抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome, APS)という病名はとても有名だし、日本でもアメリカでも国家試験に頻出だ。しかし実際の臨床であまり目にすることがないせいか、卒業して七年たってもいまだに表面的な知識と理解で終わっていることに気付いた。いま一緒に働いている指導医の先生はイギリスでリウマチ内科医をしていただけあって、腎臓病でないこういう病気のことでも、さりげなくどっさり教えてくれる。
たとえばリン脂質抗体には三種類あってそれぞれ①anticardiolipine IgG & IgM、②anti-beta 2 glycoprotein 1、③lupus anticoagulant。①では、IgMよりもIgGのほうが血栓塞栓のリスクに相関している。③はPTTが上昇するのと、Russel viper venomで検査する。
APSの症状といえば血栓症や流産が有名だが、livedo reticularis(網状皮斑)も重要なサインだ。網状皮斑といえばcholesterol emboliと1:1に決めつけていたのが恥ずかしい。他に網状皮斑を起こす主な病気には、polyarteritis nodosaやSnudden症候群(網状皮斑とCNS vasculitis)がある。またごく稀に、APSは両側の副腎静脈塞栓症を起こしてショックになることがある。