドラインで引くとcast nephropathyは推奨度はGrade2Bとなっている。この疾患に対してやる意味は軽鎖の糸球体への量を低下させることで腎予後、生存率の改善につながる。腹膜透析や高性能膜の血液透析よりも血漿交換の方が軽鎖の除去に関しては効果がある。

では、どのような人に優先的に使用を考えるかというと尿量がある人に関しては、まずは補液治療(2.5-4L/日)であり、尿量が出ていないCre ≧ 6mg/dLの症例などは治療的血漿交換を考慮した方が良いとガイドラインには記載してある。
とても、ひとつひとつの症例に対して細かくどのRCTからエビデンスが抜き出されているかなど書かれており、とても勉強になっている。
ぜひ、迷うことがある際には参考にしていただきたい。