2015/03/03

ニッポンの酸塩基平衡

 腎臓内科学会が主催するセミナーをお手伝いしてきた。そこで、生化学のNa+とCl-だけでpH、pCO2、HCO3-を読もうとするニッポンの酸塩基平衡を習った。Na+からCl-をひくと、HCO3-とAGだ。

☆AGが正常(12)、HCO3-が正常(24)ならNa+ひくCl-は36になるはずである。この値が36からはずれている時には酸塩基平衡を疑わなければならない☆

 AGを12と仮定すればHCO3-を求めることができる。
 
 HCO3-からpCO2を求めるには、呼吸性の二次的(代償性)反応幅ΔpCO2がだいたいΔHCO3-かける1(個人的には代謝性アシドーシスでは1.2、代謝性アルカローシスでは0.7という人体実験データから得られた係数を使いたいが、面倒だから1にしてしまえということらしい)なことから、

pCO2=40-(25-HCO3-) ⇔ pCO2=HCO3-+15

 HCO3-の正常値は24だが、覚えやすいように25に水増しして、マジックナンバー15がうまれるようにしている。これは米国の高名な先生が思いついて日本に伝えたそうだが、私は米国の腎臓内科フェローシップでは習わなかった。

 次にpHを計算で求めるが、まずそのために[H+]を求める(logはぱっと計算できないから)。[H+]、pCO2、HCO3-の間にはH-Hの式から次の関係がある;

[H+]=24xpCO2 / HCO3-

 で、pH7.40のとき[H+]は40nmol/lで、この周囲でpHの小数点以下+[H+]=80が成り立っていることから、

pH=7.80-[H+]/100

 となる。なんというか、個人的にはここまでしなくても生化学でHCO3-を測ったりガスを取ればいいような気がする(静脈血でもいいから)。ただ日本の一般生化学からも酸塩基平衡をひねり出すことができるというのは発見だった。