Atrial fibrillationは最もcommonな心疾患のひとつであり、しかも脳梗塞予防に用いられる抗凝固薬がwarfarinでほぼ独占されていることから、多くの製薬会社が新規抗凝固薬の開発に血道をあげている。warfarinは薬物相互作用も多く、vitamin K摂取量などにより薬物血中濃度が不確定なので抗凝固作用のモニタリングが必要で、薬が効き過ぎればひどく出血するし、horribleな薬だ。
だからそれに代わる「安全で便利な」抗凝固薬が待たれているわけだが、いまのところ米国では2つの薬、欧州ではさらにもうひとつの薬が認可されている。ひとつはdabigatran(Pradaxa)で、これはBoehlinger Ingelheim社の商品だ。もうひとつはrivaroxaban(Xarelto)で、これはJohnson & Johnson配下のJanssen Pharmaceutica社の商品。そして今のところ欧州でのみ認可されているのがapixaban(Eliquis)で、これはPfizerとBristol-Myers Squibbが共同開発した商品だ。
rivaroxabanとapixabanはともに、direct factor Xa inbitorと呼ばれる。おなじfactor Xa inhibitorのfundoparinux(Arixtra)がヘパリン同様にATIIIを活性化することでfactor Xaを阻害する(UpToDateにも載っている有名な図、NEJM 1996 334 724を参照)のに対し、rivaroxabanとapixabanはATIIIを介さず直接にfactor Xaを阻害する。
rivaroxabanはROCKET AF trial(NEJM 2011 365 883)でwarfarinと比較され、non-inferiorityが示された。尿排泄66%(主に尿細管からのactive secretionらしい)で、ClCrが30ml/min以下の人には"avoid use"とされている。ちなみにこれは95% protein-boundで透析可能ではない。だから前掲の患者さんがこの薬を飲んでいたら、私たちが透析で助けることは出来なかったかもしれない。
apixabanはARISTOTLE trial(NEJM 2011 365 981)でwarfarinと比較され、同じくnon-inferiorityが示された。これはall-cause mortalityがwarfarinよりも有意に低いことを示した初めてのスタディでもあるという。いまのところ欧州でのみ用いられているが、FDAが認可のためのpriority review(fast-trackのようなものか)を始めて、三月までに決定が下されるらしい。
rivaroxabanもapixabanも、dabigatran同様に抗凝固作用をreverseするantidoteがない。PCC(prothrombin complex concentrate)がrivaroxabanの抗凝固をreverseしたという論文(Circulation 2011 124 1573)は出たが、この製剤は欧州でのみ用いられている。透析でも除けないし、心配だ。2012年は、多くの新規抗凝固薬が出ては消える年になるかもしれない。