Grand Roundで、うちの病院の循環器科医でじつはMayoでcardiology nuclear medicineでfellowshipをしていた女性が、女性の冠動脈疾患をテーマに講演した。ストレス、自己免疫疾患など女性特有のリスク因子があることや、病態もmicrovascular injuryやvasospasmなど男性と異なる場合が多いことを学んだが、さらに興味深かったのはBone-heart axisという概念だった。
これは、更年期に骨粗鬆症と冠動脈疾患のリスクが同時に上がること、骨はカルシウムの貯蔵庫で冠動脈疾患は動脈の石灰化(カルシウム沈着)なことから、ひょっとしてこれら二つを同時に説明する機序があるのではないかという仮説だ。この仮説を裏付けるように、2010年のJACC(Journal of American College of Cardiology)にOsteoprotegerinという因子が冠動脈疾患のpredictorになりうるという論文が発表された。
講演によればOsteoprotegerin(OPG)はRANKLのdecoy receptorで、NFκBを阻害するらしい。これにより、免疫細胞や骨細胞(破骨細胞)の働きを調節しているのみならず、血管内膜のプラークを石灰化する働きもあるという。そして前述の論文は、血中OPGが冠動脈石灰化と相関するということを示したと紹介された。発想のダイナミックさに驚嘆した。この論文、病院の図書館でダウンロードして読んでみようと思う。