私が初めて米国の病院を訪れたときに、入院中の患者さんがソーダ(茶色くて甘い炭酸飲料水)を飲んでいるのに気づいた。しかも、年齢性別を問わずである。「米国ではソーダがお茶代わりなのか」と、アメリカ文化がアメリカ人に染み付いているという事に感心した。
さて、今回の学会では「ソーダ(あるいはダイエットソーダ)はCKDを進行させるか?」というお話が聴けた。HFCS(high-fructose corn syrup)は関税などにより砂糖の輸入価格が上昇したため、米国が自国で安価に生産できる代替品として生まれ、1970年代以降に使用量が激増した。ちょうどその時期から肥満が増えたため、原因として指差されている。
CKDでは、動物実験レベルで糸球体高血圧や内皮細胞ダメージ(Am J Physiol Renal Physiol 2007 292 F423)、ひいては糸球体硬化や尿細管障害をきたす(Am J Physiol Renal Physiol 2007 293 F1256)という。しかし、動物実験での摂取量はアメリカでの平均的な果糖摂取量よりはるかに高いので当てはまらないと主張する人達もいる(Adv Nutr 2013 4 246)。
ただ、食事カロリーの25%を果糖飲料にした群はグルコース飲料の群に比べてインスリン抵抗性が高まり内臓脂肪が増えたというヒトの実験データ(JCI 2009 19 1322)もあるし、痛風との相関を示したNHANESのデータ(JAMA 2010 304 2270)もある。機序は複雑だが、fructokinaseにより生じたfructose-1-phosphateが肝ATPを枯渇させ核酸分解を促進するという。
CKDについてはどうか?スタディ(KI 2010 77 609、CJASN 2011 6 160)によれば、一日2本以上ソーダを飲む群でeGFR低下との弱い相関があるかないか、という程度(レビューはACKD 2013 20 157)。しかし一日2本以上ソーダを飲む人達というのは、一緒にハンバーガーやピッツァも摂取していると思われる。
というわけで、皆が同意できそうな「ソーダの飲みすぎは不健康な食生活のマーカーで、健康な食生活をしたほうがよい」という結論で話は終わった。アトランタでWorld of Coca-Colaに行った後なので「やべ」と思ったが、「たまにならいいか」と思った。それから、NYCのBloomberg市長が提唱した映画館でのビッグサイズソーダ販売禁止案が通らなかったのを思い出し、「ソーダはアメリカ人の魂だな」と思った。