2012/08/16

CD80 (aka B7.1)

 尿中CD80抗原は、小児科領域でminimal change disease (MCD) in relapseの診断ツールとして提案されている。腎糸球体の足細胞は、物質輸送・交換など様々な機能を持ち、それこそニューロンに比較できるほど高度に分化した細胞だ。そんな足細胞は、さらに樹状細胞(抗原提示細胞)の機能をも獲得することができる。
 その一つがCD80で、これを細胞膜に表出することによりco-stimulatory signalを介したT cell activationが起こる。CD80などと言うと分かりにくいが、別名のB7.1といえば移植や免疫抑制の世界でお馴染だ。B7.1をT cellのCD28に結合させれば活性化スイッチが入り、regulatory T cellが分泌するCLTA4はそれを阻害するのでスイッチを消す。免疫抑制剤BelataceptはCLTA4を含むfusion proteinだ。
 Urinary soluble CD80は23kDのタンパク質で、MCD in relapseで(MCD in remission、FSGS、健常者)に比して有意に高かった(JASN 20 260 2009)。タンパク尿の度合いに関係なくである。再検(KI 78 296 2010)でも同様で、MCD in relapseにおけるROC曲線のarea under the curveが0.99という診断マーカーとしては驚異的な結果がでた。
 Urinary CD80があるとどう良いのか?三点あげるとすればひとつは、腎生検のリスクを避けられるかもしれないことで、小児科領域でよく調べられているのもそれが理由だ。二つ目は、病態理解が進むかもしれい。
 現在提唱されているtwo-hit theoryは、感染症などによる足細胞の直接傷害がfirst hit、regulatory T cellの機能不全などにより足細胞がCD80(B7.1)を表出し免疫反応が惹起されておこる傷害がsecond hitという(Pediatr Nephrol 26 645 2011)。
 そして三つ目は、治療が変わるかもしれない。前述の通り、ラッキーなことにCD80(B7.1)を介したco-stimulatory signalを阻害する薬は既に存在しているのだ。これを治療に用いたという例は未だ聞かないが、そのうち試されて、有効性と安全性が確認されるかもしれない。